表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/111

86.ランクアップ試験3

 道すがら狩猟と採取を繰り返し、目的のリトルボアを探します。既に気持ち的には2敗を喫している怨敵です。今日こそはリベンジです。


「おい。みんな。あの2人やるぞ。下手したら今の俺達より稼いでるんじゃないか?」


「見栄はよせよ。確実に稼いでるだろ」


「あんな所に15夜草があるなんて知らなかったぜ」


 後で何やら褒められている様です。ふふん。どんなもんですか。私とネイちゃんは凄腕ですからね。注、近接戦闘除く。


 弓だって10メル以内なら5センメルの円に100発100中です。それ以上は届きませんが……。


 最近は動いている敵にも当たる様になってきましたし、将来はSランクかな~。うふふ。スラリとしてボインボインのSランク美女の2人組冒険者。夢が広がるな~。


 きっとイケメンがわんさか寄って来て鬱陶しいくらいなんだろうな。えへへ。おっといけない。妄想が止まらないよ。気を付けないと危険地帯なんだから。


 森に入ったらだんだん獲物の気配が濃くなってきました。最初の頃の西の草原の様です。まだまだ浅い層の森なのに十分稼げそうです。


 リトルボアをなかなか発見出来ないままお昼になってしまいました。よじよじ。近場にあった木に登って昼食にしましょう。


「お、おい、なにやってるんだ?」


「なにって、もうお昼の時間です。ご飯食べるんですよ?」


 当然地上は危険なので、木の上でゆっくり食事です。お弁当を持ってきてますからね。木の下では干し肉を齧って休憩中の試験官達をよそに暖をとります。


 木の上でも焚火が出来るように工夫してますよ。手がかじかんでいたら大変ですから。師匠から頂いた防火布を敷いてその上で焚火です。一応魔道具ですよ。


 今日の獲物のうち鳥さんは食べてしまいましょう。焼き鳥ですよ。焼き鳥! 久しぶりの焼き鳥にネイちゃんも小声でフォ~って言ってました。


 簡易鍋(折り畳み式の防火布製の鍋です)でお湯も沸かしてスープも作っちゃいます。お弁当はサンドウィッチです。火で焙って暖かくしてから食べました。


 スープは直ぐにカップに注いで再度作ります。一応試験官にもお裾分けです。印象が良いに越した事はありませんからね。処世術です。


「スープ作りましたから皆さんでどうぞ」


 木の上から紐で垂らして渡しました。降りるのが面倒だからじゃありません……。


「お、いいのか。悪いな。いい匂いだ。助かるぜ」


 もちろん自分達の分が終わったら焼き鳥もご馳走しましたよ。大変喜んでくれました。黒パンと干し肉だけじゃかわいそう過ぎますからね。


 食後のお茶もしっかり頂いて気力十分です。何と無く湿っていた洋服も魔法一発で気持ち良くなります。ポンチョをバサッと振れば水飛沫が飛んであっさり水が弾けて行きます。


 午後からも張り切って行きましょう。


 それから暫く経って採取と狩猟を続行していましたが、とうとう見つけてしまいました。リトルボアの群れです。


「ネイちゃん居たよ。あいつら気付いて無い。将来のSランク冒険者としてリトルボアごときに技を使うのはどうかと思うの。正面から撃破してこそSランク!」


「……フォー。今日のタエは強気。ネイちゃんもそう思う」


「ふふふ。サッと避けてザシュよ。小太刀でいいよね?」


「……うん!」


 2人して小太刀を抜き放ち立ち上がります。こちらに気付いたリトルボアが慌てふためく姿が目に浮かびます。おや? そのまま吶喊してきました。


 ちょっと想定外ですが、サッと避けてザシュですから問題ないでしょう。ふふふ。積年の恨み今こそ晴らしてくれよう。


 トタトタ、ドン ゴロゴロ。くっ。やつら! 曲がりました! まっ直ぐ突っ込んでくるだけのはずが……。ドン、ゴロゴロ。ちょっと待って。今、立ち上がるから。ドン、ゴロゴロ。


 このパターンは……無間地獄……。ドン、ゴロゴロ。ネイちゃん、助けて。ドン、ゴロゴロ。


 必死にネイちゃんを捜しますがどこに居るのか分かりません。あっ。今、飛んで行ったのネイちゃん? 確かに蒼い何かが飛んで行きました。ドン、ゴロゴロ。


 もうどっちが上か下かも分かりません。さっきから小突きまくられてます。少し待って。お願いだから。


「おい、ちょっとヤバいんじゃないか?」


「……遊んでるのかと思ったが、どうやら違うようだ」


「さっきまでと別人のようにやられてるな。……見てるだけでいいのか?」


「いい訳あるか! 助けるぞ」


 私は今、地面に横たわっています。どうやら試験官が危険と判断して介入してくれたようです。遅いよ! もっと早く助けて!


「ね、ネイちゃん無事?」


「……なんとか」


 どのくらいの間ボテ繰り回されたのでしょう。体中が痛いです。ポ、ポーションを飲まなければ……。


 腰に付けていた標準ポーション。……割れてました。体中ドロドロのボロボロです。新調したポンチョも形無しです。中に着ていた洋服までビショビショのドロドロです。


 パンツまで……。


 泣きながら試験官に手を引かれて緊急離脱です。目立った負傷が無かったのが不幸中の幸いでしょう。いつまでもベソをかきながらの帰還です。


 試験官達もホトホト困っている様子でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ