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72.付与魔術

メリークリスマス。

 明りの魔道具を納品しましたよ。結構お高いです。そりゃそうです。錬金術師が一応3人に冒険者1人が、7日間も掛って作るんですから。


 まあ、今回は素材が無かったので拘束される時間も長くなってしまいましたが、普通は冒険者が素材を採ってくる時間の方が長いのでもっと納期は掛りますね。


 素材の場所、採取方法などを色々弟子に教えるため自分達で採取に行きました。お客さんは早くて喜んでましたよ。


 今日も日課の勉強とお仕事を済ませて、休憩かと思ったら違いました。


「そろそろ自分達の装備に魔術紋を刻むぞ」


 おっと、師匠の装備みたいなやつですか。いいですね。なんかちょっと光ったりするんですよね。カッコいいです。


「さて、今日は付与魔術だ。昨日まで作っていた魔道具と何が違うかな?」


 ……魔法を道具で使う所は同じです。はて? 同じかな? いやいや、違いますよ。え~と。


「……魔道具は魔法を作動させる仕組みを組み込んだ道具。付与魔術は物に魔法を定着させる魔法」


「そうだ。一見効果は似ているが、全然違う。魔道具は魔術師が魔法を使っている魔法と同じだが、付与魔術はそれ自体が魔法になるんだ」


 出遅れた! やるなネイちゃん。私だって負けないよ。うそです。魔法優遇種族と競争なんて勝ち目が有る訳ないじゃないですか。


「まずブーツから付与してみようか。まずはなにを付与するかを決めるぞ。一般的には俊敏や浮遊を付けるな」


 ふむふむ。付与する物の機能を高める様にするんだよね。うーん、両方いいよね。普段は俊敏、万が一の時は浮遊、いいね。


「はい。師匠、質問です」


「何だ、タエ」


「2つ付けたい時はどうするんですか?」


「うむ。いい所に気が付いたな。まず2つ以上の魔法を付与することは可能だ。過去には最大5つの魔法が付与されたものもあったらしい」


「い、5つですか!?」


「ああ、凄いだろ。実際には四聖クラスで3つ、上級以上の魔術師で2つ、一般では1つが限界だ」


 なるほど。難しいんだ。一般以下の私達だと1つ付けられれば恩の字なんですね。分かりました。


「私の弟子なんだから2つは付けてみようか?」


 いえ、無理は禁物なんで中庸が一番ですよ? ああ、ネイちゃんの目がきらきらしてるぅ~。


「初めてなので1つから慎重に行きましょう。次の装備から挑戦と言う事ではどうでしょうか?」


「ふむ。それもそうだな。お前達なら直ぐ装備も更新だしな。よし。練習だから1つにしておこう」


 危なかった。いきなり難易度が爆上げする所でした。


 付与魔術も立派な錬金術です。魔道具に組み込む部品に付与魔術も多用されているんですよ。魔術紋を刻むとは付与魔術を付ける事です。


 速く動けるのは魅力的です。木から落ちた時は浮遊があればとも思いました。跳躍とかもいいと思いませんか。でもやっぱりオーソドックスに俊敏でしょう。


 無難が一番と言う事で俊敏に決定です。ここからは意外と地味な作業です。ブーツの底の部分に魔術紋を書いていくのですが、魔石の粉で書きます。定着液に魔石の粉を混ぜて書いてもいいです。


 一番いいのは魔石の粉で直接描く事が良いのですが難しいのです。砂絵を描く様なものですから。薄めた分だけ効果が弱くなります。


 まずは、下絵を描きます。水でもいいですが、乾くと魔石の粉もとれてしまうので普通はマイマイの粘液を使います。


 そこに乾く前に魔石の粉を振りかけて下絵の完成です。下絵に沿って魔石の粉を追加して行くんですけど難しいのです。粉が多かったり少なかったりするのはもちろんダメですし、他の所に付いちゃったり魔術紋が崩れてもダメです。


 色々補助道具もあるのですが、とにかく作業が細かいのですよ。魔術紋は! 少しずつ粉を足して仮定着しながら書いていきます。線が波打ったり、丸じゃなく楕円になったりしちゃいます。


 それでも何とか描き切って、最後に魔術紋を素材に定着させる作業です。ここが錬金術師の腕の見せ所です。


 これによって付与魔法の性能が大きく変わって来るからです。普通は数%アップとかですね。良く出来ると30%アップとかです。四聖とかでも100%アップですね。稀に200%とかありますけど、こういうのは論外です。


 さて5%アップくらいにはしたいですね。では儀式に入りましょう。


 練成陣の中央にブーツと触媒となる俊足ウサギの後足を置きます。練成陣は師匠の物を使います。練成陣と言うのは錬金魔法を使う時その中で行う陣です。


 魔法の補助をしてくれたり暴走した時に受け止めてくれたりします。効果を高めたり、意外な効果が現れたりもします。練成陣にも善し悪しが有るので一概には言えません。


 でも師匠の練成陣はそこそこいいものだと思いますよ。触媒は出したい効果と同じ素材を使います。今回だと俊敏なので俊足ウサギの後足です。


 もっと効果の高い素材もありますが、大した装備じゃないので素材が勿体ない。と言う事でお安い素材です。ちなみに俊足ウサギは魔獣ではありません。


 神木の杖マークⅢを構えて練成陣に魔力を流して行きましょう。マークⅢなのは2回変化したので勝手にそう呼んでます。指揮者の様に杖を振るい空間に魔力文字を書いていきます。


 ……ああ、いけない。杖が暴走しそうです。喜び勇んで助言ちゃん達が踊り出しちゃった。不味い不味い。何とか抑えないと。どうなるか分かりません。


 きゃー、助けて~。くっ、杖との攻防が始まっちゃいました。何とか抑えようとする私、自由に動こうとする杖、それを手助けする助言ちゃん。分が悪いです。


 くっそー。好き放題魔力を持っていかれます。き、気力が……もうどうでもいいやという気持ちになってしまいそうです。


 堪えました。堪え切りました。そこそこで済んでいると良いな。

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