51.杖
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もう選んだなとか言って残りの杖は片づけられてしまいました。いや~、待って~これじゃないですよ~。勝手にひっついて来たんですよ~。
「どれどれ持ってきてご覧。見て上げるから」
お姉さん師匠が椅子に座って私達の杖を見てくれるらしいです。杖はどうも相性と言うのが有ると信じられているらしく、どんなに良い物でも相性が悪いと使い難いらしいです。
「ふむ。珍しいね。エルフは金属を嫌うものなんだけど、ネイは金属の杖を選んだんだね。この杖は月光銀の杖と言って珍しい杖だよ。もともとは黒い屑銀なんだけどそれを月光に当てて1年近くも魔力を吸わせて出来た銀で作るんだ」
「……すてき」
「その性能も凄いぞ。月が出ていれば魔力の消費が半分になるらしいぞ。私は使った事が無いから確かな事は言えないけどそう言われているね」
おお、ネイちゃん凄い杖ゲットしたよ。夜なら無敵じゃん。夜、魔法使うか分からないけど。
「タエのはまた渋いのを選んだね。神木の杖だよ。神力が宿っていると言われている杖だよ。気が向いたら神様達が力を貸してくれるって言うやつだよ」
おお、だから手にくっついて来たのか~。助言ちゃん達に引き寄せられたかな? これも運命かな~仕方なし。
「じゃあ、まずは杖に魔力を流してごらん。相性が良ければ何かしら発動するから」
まずはネイちゃんが魔力を流し込んだ。今はちょうど夜です。月光が窓から差し込んでいます。キラキラと星屑が舞い散るように部屋中に散りばめられてます。うわぁ~凄く綺麗。
「うん。発動したね。スターダストメモリーだ。ちゃんと修行すれば星の記憶が覗けるよ」
次は私だ。魔力を込めると金の助言ちゃんが両手を広げて空を迎えてるような仕草をしだしました。私の杖が金色に発光して徐々に光を強めて行きます。
「ああ、本当に発動するんだ……。まさかと思っていたんだが、ウィスパーオブザゴッデスだよ。神々の声が聞こえる様になるんだ。頑張りなさい」
……いや、もう聞こえてますがな。魔力の供給を止めるとさっきまで干からびたただの枝みたいだった杖が変化していました。
つるっとした表面に変わり金色の筋が走っています。魔力の通り道が出来たようです。……これって金の助言ちゃんだけでこうなったんだよね?
ひょっとして黒と銀の助言ちゃん達も何かしたら変わっちゃう? ちょっと心配になってきました。
「うん。2人ともちゃんと発動したね。師匠としては鼻が高い事だ。普通は何回か失敗するんだよ。大抵の弟子は欲に目がくらんで高性能な杖を選ぶからね」
さて今日はここまでかな。半分も片付かなかったけど、杖が手に入ったし満足です。どう使うのかはまだ分かんないけどね。
晩御飯を食べて、お風呂に入りました。お風呂ではみんなでお歌を歌ってはしゃいじゃいました。ネイちゃんもお姉さん師匠に慣れてきたみたい。なんだか調子っぱずれなお歌を歌ってました。
お風呂から上がったらまたお姉さん師匠のベッドでみんなで寝ました。ふかふか胸部装甲は気持ちが良いです。
お姉さん師匠も小さい時に弟子入りして、もうご老人だった師匠のもと不安な時、おばぁと一緒に寝たんだって。
翌日も今日と同じ様に過ごしました。客室も綺麗になったけどまだお姉さん師匠と寝ています。もう少し大きくなるまでは良いよね?
さらに2日程経って、居間も片づけ終わりました。うん。これで人が暮らせる家になったよ。ちゃんと片付ければ良いお家なのに勿体ないです。
まだ2階もあるけどそれは追々で良いとのことなので、片づけは一旦終了です。
「さて今日からは、錬金術師としての活動を始めるぞ。課題だった特級軟膏を仕上げたいところだ」
「はい。師匠。配合が問題だと思います」
「うん。そうだな。根っ子を使わないままの配合じゃダメなんだと言う事だな。では3人で色々配合を変えて試してみよう。まずは自分の好きなようにやってごらん」
多分私分かっちゃった。特級粉末が足らないんじゃないかと思うんだよ。どの位足せばいいのかまでは分からないんだけどきっとそうだよ。
ちょっと作っては師匠に見て貰うを繰り返して、うん。失敗した。上級にまで落ちちゃった。おや~私の予想が間違ってたよ。
「よし。出来た! 特級軟膏だ」
えぇ~。師匠出来ちゃったの? 流石です。お見それしました。
師匠の配合比率を教えて貰ったよ。特級粉末が多かったんだ。ドンドン減らして言ったら最高品質、特級と上がって行ったよ。
でも難しいのは最高品質と特級になる分量がもの凄く微妙なんだ。減らし過ぎると一気に下級軟膏になっちゃうんだ。入れ過ぎると最高品質を通り過ぎて高品質になっちゃう。
ほんとに1粒2粒の差なんだよ。こんなの出来るか~! 師匠以外特級も最高品質でさえ作れませんでした。
湿布でも同じ事で超絶微調整が出来ないと特級湿布は作れません。師匠でさえ特級は5回に1回、後は最高品質止まりです。
それでも凄いんだけどね。私とネイちゃんでは作れなかったから。これでも師匠と一緒に何回も挑戦したんだよ。
普通に作っても高品質が出来るんだから、こんだけ気を使って高品質だと物凄い徒労感がハンパないです。
以下の様な物も書いています。
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