48.強化5
ブクマ・評価有り難うございます。
少し前から教官のハンスさんを相手に2人で打ちかかる稽古に移行してるんだ。ネイちゃんと連携して今日こそは1本取ってやる。
チラッと目線を私に向けてからネイちゃんがハンスさんの脇腹目掛けて小太刀を振り切った。当然の様に剣で受け止められるけど逆の脇腹ががら空きになってる。
「もらった~」
踏み込んで小太刀を振り被ったところで頭にゲイ~ンと一撃を貰う。
「くわぁ。いった~。完璧だったのに!」
「……うん。タエ完璧。なぜ決まらない?」
「……本気で言ってるのですか? どこが完璧ですか! 3テンポも遅いじゃないですか」
くっ。ハンスさん曰く隙を見つけてハッとする。その時ネイちゃんは押し返されてる。一歩踏み込む。ネイちゃんはたたらを踏む。ハンスさんは待ち構える。私が振り被る。ネイちゃんはやっと体勢を戻す。ハンスさんが頭に一撃入れる。
という流れだったらしい。おかしい。私達の想定と違う。ネイちゃんが仕掛ける。隙を見つけて一撃入れるだったはずなのに。
「いいですか。いちいち動作の間にハッとかホッとか驚かなくて良いですからそのままかかってきなさい」
おや~。そんなものを入れているつもりは有りませんよ? 今度は私が仕掛けます。低い姿勢で滑る様に足元を狙う脛攻撃。またも頭に一撃が来ました。
私と同じ位にネイちゃんも仕掛けていましたが、私があっさりと迎撃されたので急停止。止まった所を足を払われてスッテンコロリンしてました。
「いやね。そんな無防備に突っ込んできても、そりゃ打ち下ろすでしょ? 考えてます?」
解せぬ。なぜうまく行かないのかしら。そうよ。奇をてらうからいけないんだ。基本が大事よね。正眼からの唐竹、これしかないわ! それもネイちゃんとの同時攻撃。かわし様が無いはず。
2人で正眼からの唐竹、ハンスさんは絶体絶命のはず。あ、一歩踏み込んで来た。私達が振り下ろした時にはもう横にハンスさんがいます。お尻に衝撃が走りました。
ぱしーん。ぱしーん。2度平たい何かが肉を打つ音です。
「いったーい。乙女のお尻に何するんですか」
「いや、今のは良いよ。時間差付けてたら受けるしかなかったからね。でも同時に来たらそりゃ、間合いを詰めるでしょ?」
くっそ~。なぜこちらの目論見通りにいかないのかしら? もう少しこっちの思う通りに動いてくれないかな。
「え~と、自分達がやりたい事だけしててもダメなんだよ? 相手だって斬られたくないんだか斬られないように動くんだよ」
なるほど。言われてみればその通り。誰だって斬られたくないもの。と言う事はどう言う事なの? 斬られたくなるようにするのかしら。
いやいや、それは無理よね。分かんない。どうすれば斬れるのかな?
「ちょっとタイム。ハンスさん、ネイちゃんと打ち合わせしたいです」
「どうぞ。でも実際はそんな余裕ないからね。事前にやっておくんだよ」
「ネイちゃん。ちょっと分からなくなっちゃったんだけど、斬られないように動く相手を斬るにはどうしたらいいと思う?」
「……動く前に斬る!」
男前だよネイちゃん。それが出来ないからこうやって打ち合わせてるんだよ。
「うん。そうだよね。それが一番だよ。じゃあ2番は?」
「……追いかけて斬る?」
小首を傾げながら自信なさげに言ってきたよ。相手の方が先に動いてるから追いつけないよ。追いつけるなら動く前に斬れてるからね。
「うん。追いつけないよね。駈けっこでも先に走り出したらズルじゃん」
「……じゃあ、止めて斬る」
それだ!
「うん。そうだね。動けない様にして斬る。なんかそれで良さそう。で、どうやって止めようか?」
「……分かんない。さっきの囮攻撃も同時攻撃もダメだった」
「だよね。どうしよっか。……閃いた! 一人で囮と攻撃を同時にするんだよ。その間にもう一人が後ろからバッサリやるなんてどう?」
「……おお。タエ天才」
こうして作戦が決まりました。もちろん囮&攻撃を私がやります。まずはなにも無い所に攻撃を仕掛け相手がビックラした所で水平に薙ぎます。もちろんビックラこいた相手は受けるしか手が無くなります。
その時にはうしろに回ったネイちゃんが攻撃を仕掛けてくれるでしょう。それで一本です。
「では行きます。今度こそ一本です」
「……まあ、やってごらん」
行きます。なにも無い所にいきなり唐竹です。ハッ。そのまま水平に薙ぎます。がその前にパシーンとお尻をはたかれます。きゃん。めげずに薙ぎました。ハッ!
あっさり受け止められましたが想定通りです。私の掛け声にビックラこいたネイちゃんが動き出しますがじーっとハンスさんに見つめられています。横を通り抜けようとしたところに足を出されてスッテンコロリンです。
その後も似たような感じで散々打ちのめされましたよ。お尻がひりひりします。今日の稽古が終ってハンスさんにバイバイしてお姉さん師匠の所に戻る事にしました。
おうちの前にはもうお姉さん師匠が待っていましたので走り寄りました。
「お昼はジュリの所に行って食べよう。その後は客間を片づけてお前達の部屋を作るぞ」
おお、とうとう魔境を片づけるのですか。難儀なことです。明日は居間かな~。頑張ろう。
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