37.わさぶ
遅くなりました。
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「おっちゃん。クズ塩ちょうだいな」
「おや? この間の譲ちゃん達かい。ブルーソルトはどうだった?」
「うん。キリっとした塩辛さが良いネ。さっぱり系の塩かな~? この間お肉に振りかけてみたよ。削る前は綺麗なのに削ると白くなっちゃってちょっと残念」
「はっはっは。そりゃ塩だからね。うん。うん。味の方は分かってるね~。どうだいブルーソルト安くしとくよ」
「う~ん。まだ駄目かな~。もうちょっと稼いでからじゃないと、と言う事でクズ塩4袋ちょうだいな」
「おや、また今日もたくさん買うね。この間だって2袋だったよね?」
「うん。宿屋の女将さんに買い出し頼まれてるの。2軒だよ。それも繁盛店だから結構使うみたいだよ」
「そいつはありがたいね。ほら今度はこいつをやろう。欠片だけどローズソルトだ」
「わ~。いいの? いいの? これお高いんでしょ?」
「はっはっは。味も分かってくれるし、今回も大量だ。今後に期待しての先行投資だよ。次はイエローが良いかクリスタルソルトが良いか考えておくよ。また来ておくれ」
「はーい」
塩屋のおっちゃんとも顔なじみになって来たし、オマケもくれるのでそろそろ自分達用の調味料は塩を変えてもいいかもしれないね。塩でも一味変わるからね。
◇ ◇ ◇
あれからさらに10日程が経ちようやく落ち着いてきました。他の冒険者の協力で猪肉などの供給も始まりましたし、調味料も多めに製作して渡してあります。
「さてネイちゃん、大分お待たせしちゃったけど今日はわさぶ塩の開発をします」
「……待ってた」
うんうん。何時も視線を感じていたよ。ネイちゃんが我慢強くて助かった。日に日に視線が強くなるからどうしようかと思ったけど、耐えてくれました。
採取したわさぶは既に洗浄の魔法を掛け、でこぼこした部分に入った汚れまできれいに落として何と自然乾燥をしてみました。
葉っぱ部分と地下茎部分を切り離してそれぞれ粉末にしました。部分別に分けたのには理由がちゃんとあります。
地下茎部分の方が味も香りも強烈です。それに比べ葉っぱ部分は香りは有りますが辛みが少ないのです。と言う事で辛み以外の調整を葉っぱ部分でしようと思います。
「問題は配合なんだよね。それをこれから試して行きたいと思います。ネイちゃん、味見をよろしくね」
「……おお、よいの?」
「もちろんだよ。裏庭借りてあるからそこで実食しながら決めて行こうね」
実はネイちゃんには言って無いけど、一般受けするのはそこそこ辛みの強いものではないかな~と予想しているんだよね。ネイちゃんの好みとはちょ~っと違うかな~なんてね。
もちろん実食に使うのは脂身の多い部分、そうです。カルビです! 猪の肉を購入してきてあります。また牛、鳥、羊、鹿、熊肉と色々な種類を用意してあります。ちょっとずつだけどね。
最適な配合を見つけるためです。決していろいろ食べたかったわけじゃありません。じゅる。
5メルメル程の大きさに切り分けた各種お肉、フライパンで炒めてから実食です。最初の配合は辛さを極度に抑え香りだけの物です。
「……むふぅ~。ん? 塩味?」
「あ、やっぱりそんな感じだった? 香りは良いんだけどやっぱり食べると味ないよね。これはダメだね」
次は辛みを前面に出し香りはそこそこの物なんだけど、大丈夫かな?
「……むふ? !!! くはっ み、水!」
「くぅー、効くね~。これはこれでいいかもしれないけど、エールと一緒ならありかな? いや、ないね。辛過ぎだね」
ネイちゃんが走って行って井戸水を汲むのももどかしそうに慌てて汲んだ水をガブガブ飲んでる。もちろん私もご相伴にあずかったよ。
一息ついた所で物凄く恨みがましい目で見つめて来てる。しょ、しょうがないんだよ。実験だもの。必ず通る道何だよ。
「ご、ごめんね。ちょっと辛過ぎたよ」
さて、最後は本命の配合だよ。辛みも香りもそこそこちょっと辛み強めにしたものだよ。
ネイちゃんの前に置いたけど、なかなか手を出さない。うん。学習しちゃったね。でも大丈夫だよ。これは本命だから美味しい筈。
「ど、どうしたのかな? ネイちゃん。美味しいよきっと。これは本命のやつだから」
「……」
暫く睨み合いが続きましたが、ネイちゃんも覚悟を決めた様子でお肉に手を出しました。
「……むう。香りよし。行く」
一瞬顔が赤くなって、むはってな感じで鼻を通り抜けて行く辛み、抜けきってしまえば程々の辛みとお肉の脂身が相まって甘味すら感じる様になる。
「どうかな? おいしいよね?」
「……辛い。……けどおいしい?」
おお、どうやら子供舌でもそこそこ美味しいと思える様な出来らしいです。と言う事は大人だともう少し辛い方が良いかな?
いやいや、この辺の人は辛みに慣れてないから子供舌のままで行こう。多分前の私の体ならこのくらいの辛みじゃ不満だと思う。けどこの体だと結構辛いんだよね。
もちろん直ぐに忙しそうな女将さんたちとご主人たちにも味見をして貰った。結果、即決で購入も決まったのでそのまま配合して当分大丈夫なくらいの量を渡しました。
以下の様な物も書いてます。
異世界農業物語~異世界で農業始めましたーhttps://ncode.syosetu.com/n0558dz/
異世界転生苦労譚~異世界だって甘くない~https://ncode.syosetu.com/n3637fl/
エルフ賢者の子育て日記https://ncode.syosetu.com/n5068fk/