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遅れたチート(ハルデブランド国王Side)

「この料理は今までにない味じゃが旨いな」

今まで務めていた料理長が職を辞したので味の低下を懸念していたが心配は無用であったようである。

新しい料理長は前の副料理長だったな、どんな男か見ておくか。

ワシは新しい料理長を呼び出した。


「今日の料理はなかなかの物であった。特にスープは今までに無い味であったがなにを使ったのか?」

全体的に味付けの変化を感じたが特にスープの味は顕著だった。

「はっ、それはルゥールァリー様に研究を命ぜられていた魚の日干しと海に生える草から出汁を取りました」

ん?なぜここで娘の名前が出てくるのだ?

料理長の話によると十年以上前にルゥールァリーがひょっこり厨房にやって来て調理器具や調理法を調べていった。

そしてその数日後に新しい味付けの方法や出汁の取り方についての方向性を示す資料を持ってきたそうだ。

だが、前の料理長は王女が相手でもこれに取り合わず、かたくなに伝統の方法に固執した。

それで副料理長であった彼がその調理法などを研究することになった。

結局その研究はルゥールァリーが倭国へ嫁ぐまでに完成せず、それなりの形になった後も料理長の命令で食卓に出すことができなかったそうだ。

「分かった、これからも積極的に新しい物も取り入れていくように」

「承知いたしました」

これは今までに無い新しい味だ。

使える!

ワシは一人ほくそ笑む。

だが、ルゥールァリーはよくこんな方法を思いついたものだな・・・



数年の月日が流れた。

直轄地の収穫量が徐々にではあるが増加している。

今は他の貴族たちが治める土地より明らかに収穫量が増えている。

ワシは担当の大臣を呼び出した。

「はっ、メルクリオスお呼びにより参上いたしました」

「収穫量の増加、まことに大儀である。ところでこの資料にある輪裁式農法とはどのようなものか答えよ」

「それはルゥールァリー様が倭国に嫁がれるまで研究されていた方法で、大地に宿る三要素と呼ばれるものを回復させながら行う農法であるそうです。具体的には同じ場所で毎年同じ物を作るのでは無く色々な物を植えたりしております。私もルゥールァリー様が倭国に出発される前日に資料を託され、その資料を基に実地で検証を重ねただけなので、それ以上の説明はいたしかねます」

「・・・」



更に数年の月日が流れた。

「お爺様」

うむ、やはり孫は可愛い。

二番目の娘は国内の有力貴族に嫁いでいたが、王都からは距離があり孫が馬車に酔いやすいからとなかなか会いに来てはくれなかったのだが。

「おお、大きくなったな。馬車での旅で疲れてはいないか?」

「大丈夫、ルゥールァリー叔母様の作った馬車はあんまり揺れないから」

は?

ワシは馬車を使わず、基本は馬に乗っておったから知らなかったが、悪路でも揺れが少なく快適な馬車が開発されていたようだ。

娘や孫とのふれあいを楽しんだ後で詳しく調べてみたのだが、ルゥールァリーが倭国に出発した二日目の宿で馬車の揺れを少なくする方法をまとめ、同行していた侍女を通じて懇意にしていた商人に届けさせていた。

その商人はルゥールァリーの殴り書きのような図を研究し、その成果を逐次取り入れて今の揺れの少ない馬車を完成させたらしい。

「・・・」

ルゥールァリーのことをただのお転婆娘だと想っていたが、ワシの人を見る目はまだまだであったようだ。

昨日、教会からは農業の収穫量の増加により冬季に死亡する者が激減したとして、ルゥールァリーに現人神の称号が贈られた。

ワシは久しぶりに倭国の娘に手紙を書いた。


~~~~~


(小笠原宗孝)


妻に手紙が来た。

まあ手紙自体は珍しくも無いが、それが義父からの物であったため私が直接妻の元へと持ってきた。

「まあ、お父様からのお手紙なんていつぶりかしら」

妻は顔をほころばせて手紙の封を切る。

知ってはいたが家族同士の仲は良いようだ。

私は妻の後ろからそっと抱きついて、開いた手紙をこっそりと覗く。

私は妻の国の言葉を話すことはできるようになったが、読み書きは未だ勉強中だ。

そのため回りくどい表現の多いこの手紙の内容は全く理解できなかった。

別に一緒に読んでみたいと思っただけで、なにかを探っている訳では無い。

私は大人しく妻が手紙を読み終わるのを待った。

「ふふっ」

妻が笑顔で読んでいた手紙を折りたたみ封筒にしまう。

「ルー、なにか嬉しいことでも書いてあったのかい?」

妻がニコリと微笑む。

「知りたいのですか?どうしても知りたいとお願いするのなら教えて差し上げても良くてよ」

実にもったいぶった言い回しだ。

おそらく妻は何か自慢をしたいのだろう。

それを察した私は甘えるように耳の側で囁いた。

「おねがい、ルー」

妻の顔が真っ赤に染まる。

「そ、そこまで知りたいのであれば仕方ありませんね。教えて差し上げますわ」

妻は後ろから抱きついたままの私と目を合わせないように前を向いたままハルデブランド王国で人に託した色々な研究が実を結んだことと、教会から現人神の称号を贈られたことを話してくれた。

「ふふん、わたくしはついに祖国でも神になったのです。偉大なわたくしを崇めたてまつっても良いのですよ」

私は妻の頭に手を置いて優しくなでる。

「ルーは最初から私にとっての女神ですよ」

妻の表情が気持ちよさそうにへにゃんと緩んだ。

私の偉大なる神はいくつになってもとても可愛い。

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