爪の手入れ
パチン、パチン。
「……うん」
ゴリゴリ。
「よし」
パチン、パチン。ゴリゴリ…。
「あーや先輩、何してるんですか?」
「これが稲刈りに見えるんだったら稲刈りかもしれんな」
「俺の経験上では爪切り以外に見えないですね」
「じゃあそういうことだ」
パチン、パチン。
再び無言で爪切り作業に戻る。切って、綺麗にやすりがけしては満足そうな顔をする。
「いや、そういうことじゃなくて。女性って爪で色々するじゃないですか。なんか塗ったり付けたり」
「全員が全員そうするわけじゃあないだろ。ナナだって沙羅だってしてないぞ」
そういえば、と思い読書中の七瀬先輩と窓をボーっと眺めている沙羅先輩の手を見てみる。二人とも素材そのままの綺麗な爪だった。
「なんでしないんです?」
「する理由が分からん。デメリットばかりじゃないか」
「例えば?」
「爪伸びたらキーボードが打ちづらいだろ」
あー、分かる。怠けて爪切り放置してるとキーボードのキーストロークが深いやつだと引っかかっちゃうんだよね。
「それに落ちてる小銭は拾えないし、ジュースのプルタブは開けにくいし。ほら、いいことないだろ」
「でも、女性のファッションとしてはネイルってポピュラーなものじゃないですか」
「私を見ても同じことが言えるか?」
確かに、年中ジャージで過ごしているあーや先輩にファッションがどうとか尋ねるのは筋違いだった。
「すいませんでした」
「納得いかんが分かればいいんだ。うん」
「七瀬先輩はどうなんです?」
結構身なりに気を遣っているタイプに見えるので、マニキュアとかは少しくらい使ってると思っていたのだけど、見る限りは素の状態だ。
「うーん、興味が無い。というのが素直な答えかな」
「興味ですか」
「勧められたことはあったんだけどね。抵抗があるとかではないんだけど」
「あとは純粋に面倒だからだよな。ナナ意外と面倒くさがりだし」
「え、そうなんですか?」
ハハハ、と笑って視線を本に戻す七瀬先輩。
「沙羅先輩……は」
そういったことには無頓着なイメージしかない。
「とんがりコーン挿す方が楽しい」
「懐かしい!よくやったなー」
いつも通り、素材そのままマイペースな我が研究室の女性メンバーであった。




