260416 ゆめかわ
見下ろした街は円形に近く、全体を壁に囲まれていた。少ない面積を少しでも補うように細長いビルがいくつもいくつも立ち並ぶ。人々はせわしなく歩いており、立ち止まるほとんどない。同じようなデザインの車が信号で列を作る。信号が切り替わるたびに進んで、新しい車がやってくる。その動きは刻々と変化していくものでありながら、どこか規則的だ。ずっと上から見下ろす私に気づくものはおらず、私はただ、ぼうっと眺めながら時間を過ごした。
夢を見ていた。
それは無数のシャボンが浮かぶ森の中の湖だった。湖面から湧き上がったシャボン玉は数秒のうちにパチンと消えてしまい、そのたび小さなしぶきが上がる。シャボン玉に入って遊んでいる丸っこい魚が水面に落ちたしぶきだ。外敵のいない閉ざされた世界は常に平和で、魚たちは野生の厳しさを知らない無防備を晒している。
「里奈、ごはん!」
「はーい!」
名前を呼ばれた私は名残惜しいと思いながらも立ち上がる。
夢を見ていた。
毒を帯びた砂の煙が舞う。浄化塔に遮られた外の世界はまるで地獄のようで、かつてあった街並みはボロボロになっていた。毒と砂に晒された木材は腐り果て、コンクリートは削り取られ、むき出しの鉄骨も腐食を受け穴だらけになっている。10年もしないうちに、外の建物は痕跡すら残さず消えてしまう、というのが政府の見解だ。
夢を見ていた。
今日は肉の日だった。けれどそんなにたいした違いはない。人工栄養食は味気ない。フレーバーがいくつかあるだけのそれは、結局のところ、ちょっと認識をごまかしているだけでどれも同じようなものだから。
さっと平らげた私は、自分の部屋に戻ると、だらしなくベッドに横になった。脇に置かれたアクアリウムの世界は相も変わらず平和で、世の中を何も知らない丸っこい魚たちが、ぷかりぷかりと遊んでいた。




