260528 指差し 書きかけ
「おじさん死ぬよ。三日後に」
見知らぬ少女が突然、サラリーマン風の男性を指差して口にするのを、私は駅のホームで目撃した。男性は怪訝な、それでいて嫌そうな顔をして、少女の突拍子のない行動を見ていた母親が、すみませんすみませんと頭を下げていた。
傍から見れば、少しおかしな子どもが、おかしなことを言っただけだと思うだろう。けれど私は少女のことがとても気になって、少し調べることにした。
結論として確かに、少女は人の寿命が見えているようだった。正しく述べるならば、死に向かう運命のルートだろうか。いくつも分岐した未来のうちの、死に直行する道のりを把握し、それを回避するような働きかけを行っている様子が、何度か見受けられた。けれどもそれはわからない人からすれば異常な行動にしか思えず、そのせいで少女は孤立し、周りからもおかしな子どもだと思われているようだ。
まあどうだっていいさ。私にとっては、ちょっと変わった子どもがいるというだけの話で、それが何かに影響を与えるかと言ったらそんなことはない。だって人は死ぬし、逃れられない運命を変えられるわけでもない。
私は脳梗塞で逃れられない死を与えられた男性の魂を回収し、それを送り届ける。これで仕事は終わり。とりあえず上に報告だけは行ったけれど、たぶん、まともに取り合うこともないだろう。
ただ、ちょっと変わった少女のことは、私にとってちょっとした暇つぶしにはなった。だから私は時間を見つけては、時折少女のことを観察することにした。
おかしな子供と思われた少女だったが、歳を重ねると分別をつけたのか、死の宣告なんてことはしなくなった。それでも根が善性なのか、死の運命に突っ込んでいこうとする人のことはそれとなく助けていて、それは少しばかり、周りから不思議な人に映っていたようだ。
果たして、転機が訪れたのは少女の区分けが高校生に変わって二度目の夏のことだった。
やがて忘れ去られる
歳を重ねると、己の死の運命が見えるようになる。




