260414 頬杖
頬杖を突いてテーブルに座る朱里。
自分はいま不機嫌です、とアピールしているのだ。
かつて微笑ましいと思えたそれを、ただただ鬱陶しいと感じるようになったのはいつからだろう。
結局のところ人というのは長く付き合うほど、近い関係になるほど、相手のいやなところや悪いところが見えてくる。だからうまいこと折り合いをつけて行かないと、人付き合いなんてやっていられない。
いやいや、浮気しといて何開き直ろうとしてんの? この後藤って子とずいぶん仲いいみたいね
どこで撮ったのその写真? その子会社の後輩だよ
ホテルに一緒に入っていったのに?
出張だよ。もちろん部屋も別
にしてはずいぶんと親しそうだったね。ハートいっぱいのメッセージ貰って
後藤さんのメッセージはいつもそんな感じだよ。ってか何勝手にスマホ見てんの? どうやって開いた?
パスワード。その後藤さんの誕生日でしょ
実家の犬の誕生日でもあるね
じゃあなんで一緒に写った写真があるの?
十人くらいいる同僚は見えていない?
それでネタが尽きたのか、朱里は頬杖を突いたままそっぽを向いた。これだから嫌なのだ。具合が悪くなると、自分は不機嫌ですとアピールして譲歩を引き出そうとする。だから出張の同行者に後藤さんを選んだし、個人的なメッセージのやり取りをしているし、集合写真でも隣に並んで立っている。絶対にばれないようにしながらの、ゆっくりとした移籍の途中だ。
まあいいわ。あいつのことばれてないみたいだし。朱里が心でつぶやいた声は、もちろん私には届かなかった。




