表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今日のお題  作者: すばる
28/49

260512 学ラン

 高く青い秋空の元、黒い服装の一団がフレッ! フレッ! と手を振る。体育祭の応援合戦で、白組応援団は全員が学ランを装備した硬派な演技を魅せていた。随分と練習したのだろう。全員の動きに乱れはなく、見事な連携が披露される。ただ僕の目はその他大勢をほとんど映さず、凛々しく声を上げるひとりの少女だけをずっと追っていた。


 今年の体育祭は僅差で紅組の勝ちだった。まあ運動音痴の僕はまったく貢献できていないし、勝敗にもたいしてこだわりはない。

 空が赤みを帯び始めたころに閉会式も終わり、全生徒で一斉に片づけを済ませてから、僕たちはそのまま教室へと引き上げた。これであとはもう、ホームルームをやって帰るだけ。なんだけど

「これ、ありがとう」

 一度教室に戻った僕は、すぐに外に出て、待っていた塚本から丁寧に畳まれた学ランを受け取る。体格が近いから貸してほしい、と頼まれて応援団の衣装として渡したものだ。「うん」と曖昧な返事をして、着替えのために教室に戻る。もうちょっといい返事はなかっただろうか、とドアを開けながら後悔。けど塚本はもう更衣室に向かってしまった。

 自分の席に戻って体操着を脱ぐ。がやがやと周りではクラスメイト達が騒いでいる。けど、その音はどこか遠くでしているように耳を通り抜ける。

 さっきまで、これ着ていたんだよな。塚本が。

 心の中でそんなことを思った。さらに言えば、今朝は僕が着てきたやつだ。それを塚本が着て、今は僕の手の中。

 どきどきとした。指先だって触れていないのに。

 塚本はどんなことを思ったんだろう。何とも思わなかったのか。だとしたらそれはそれでちょっとショック。意識しすぎだろうか。そんなことを思いつつ、シャツを着て、ズボンを履き、上着を羽織る。何というか、背徳的だ。

 しばらくはクリーニングに出さないでおこうと思った。


 ◆


「どうかしたの?」

 視線の不自然さに気づかれたのか。友人の怪訝な声に、私は何でもないと返した。見ていたのは下校するひとりの男子の背中。さっきまであれを着てたのだよな、と思い出すと顔がほてる。きっと今の私は顔が赤い。窓から入る西日に感謝しないと。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ