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両親に溺愛されて育った妹の顛末  作者: 葉柚
番外編

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厳しく育てられたお姉さまの顛末12


「あなたは随分と熱心に女神像に祈るのですね。」


 そう言ったのは南の修道院のシスターだった。

 質素なシスター服に身を包みながらも彼女は穏やかに笑った。

 その笑みがどこかエレノアお姉さまを彷彿とさせた。

 私がエレノアお姉さまのことを過度に頼らなければ、もっと私がしっかりしていれば、今もエレノアお姉さまの穏やかな笑みをみることができたのかもしれない。

 そう思うとふいに涙が込み上げてくる。


「あら、泣かないで。オフィーリア。」


 シスターは泣いてしまった私のことをそっと抱きしめた。

 シスターは誰よりも暖かい心を持っている人だった。誰も彼もがシスターのことを誇りに思っている。

 シスターを見れば元気をもらえるという人もいる。


「シスター。私は……償えないほどの罪を犯してしまったのです。」


「……あなたは罪を犯したから後悔をしている。後悔できる罪は償うことができます。」


「でもっ!エレノアお姉さまはもうこの世にはっ……。」


 シスターの言葉に私はぶわっと涙を溢れさせる。

 エレノアお姉さまはすでにこの世から旅立った。私が南の修道院に旅立つのと同時刻に、遠い遠い世界に旅だってしまわれた。

 私は、エレノアお姉さまのためになにもできなかった。

 罪を償うことすら許してもらえなかった。


「ふふっ。あなたが今、熱心に祈っているのは何故ですか?」


 シスターは柔らかく笑いながら私の頭をそっと撫でた。


「エレノアお姉さまに謝りたくて……。」


「そうですか。あなたが祈っているのは女神像ですよ。」


「え、ええ。」


「女神像は祈りを聞き届けてくださいます。」


「はい。そう教えを受けました。」


 女神像はどの修道院にも存在している。女神像に祈ればその祈りは通じると誰かが言っていた。

 だから私は毎日女神像に祈りを捧げる。

 エレノアお姉さまが幸せな人生を送ることができるように、と。

 もうエレノアお姉さまは亡くなってしまったけれど、次に生まれ変わったら今度こそは幸せな人生を送ってほしいと。


「女神様はすべてをご存じです。きっとあなたのその必死な祈りはいつか女神様に届くことでしょう。」


 シスターはそう言ってただただ穏やかに微笑む。

 私はシスターの笑みに誘われるように顔を上げて、女神像を見つめた。

 ここに来てから初めて女神像の全体を見回した。今までは女神像にひれ伏すばかりで、女神像の腰から下ばかりを見ていた。だから、ここに来て初めて女神像の全体を見て私は驚きに目を大きく見開いた。


「……エレノアお姉さまっ。」


 私が思わずそう呟くと、シスターは満足したように満面の笑みを浮かべて私の側から離れていった。

 南の修道院にある女神像はエレノアお姉さまにうり二つだった。

 その理性的な瞳も、僅かに開かれた唇も、顔の輪郭までもなにからなにまで女神像はエレノアお姉さまにうり二つだった。

 まるでエレノアお姉さまが目の前に立っているように見えた。

 私の目から止めどなく涙があふれ出す。身体は歓喜に震え、女神像に追いすがるように抱きつく。


「エレノアお姉さまっ。お会いしたかった。お会いしてずっとずっと謝りたかったの。」


 後から後からあふれ出す涙は女神像に吸い込まれていく。


「私っ!ずっとエレノアお姉さまに甘えてた。甘えてばっかりで全部エレノアお姉さまに押しつけて……。無理をさせてしまってごめんなさい。エレノアお姉さまっ。私、馬鹿だったからエレノアお姉さまだったらいくら甘えても大丈夫だって思っていたの。ごめんなさい、エレノアお姉さま……。あんなになるまで追い詰めてしまってごめんなさい……。ごめんなさい……。」


 私の涙を受けて女神像は淡く光りだす。

 その光はまるでエレノアお姉さまが私のことを許しますと言っているように思えた。


「私、エレノアお姉さまには幸せになってもらいたい。私の分までずっと。今まで私がエレノアお姉さまに幸せにしてもらっていた分、いいえ、それよりもずっとエレノアお姉さまには幸せになってもらいたいのっ!」



 エレノアお姉さまに幸せになってもらいたい。

 それは無情にもエレノアお姉さまが亡くなってしまってから心の奥底に湧き出てきた想い。

 願っても叶えられることのない願い。

 でも、願わずにはいられない願いだった。


「エレノアお姉さまっ……。」


 もう一度エレノアお姉さまの名前を呼ぶと、女神像は輝きを増した。そうして、女神像が発する暖かな光が私を包み込む。


「暖かい……エレノアお姉さま。」


 光に包まれ目を閉じた私が次に目を開けたのは、今は亡きオールフォーワン侯爵家の自室だった。






終わり




☆☆☆☆☆



これにてオフィーリア視点の番外編は完結となります。

最期までお付き合いくださりありがとうございました。

この後は、もうお気づきのとおり、本編に続きます。そして、この番外編は2回目以上のやり直しの結果です。本編は3回目以上のやり直しの結果です。


本編のどの部分からオフィーリアがやり直し始めたのか、何回のループで本編にたどり着いたのかについては皆様のご想像にお任せいたします。

オフィーリア視点の番外編が非常に重かったので、この後、数話番外編を投稿する予定です。番外編の内容はエレノアとオフィーリアの幸せな日常がベースです。

また時間があればジュドー視点のお話も追加できたらなと思っております。

今しばらくお付き合いいただければ幸いです。



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