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両親に溺愛されて育った妹の顛末  作者: 葉柚
番外編

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厳しく育てられたお姉さまの顛末11

「オールフォーワン侯爵夫人。あなたには一番厳しいとされる北の修道院に行ってもらうことになった。」


「……温情、感謝いたします。」


 ジュドー皇太子殿下の言葉に、お母さまは震えながら従った。

 命があるだけでもありがたいと思ったのだろう。

 お母さまが行く修道院がどんなところだかわからないけれど。


「オフィーリア侯爵令嬢には、南の修道院に行ってもらう。修道院は修道院だが、侯爵婦人とは別の修道院だ。君はまだ若い。エレノアのことを思い出しながら、何がいけなかったのか考えてみるといい。」


「……謹んでお受けいたします。」


 私は立ち上がりエレノアお姉さまの姿を思い浮かべながらカーテシーをした。

 

「ですが、お願いがあります。私は修道院に立つ前にエレノアお姉さまにお会いしたいのです。エレノアお姉さまと最期の時を過ごさせてはいただけませんか?」


 目に涙を浮かべながら、ジュドー皇太子殿下の目を見つめる。

 ジュドー皇太子殿下はそんな私から目を逸らした。


「それはできない。君たちにはすぐにでもここをたってもらう。」


「どうしてですかっ!」


「オフィーリア、やめなさい。温情をかけてくださった皇太子殿下に失礼ですよ。」


 思わず身を乗り出してジュドー皇太子殿下につめよってしまう私をお母さまが止めた。お母さまの顔には披露と僅かながらの安堵が見えた。


「エレノアには、家族のことを思い出して欲しくない。エレノアは家族のために自らを犠牲にし続けてきたのだから。最期くらいは家族に煩わされることなく穏やかに過ごして欲しいと思っている。」


「そんなっ……。私にはエレノアお姉さまが必要なんですっ!最期くらい会わせてくださいっ!!」


 ジュドー皇太子殿下はエレノアお姉さまのことを想って言ってくださるのだとは思う。けれど、私としては最期に一目エレノアお姉さまにお会いしたかった。お会いして話をしたかった。


「ダメだ。君は、まだエレノアに会う資格はない。君がエレノアにしたことを、君は正しく理解していないだろう?」


 ジュドー皇太子殿下の視線は限りなく冷たい。

 私がエレノアお姉さまにしたことは、エレノアお姉さまを頼ったことだ。エレノアお姉さまに意地悪した覚えも無ければ、お父さまやお母さまと違ってエレノアお姉さまを脅したことも無い。


「それから、オールフォーワン侯爵家は取り壊されることになった。使用人たちは王宮の方で適切な仕事先を紹介する予定だ。」


 オールフォーワン侯爵家が取り壊される。

 その衝撃に私は目を大きく見開いた。

 オールフォーワン侯爵家が取り壊されるということは、オールフォーワン侯爵家がこの国には不要になったということ。

 修道院に行ったらもう帰るべき場所が残っていないということだ。

 エレノアお姉さまと過ごしたこの場所に帰ってくることができない。エレノアお姉さまとの思い出に浸ることもできない。


「すでに決定されたことだ。この決定事項は覆されることはない。いいなっ!」


 ジュドー皇太子殿下は強い口調で言い切った。そして、それから先の言葉を続ける。


「……私は一国を統べる王になるべく育てられた。だが、私は皇太子妃であるエレノアのことにすら気を配ることが出来なかった。こんな体たらくでは、王になって民を導くことはできないだろう。だから、私は皇位継承権を覇気することとした。」


「「「ジュドー皇太子殿下っ!!?」」」


 流石にジュドー皇太子殿下の発言には度肝をくらった。

 お父さまもお母さまも私も、驚きを隠すことができない。


「さて、話は終わった。それぞれしっかりと罰を受けるように。」


 すがすがしい顔をして、ジュドー殿下はそう言うとそっと立ち上がった。そうして、何かを探すように辺りに視線を巡らせてから、屋敷を後にしたのだった。






☆☆☆☆☆





 南の修道院に行くために一日だけ猶予が与えられた。私はその猶予期間でエレノアお姉さまがいらっしゃるという離宮に足を運んだ。

 もちろん警備が厳重なため離宮の中には入れないし、私にも監視の目がついている。だから直接エレノアお姉さまと会ってお話をすることはできない。けれど、ほんの少しでいい。ほんの少しでいいから、エレノアお姉さまのお姿を拝見したかった。

 最期にエレノアお姉さまのお姿を脳内に焼き付けておきたかったのだ。


 質素なドレスに身を包んで、お忍びで離宮に向かう。

 このことはジュドー皇太子殿下……ジュドー様も知っている。

 ジュドー様はエレノアお姉さまに会いたいという私の想いをくみ取ってくれた。けれど、それは遠くからエレノアお姉さまの姿を見ることを許してくれただけにすぎない。

 それでも、一目でも良い私はエレノアお姉さまに会いたかった。


「こちらでお待ちください。」


 私は小高い丘の上に案内された。そこからは離宮の外れにある湖が見える。


「離宮はとても良いところね。」


 丘の上から見る離宮は穏やかな空気が流れているように見えた。自然に囲まれた場所にある離宮ならば、エレノアお姉さまも心穏やかに過ごすことができることだろう。


「……参りましたよ。」


「エレノアお姉さま……。」


 合図されて見た先には車椅子に乗ったエレノアお姉さまの姿があった。その姿は骨と皮ばかりに痩せてしまっており、まるで風が吹けば飛ばされてしまうのではないかと思うほどだった。


「……エレノアお姉さまは歩けないの?」


 車椅子に乗っている。それはエレノアお姉さまが自分出歩くことができないことを意味している。


「ええ……。極度の栄養失調によるものです。エレノア様はもう……目も見えておりません。立ち上がることも歩くこともできません。誰かの支えが無ければ起き上がることもできません……。」


「そんなっ……。」


 私は想像していたよりもおぞましいエレノアお姉さまの姿を見て、その場にペタリとへたり込んでしまった。エレノアお姉さまが衰弱していて、もう長くないということはジュドー様の口から聞いていたが、それでも実際に見てしまった時の衝撃は計り知れなかった。


「……あなた方が、エレノア様を過度に頼った所為で、エレノア様はあのような状態になってしまわれました……。」


 そう言って私をここに案内してくれた王宮の侍女だという女性は泣き崩れてしまった。きっとこの女性はエレノアお姉さまのお付きの侍女だったのだろう。

 私は、ただただエレノアお姉さまのことを頼ってばかりいた自分のことを責めた。

 エレノアお姉さまのことを頼るだけではなくエレノアお姉さまを支えてあげることができなかった未熟な自分を恥じた。


「ありがとう……。もう充分だわ。」


 これ以上自分が追い詰めてしまったエレノアお姉さまのことを見ていることが出来なくて、私はあれほど会いたかったエレノアお姉さまから目を逸らした。


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