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閑話 俺と元婚約者の出会い

「俺はS級冒険者になる!」


「マークお坊ちゃま!危ないですから降りてきてください!」


 やんちゃだった当時の俺は英雄になりたいと思っていた。家庭教師をつけられて勉強をする退屈な日々は俺から親の跡を継ぎたいという欲求を奪っていった。


 釣りに行ったり、木登りをしたり、一人でふらふらとするのが俺は大好きだった。また、友達はいなかった。俺の親は貴族だったし、選民思想があったので下賎の身分の平民とは遊んではいけなかった。その思想は俺にも刷り込まれていて、身分の低い子供には話しかけなかった。でも、選民意識のある傲慢な貴族の子供とも反りが合わなかった。だから、誰とも関わりを持たなかった。


 俺はぼっちだった。まあ、あまり気にならなかったが、時折友達が欲しいと感じていた。


 そんな俺が彼女に出会ったのはある夏の日であった。


「暑いわ!帰って寝たい。」


 森の中を一人で彷徨っていた俺は昆虫採集をしていたが、思ったよりもずっと暑かったので、ばててしまった。このまま真っ直ぐに家に帰るのも良かったが、汗をかいていたから水浴びをしたいと思った。


 幸い、森を抜けたところに湖があり、そこに俺は行った。水着は持ってきていないので俺はすっぽんぽんになって泳いでいた。


「気持ちいい!」


 親がいたら叱られてしまうだろう。貴族の子息が裸で湖を泳いでいるのが他の貴族に知れたら恥をかくからだ。だが、俺の家は子爵家だ。貴族として大したことないし、俺自身が周りに馬鹿にされようとどうでもいい。


「気持ちいいよね!」


 湖で仰向けにぷかーと浮かんでいた俺に耳に女性の声が聞こえた。


「誰だ!」


 俺は周囲を見渡したが、誰もいなかった。まさか、幽霊?小心者の俺はビビりだしていた。この湖は足がつかないほど深く、ここで死んだら俺は誰にも気づかれることはない。この状況は笑えない。


 グイッ


「ひぃいいいい!」


 俺が冷や汗をかいて周囲を見渡していたら、突如として足が引っ張られ、俺は湖に引きずり込まれた。この時、あまりにも焦った俺は小便を水中で漏らしてしまった。俺は足を必死にばたつかせた。すると、俺の足の拘束が解かれた。そして、下を見るとそこから金髪に輝く女の子の頭が急浮上してきて、俺にぶつかった。


「痛っ!」


 鼻にぶつかり、鼻血が出てきてしまった。そんな俺の目の前に現れたとても綺麗な少女の口から出た言葉は今でも鮮明に覚えている。


「おしっこを漏らしたでしょ!」


 頬を膨らませて怒る彼女。もし、違う出会い方をしていたら今とは違う未来が待っていたかもしれない。それはさておき、子供だった俺は彼女に対して腹を立てた。


「お前のせいだろ!」


 パシン!


 恥をかかされて怒った俺は彼女に向かってビンタを繰り出した。


「倍返し!」


 パシン!パシン!パシン!パシン!パシン!パシン!


 これが俺と彼女の出会いだった。


 ◇◇◇


 なんだかんだで喧嘩に負けた俺は彼女に謝った。そうしたら彼女は許してくれた。


「えい!」


 バシャンバシャンバシャン


 水をかけあった後に、俺は彼女と一緒に水の上に上がった。


「何で後ろを向いているの?」


 陸に上がった俺は彼女の裸体をチラチラ見た後、彼女に背を向けた。俺は紳士なのだよ。


「いや、見てもいいの?」


 女性は恥ずかしがると思って配慮したのに、余計だったのか?


「別にいいけど。」


 特に反対もされなかったので、俺は彼女の方を見た。余談だが、スケベだった俺は彼女が着替えている間、彼女の股を凝視した。この時はまだ精通を経験していないとはいえ、女の子の体を見るのは大好きだった。


「ねえ、早く着替えなよ。」


 気づいたら、彼女は着替え終わっていた。俺は彼女を凝視していて手を動かさなかったのでフリチンだった。


「悪い。」


 素早く衣服を着たが、俺は彼女に自分のチンポを見られてしまった。なんてことだ・・・なんてことだ・・・親にも見せたことがないのに!


 俺は貴族なので子育ては乳母や使用人がしてくれたので、チンポを見ず知らずの他人に見られるのは初めてであった。それが、どういうわけか当時の俺は思い付きから次のことを言ってしまった。


「おい、俺のちんこを見たんだから責任を取って俺と結婚しろ。」


 素直じゃかった俺は彼女に対して好きと伝えることができず、結婚をしろと主張してしまった。我ながらふざけていると思う。


「ハハハハハハハハハハ!うん、いいよ!」


 腹を抱えて笑い出した彼女はなぜか告白に了承した。全く持って意味不明だが、これが俺と彼女が婚約することになるきっかけであった。


 俺は多分、彼女に一目惚れしていた。そして、これが俺の初恋であった。大人のような打算や欲のない、小さかった俺の淡い恋はこうして始まった。


 後日、俺の家に親に連れられて彼女がやってきた。俺は彼女が男爵令嬢であり、父親同士が友人であったことを知る。彼女は両親と一緒にこの領土に避暑に来ていたようだ。


 俺の家に招かれた彼女の父親に向かって、向こう見ずだった俺は早速、行動に出た。


「娘さんを俺にください。」


「ブフォー!」


 彼女の父親が飲んでいたワインを吹き出し、夕食が台無しになったのはさておき、特に反対されることもなく、とんとん拍子で話が進み、俺は彼女と婚約した。








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