少年の事情
ぼくたちはその少年の家に入った。緊急車の看護の人たちは、地下室からカプセルを運び出していた。少年の前で止まる。
「ご確認ください。この方はマルコム・ウイスラーさんですね」
少年はうなづいた。そして、カプセルから見える老人の顔を見て、再び泣き出した。
「本部の地下に移動させていただきます。春になるまで安置しておきますから、ご葬儀はそれからということで」
いやだなんて言わせない言い方だった。少年はそれに返事をしないで、ただ泣いていた。
これだから大人はいやだ。もっと違う言い方があるんじゃないか。
メラニーもそう思ったみたいで、ギッって音がするかのように看護人をにらみつけていた。
「この少年は私が後で本部に送って行きます。心配しないでください」
看護の人たちは心配するより、メラニーの言葉にほっとしたみたいだった。やっかいそうな少年の世話はメラニーがやってくれるんだ、よかったって言わんばかり。
緊急車は、おじいさんのカプセルを乗せて行ってしまった。
その少年も気が抜けたのだろうか。急にガタガタと震えはじめた。
「ティジェイ、お風呂にお湯が張れる? ちょっとぬるめのお風呂」
ぼくはよしきたとばかりに、風呂場に入る。ケイちゃんは一人で飽きないように台所の小さなテレビモニターでアニメを見せていた。
「ぬるめのお風呂、できたっ」
メラニーは少年をお風呂場に連れてきた。
「悪いけど、ティジェイ、後はお願い。彼がお湯につかって少ししたら、ちょっと熱いお湯を入れてあげて。体が冷え切ってるから、少しづつよ。温めてあげたいの」
「わかった」
責任重大だ。メラニーがぼくにこの少年のことをたくした。メラニーは女の子だから、少年が入るお風呂場には入れないのだ。
風呂場に二人きりになった。
「ね、ぼくはティジェイ、君は?」
その少年はぼくがいたことに今、気づいたらしい。
ジロリとこっちをみて、アレックスと答えた。
「何歳なの」
「十二歳」
アレックスはおとなしくお風呂にはいった。肩までつかると、きもちよさそうに息をつく。
「お湯加減、どう? ぬるくなったら熱いの、いれるね」
そういうと、初めてアレックスははにかむような気ごちない笑顔を向けた。ちょっとこわい感じだけどいい奴かもしれないって思った。




