表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

事件発生?

 ぼくたちは本部に向かっていた。そこの保護センターにいけば、子供だけのフロアがあり、そこで春までの三か月を過ごすことになる。勉強したり、遊んだりでそれはそれで楽しいんだけど。

 ケイはやっぱり妹のリアナと同じ六歳だった。リアナと同じリアクションをするから、リアナの好きな歌をうたった。指を使ったあそび歌、ジェスチャーでも笑わせる。

「あ、あぶない」

 スノーボードカーが急に止った。

 シートベルトが前に傾きかけた体をぎゅっとしめつけて受け止めていた。


 すぐ目の前を少年が横ぎったのだ。しかも薄着のスリープスーツのままだ。マイナス十度の世界にそんな薄着、異常だ。凍え死んでしまう。

「ちょっとケイちゃんを見てて、ここにいてね」

 すぐさま、メラニーが予備のウィンタースーツを持って、雪の中へ飛び出した。

 あの少年を追っていた。相手は裸足みたいだ。すべらないブーツをはいているメラニーはすぐに追いついた。その少年の頭からウィンタースーツをかぶせた。


「なにしてんのっ。こんなに寒いのに、そんなかっこうで」

 メラニーの声がはっきり聞こえてくる。ヘルメットのボタンが入っているらしい。外の様子がわかるようにしてくれているとわかった。

 少年は泣いていた。何かをわめいている。しかし、何を言っているのかわからない。

 ぼくは少年が飛び出してきた家をみた。ドアが開けっ放しだった。そこへ赤い光を放ち、冬眠レンジャーの緊急車が横付けで止まった。

「メラニー、緊急車がきた。なにかあったみたいだよ」

 メラニーはぼくの報告で、家の方を振り向いた。


「ねえ、なにかあったの? 教えて、もう大丈夫。助けがきたの」

 しかし、少年は泣いていた。でも逃げる様子はない。もうメラニーの持ってきたウィンタースーツを素直に頭からかぶっていた。

「おじいさんが、おじいさんが、しんじゃった」

 それをきいて、ぼくはギョッとした。メラニーも凍り付いていた。


「おじいさん? あなたのおじいさん、具合悪かったの?」

 少年はかぶりを振った。

「気づいたら亡くなっていた。さようならも、ありがとうもちゃんと言ってなかったのに」


 緊急車から数人の看護の人が家の中に入っていった。メラニーはその少年をかかえるようにして、家の中へ向かう。

「ティジェイもケイちゃんを連れて、家の中へ入りましょう。ちょっと事情を聞きたいから」

「わかった。了解」

 もうすでにぼくはレンジャーアシスタントのつもりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ