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ぼく、目覚めちゃった

 ぶるっと震えた。

 寒い、寒いよ。

 ぱっちりと目を開ける。暗かった。お腹もすいた。ここ、どこだっけ。お母さん? ・・・・・・どこ?


 ぼくはその暗闇と寒さに、ちょっとだけパニックになりかけた。横たわった体を大きく動かすと、目の前カプセルが開いた。

 そこは見慣れた地下室だった。ハアと大きな息をつく。

 そうだ、ぼくは冬眠してたんだ。それを思い出していた。隣を見ると冬眠カプセルが三つ並んでいた。大きい二つはお父さんとお母さん。その横の子供用カプセルには妹のリアナが眠っている。


 ぼくはティジェイ、八歳。体は小さいけど、ハカセって言われている。ちょっとは知恵者のつもり。

 普通、子供の冬眠は6歳からできる。それより小さい子供は健康であれば、冬眠する必要なし。ぼくはこれで三度目、でも、途中で目覚めたのは初めてだった。

 そう、ぼくは思い出していた。もしも、冬眠中に起きてしまったらどうするか。


 パニックにならないこと。

 これはちょっとあぶなかったけど、かろうじてクリア。

 そして、みんなを起こさないように、そっと上へ行くんだっけ。


 ぼくはどろぼうみたいに、抜き足差し足で歩き、階段を上がって行った。台所へ入る。窓の外は一面真っ白だった。明るい。月が出ていなかったら夜だってわからなかっただろう。そのくらい、外は明るかった。

 台所の電気をつける。そして自分のスリープスーツの胸に付いている緊急ボタンを押した。これで冬眠レンジャーが来てくれるはずだった。

 ぼくはカウンターの上のドリンクメーカーのスイッチを押す。すぐにコポコポという音とともに、こげ茶色のなめらかな液体がカップにそそがれる。ホットチョコレートだった。

 それをかかえて、お父さんのフカフカソファへ座った。いつもなら、飲み物を持って、ここに座るとしかられるお父さん専用のソファ。でも一人でめざめちゃったらここへ座っていいからねと許可をもらっていた。


 思ったよりもずっとすわりごこちがいい。そしてホットチョコレートを一口飲むと、とろけるような甘さがひろがって心がおちついた。

 もしも、レンジャーたちの来るのがおくれても、これさえ飲んでいれば、四、五日は大丈夫なほど栄養があるってお母さんが言っていた。

 外をながめる。

 このようすだとまだまだ春は遠いみたいだ。ぼくはこれからどうなるんだっけ。

 そう、むかえが来るまで待つ。ぜったいに一人で外へ出てはいけないんだ。そして、誰かドアを叩く人がいたとしてもぜったいに開けてはいけない。この二つの「ぜったいに」を守らなきゃならない。冬眠レンジャーだったら、マスターキーを持っているからぼくがわざわざ開けなくっても入ってこられるって、お父さんがくどいほど言っていた。

 もしも六歳のリアナが起きてしまったら、自動的にお母さんも起きるようになっていた。ぼくもお父さんとそうする予定だった。けど、寝る前にそれをことわっていた。ぼく、ちゃんと一人でできるって言ったんだ。

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