表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
退職届を出したら異世界の村役場に配属されました 〜書類とハンコでヤンデレ村長と勇者を雇用しています〜  作者: 月神世一


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/14

第一章 過労死した元公務員が、異世界の村役場で居場所を見つけ、ヒロインに『あなたの書類…キレイ…♡』と言われるまで

退職届を出した三時間後に過労死した俺は、女神に借金を背負わされて異世界に放り出された

「お前のせいで俺は死ぬんだ!」

 灰皿が、白石玲の頬をかすめて飛んでいった。

 ガシャン、と、背後の窓ガラスが、見事に砕けた。

 市役所福祉課の窓口。生活保護受給者の中年男が、唾を飛ばしながら叫んでいる。手にはもう、次の凶器──プラスチック製の表彰盾──が握られていた。

 玲は、深々と頭を下げた。

「申し訳ございません」

 心の中では、こう思っていた。

(今日、退職届を出して、本当によかった)

 時刻は、午後二時。

 白石玲、二十三歳、市役所福祉課職員、勤続二年六ヶ月。

 今日の昼、彼は、人生で初めて、上司の机に退職届を叩きつけた。

 その三時間後の、今である。

「灰皿、いいから、もう投げないでください」

「うるせえ! お前ら役所の人間が、俺を殺してるんだ!」

「申請書類の不備をご指摘しただけで──」

「殺す気か!」

「いえ、生かそうとしています」

 玲の冷静な返答に、男は一瞬怯んだ。

 その隙に、隣のブースの先輩職員が、警備員を呼びに行った。

 数分後、男は、警備員に引きずられて出ていった。

 窓口に、静寂が戻った。

 玲は、ゆっくりと顔を上げた。

 頬を、指で軽く撫でる。

 血が、ついていた。灰皿の角が、わずかに皮膚を切ったらしい。

 彼は、無表情のまま、ポケットからハンカチを取り出して、血を拭った。

 市役所福祉課、勤続二年六ヶ月。

 灰皿を投げられたのは、これで七回目。

 胸ぐらを掴まれたのは、二十三回目。

「殺す」と言われたのは、もう、数え切れない。

 今日、玲は、退職届を出した。

 誰も、引き止めなかった。

 上司は、たった一言、こう言った。

「君が我慢すれば、収まる話だっただろう?」

 その瞬間、玲は思った。

 ああ、辞めて、よかった。

 深夜二時。

 退職届を出した玲は、なぜか、まだ市役所にいた。

「白石、お前、まだ残ってんの?」

 通りかかった夜勤の警備員が、不思議そうに声をかけてきた。

「引き継ぎ、です」

「お前、退職届出したんだろ? もう帰っていいんだぞ」

「未処理の生活保護案件が、四百件あります」

「……は?」

「私が処理しないと、受給者の方々が、来月、お金を受け取れません」

「いや、それ、お前の仕事じゃ──」

「私が、退職するからです」

 玲は、机に向き直った。

 判子を、押す。

 書類を、めくる。

 また、判子を、押す。

 退職届は出した。

 でも、引き継ぎは別だ。受給者の生活が、かかっている。

 誰も褒めてくれない。誰も気付かない。

 それでも、片付ける。

 それが、白石玲という、公務員だった。

 ふと、視界が霞んだ。

 胸が、痛い。

 息が、できない。

 机に突っ伏した瞬間、玲は理解した。

 ああ、これは──。

(過労死、というやつだ)

 最後の意識の中で、彼は思った。

(退職届、受理されたかな……)

 そして、視界が、暗転した。

「あー、しまった、間違えた」

 間延びした、やる気のない女の声がした。

 玲は、ゆっくりと目を開けた。

 目の前に、こたつがあった。

 オレンジ色の天板。みかんが乗った籠。湯気の立つ急須。

 そして、こたつ布団に下半身を突っ込んで、缶ビール片手に頭を抱えている、ジャージ姿の女。

 ピンクの芋ジャージ。健康サンダル。咥えタバコ。すっぴん。

「あー、やっちゃったぁ。これ、また始末書ものだぁ」

 女は、缶ビールをぐびっと呷ると、ため息をついた。

 玲は、上半身を起こした。

 ここは、和室だった。六畳ほどの、ごく普通の和室。だが──。

 窓の外が、宇宙だった。

 星が、流れている。

 地球が、見えた。

「あの」

「ん? あ、起きた? お疲れさまぁ」

 女は、玲の方を向いて、にぱっと笑った。

「白石玲くん、二十三歳。元・市役所福祉課職員。本日付けで退職、と」

「……どちら様」

「私? 女神ルチアナ」

 女神。

 玲は、その単語を、頭の中で、ゆっくりと噛み砕いた。

 ジャージ。健康サンダル。缶ビール。タバコ。

 どこに、女神要素があるのか。

「で、玲くんね」

 ルチアナと名乗った女は、二本目の缶ビールを開けた。

「君ね、過労死しちゃったわけ」

「……はい」

「でも、寿命じゃないのよ。完全にうちのミス」

「ミス」

「うちの新人が、魂リストで君の名前と別人の名前を間違えてさ。本当は来週、別の白石さんって人が来るはずだったの。九十二歳のおじいちゃん」

 玲は、無言だった。

「いやー、ごめんごめん」

 ルチアナは、まったく悪びれない口調で、手を合わせた。

「で、戻せないんですか」

「無理。魂って一回外に出ちゃうと、戻せないのよ。物理法則」

「あなたが、決めたんですか」

「上の方針」

「主神ですか」

「あ、知ってる? オリンってハゲ。あいつね、本っ当に融通利かないのよ。頭髪の融通も、業務の融通も」

 ルチアナは、げらげらと笑った。

 玲は、無表情のまま、状況を整理した。

 過労死した。

 女神のミスで。

 戻れない。

 ……つまり、彼の二十三年間の人生は、神様の事務ミスで、終わった。

 市役所時代に培った精神は、こういう時にこそ、冷静に処理する訓練を積んでいる。

「では、どうすればよろしいでしょうか」

「お、話が早いね?」

「他に選択肢がないなら、受け入れます」

「素晴らしい社畜根性!」

「褒め言葉ですか、それは」

「もちろん。じゃあ、異世界転生してほしいの。アナスタシア世界ってとこ。ファンタジー系」

「分かりました」

「装備とか、能力とか、いる?」

「いただけるなら」

「お、合理的。じゃあ、これあげる」

 ルチアナは、ぱちん、と指を鳴らした。

 玲の頭の中に、ぽん、と何かが灯った。

 それは、見覚えのある光景だった。

 市役所の窓口。総合受付。番号札の機械。書類のフォーマット。

「これは──」

「ユニークスキル【行政ガバメント】」

 ルチアナは、にっこりと笑った。

「君の頭の中に、市役所の窓口が常設される。書類錬成、手続き加速、査定眼、公印、窓口番号札。戦闘能力ゼロだけど、君が押した『受理』の判子は、神でも破れない絶対契約になるよ」

「神でも、ですか」

「私でも、ね」

 ルチアナは、なぜか、少し遠い目をした。

「異世界での、戦闘は」

「ない、ない。君、戦えないでしょ? 書類で戦って」

「書類で、戦う」

「うん」

 玲は、自分の手のひらを見た。

 市役所時代、無数の書類に判子を押し続けた手。

 灰皿を投げられても、胸ぐらを掴まれても、ただ書類を処理し続けた手。

 それが──。

 神でも破れない、絶対契約を生む手に、なるという。

「いいですね」

 玲は、ぽつりと呟いた。

「悪くないです」

「お、気に入った?」

「これは、私の、戦い方ですから」

 ルチアナは、目を丸くした。

 それから、にやりと、笑った。

「君、いいねぇ。素直で、骨がある」

「では、転生の準備を」

「あ、その前にね」

 ルチアナは、すっと、一枚の紙を出した。

「初期装備の費用、ね。服とか、身分証とか、賃貸契約料、武器、薬草、保存食、各種書類──ぜーんぶ含めて、金貨百枚。日本円で、百万円ね」

「……」

「これ、私のクレジットカードで立て替えとくから。あとで返してくれればいいよ♡」

 玲は、その紙を、受け取った。

 金銭消費貸借契約書。

 元本:金貨百枚(百万円相当)。

 月々:金貨六枚八銀貨(六万八千円相当)。

 年率十五パーセント、三十六回払い。

「……あの」

「ん?」

「年率十五パーセントというのは」

「相場でしょ?」

「貸金業法違反です」

「ここ、地球じゃないけど?」

「そして、この『遅延損害金』の欄、年率二十パーセントになっていますが」

「あー、それね。滞納したら、サングラスのレスラー体型の黒服が天界から来て、君をスーツケースに詰めてマグローザ漁船にドナドナするから、頑張って返してね♡」

「闇金じゃないですか」

「神金よ。神様だから神金」

「同じです」

 玲は、こめかみを押さえた。

 市役所時代、玲はこういう契約書を持ち込んで「これ無効にできませんか」と泣きついてくる人を、毎日のように見てきた。

 まさか、自分がその立場になるとは。

 だが──。

 玲は、目を細めた。

 頭の中で、【行政】スキルが、すっと、起動した。

 市役所の窓口。

 その光景が、彼の脳裏に、鮮やかに、広がる。

 窓口に立って、市民の不当な契約を、突き返す瞬間。

 玲が、市役所時代、唯一、誇りに思っていた仕事。

「ルチアナ様」

「ん?」

「契約書、こちらで、書き直してもよろしいですか」

「……は?」

「不当条項が、いくつかあります。修正させてください」

 ルチアナは、缶ビールを取り落としかけた。

「ちょ、ちょっと待って、玲くん。君、転生直後で、まだスキルの使い方も覚えてないでしょ?」

「いえ」

 玲は、深く、息を吸った。

「市役所で、こういう契約書、何百件と見てきました」

「いや、でもね」

「【行政】、起動」

 その瞬間。

 玲の頭の中に、市役所の窓口の光景が、ぱっと、広がった。

 番号札の機械。書類のフォーマット。判子。インク台。

 すべての行政書類が、玲の指先で、自由に呼び出せる感覚。

 彼の手元に、一枚の白い羊皮紙が、ふわり、と現れた。

 金色の縁取り。上部には──。

『神務費精算書』

 と、記されていた。

「ちょ、ちょっと待って!? 何で君、初日でそんなレアな書類錬成できんの!?」

 ルチアナが、こたつから身を乗り出した。

 玲は、淡々と、その書類に記入を始めた。

件名:神務上のミスに対する補填申請

申請者:白石玲(転生先:アナスタシア世界)

内容:女神ルチアナの業務遂行ミスにより、申請者は本来の寿命より早く死亡し、異世界転生という業務遂行が必要となった。

要求事項:

初期装備費用(金貨百枚)は、業務遂行に必要な経費として、神界の予算から支出されたい

「貸付」とされた契約は、不当条項を含むため、無効とする

「遅延損害金」「マグローザ漁船」条項は、人道に反するため、削除する

受理:白石玲

 書き終えると、玲は、頭の中の【行政】スキルから、一つの「印」を呼び出した。

 ずん、と、彼の手のひらに、ずしりとした感覚が宿る。

 【公印】。

 神でも破れない、絶対契約の判子。

 玲は、その印を、書類の下部に、すっと、押した。

 ぱぁっ、と、部屋全体が、光った。

 ルチアナの顔が、ぴしり、と固まった。

「あ、あ、あ、待って、待って、待って!? それ、神聖契約書になってるじゃない!? 神聖契約書に【公印】押したら、私でも破れないやつじゃない!?」

「はい」

「なんで君、初日でこんな使いこなしてんのおおお!?」

「市役所で、毎日、書類を錬成して、判子を押していたので」

「いや、それと【公印】は別物でしょ!? 神器なのよ、それ!?」

「神器でしたか」

「神器なのに、初日に使いこなされた女神、私が初めてよぉぉぉ!!」

 ルチアナは、こたつに、ばたん、と突っ伏した。

 玲は、無表情のまま、神務費精算書を、ルチアナに差し出した。

「では、こちら、ご受理ください」

「し、しないわよ! 受理しないわよ!」

「あなたが受理しなくても、私が【公印】で受理しています」

「ええええっ!?」

「ご確認ください」

 ルチアナは、震える手で、書類を受け取った。

 目を通す。

 顔色が、青ざめていく。

「ま、まじだぁ……元本、ゼロになってるぅ……」

「業務経費なので」

「マグローザ漁船条項、削除されてるぅ……」

「人道に反するので」

「初日の研修生に、神界の予算を引き出されたぁぁぁ!!」

 ルチアナは、絶叫しながら、こたつの下に潜り込んだ。

 その時──。

「ルチアナ様ぁ、何の騒ぎですかぁ?」

 部屋の襖が、すぱーん、と開いた。

 間延びした、しかし明るい声。

 ぱたぱたと、足音が近づき、襖の向こうから、一人の少女が、現れた。

 ピンクのジャージ。胸には初心者マークの刺繍。健康サンダル。

 手には、みたらし団子の串。口の周りに、タレが付いている。

 年の頃は、十七、八。栗色の髪、丸い目、ふわふわした雰囲気。

 絵に描いたような、ポンコツだった。

「リリスぅ……助けてぇ……」

 こたつの下から、ルチアナの哀れな声が、聞こえてきた。

「えっ、ルチアナ様、何でこたつの下に? お酒、飲みすぎですかぁ?」

「そうじゃないのよ! この子、この子! 白石玲くん!」

 リリスは、玲の方を向いた。

 目が、合った。

 リリスは、首を傾げた。

「初めまして、ですぅ。私、見習い女神のリリスと申しますぅ」

「白石玲と申します。元・市役所福祉課職員です」

「市役所、ですかぁ?」

「過労死しました」

「あ、よくあるパターンですぅ」

「よくあるんですか」

「ルチアナ様、雑なのでぇ」

 こたつの下から、「ちょっと、リリスぅ!?」という抗議の声が、聞こえた。

 玲は、リリスに、改めて頭を下げた。

「リリスさん」

「は、はい」

「お願いがあります」

「な、なんですかぁ?」

「ちょうど、お会いできて、助かりました。これに、判子を押していただけませんか」

 玲は、もう一枚の書類を、リリスに差し出した。

件名:研修同行同意書

申請者:白石玲

内容:見習い女神リリスは、申請者の異世界転生研修に同行する。同行期間中、リリスの業務経費は、ルチアナの神務費から支出される。

「えっ、これ、なんですかぁ?」

「リリスさんが、私の研修に同行する書類です」

「えええっ!?」

「同行していただけますか」

「で、でも、私、見習いで、何もできなくて……お給料も少なくて……」

「リリスさん」

「は、はい」

「あなたが、いてくれると、心強いです」

 玲は、淡々と、しかし、真剣に言った。

 リリスは、目を丸くした。

 頬が、ほんのり、赤くなった。

「……は、はぅ。よ、よろしくお願いしますぅ」

 リリスは、震える手で、判子を押した。

 ぱぁっ、と、書類が、光った。

「ちょっと待ってぇぇぇ!! リリスを連れて行くのは、私の許可がいるのよぉぉぉ!?」

 こたつの下から、ルチアナの絶叫が聞こえた。

「ルチアナ様」

 玲は、淡々と、こたつに向かって、声をかけた。

「では、転生のお手続きを、お願いします」

「は、はぁ!? 帰らせるわよ!!」

「神務費精算書、まだ受理されますか」

「ぐぬぬぬ……」

「では、お手続きを」

「う、うわぁぁぁん!! 覚えてなさいよぉ!!」

 ルチアナは、こたつから飛び出し、ぱちん、と、指を鳴らした。

 玲とリリスの体が、ふわっと光に包まれる。

「ルチアナ様ぁ、私、心の準備が……!」

「玲くんもね! ちなみに、神務費精算書で元本ゼロにしたけど、生活費はあげないからね! 異世界で頑張って稼ぎなさい!」

「金額の交渉は、現地で進めます」

「この子、本当にめんどくさい!!」

 光が、強くなっていく。

 最後に、玲の耳に、ルチアナの声が、響いた。

「いってらっしゃーい! アナスタシア世界、楽しんでねぇぇぇ!」

 視界が、真っ白に、染まった。

 次に玲が目を開けた時、目の前には、見知らぬ街並みが広がっていた。

 石畳の道。木造とレンガ造りが混ざった建物。

 道行く人々の中には、獣の耳と尻尾を持つ者、長い耳のエルフ風の者、肌の色が紫の魔族風の者が、当たり前のように混じっていた。

 空には、巨大な鳥型の生物が、悠然と飛んでいる。

 異世界。

 本当に、来てしまった。

「玲さぁん……」

 隣で、リリスが、震える声を上げた。

「私、ちゃんと、研修できるかなぁ……」

「大丈夫です」

 玲は、彼女に、優しく微笑んだ。

「一緒に、頑張りましょう」

「は、はぅ……」

 リリスは、こくり、と頷いた。

 玲は、自分の手元を見た。

 神務費精算書のおかげで、元本はゼロになった。

 しかし、ルチアナの最後の言葉が、頭に残っていた。

『生活費はあげないからね』

 つまり──。

 今、手持ちは、ゼロ。

 玲は、ジャケットのポケットを確認した。

 空っぽ。

 ズボンのポケットも、確認した。

 空っぽ。

 念のため、靴の中も、確認した。

 空っぽ。

 ……完全に、無一文だ。

「玲さぁん」

「はい」

「お腹空きましたぁ」

「……」

 玲は、深く、息を吸った。

 そして、ネクタイを、ぎゅっと、締め直した。

 市役所時代の癖だった。

 覚悟を決める時、玲は、必ず、ネクタイを締め直す。

 異世界。

 戦闘能力、ゼロ。

 所持金、ゼロ。

 同行者、ポンコツ見習い女神。

 保有スキル、【行政】──書類と判子で、神すらねじ伏せるスキル。

 悪くない。

 悪くない、スタートだった。

 市役所で、灰皿を投げられていた頃よりは、ずっと。

「リリスさん、行きましょう」

「は、はい」

「まず、仕事を、探します」

 玲は、見知らぬ街へと、歩き出した。

 その時──。

 彼の頭の中に、ふと、一枚の書類が浮かんだ。

 【行政】スキルが、勝手に、起動していた。

『──新規任務、検出。

 案件名:『ポポロ村事務官募集』

 所在地:ルナミス・アバロン・レオンハート三国緩衝地帯

 報酬:金貨五枚/月、住居完備、食事完備

 業務内容:村長補佐、村役場運営、各種書類処理

 備考:当村の村長は、満月の日だけ、少々激しいです』

 玲は、その「備考」の一文を、しばらく、見つめた。

「……少々、とは?」

 風が、吹いた。

 彼の前髪が、わずかに揺れた。

 異世界生活、初日。

 彼は、まだ知らない。

 その「少々」が──。

 後に、彼の人生を、完全に書き換える──。

 地獄と天国を意味することを。

 そして、その村で出会う、人参柄のハンカチを持つ月兎族の少女が、自分の運命を、決定的に変えることを。

 今は、ただ、一人の元公務員が、ネクタイを締め直して、見知らぬ街を歩き出した、それだけだった。

「玲さぁん、行きましょうぅ!」

「はい」

 元・市役所福祉課職員、白石玲、二十三歳。

 第二の人生、開始──。


数ある作品の中から、本作を見つけていただき本当にありがとうございます!

もし第1話を読んで「ちょっと面白そうかも」「暇つぶしに続きを読んでみようかな」と思っていただけましたら、

ぜひページ下部から【ブックマーク】へのご登録をお願いいたします!

(しおり代わりになり、次回からの「続きを読む」がとてもスムーズになります)

また、下部の【☆☆☆☆☆】から評価で応援をしていただけますと、今後の執筆の大きな励みになります!

これからどうぞ、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ