破壊神 零(ゼロ)
プロローグです。次の作品は少し背景が変わります。
「ん"」
1人の少女は毎日拷問にかけられていた。
腹を何度も殴られながら自白を責められていた。
「お前が悪魔なのかな?」
細身の拷問監はキレ気味にもう一発殴る。
「君が自白してくれれば、快く君を殺せて僕は布教騎士団の副騎士団長になれるんですよ。」
(そんなの知るものか)
毎日殴られているものだからだいぶ慣れてきた。殴られる瞬間腹筋を締めれば耐えられる一発だった。
貧しい村に拾われた私は自給自足の毎日で生活
には苦労していたものの引き取ってくれた見知らぬ、
おばちゃんは優しく私のそばにいてくれていた。
私は両親に捨てられたらしいのだが、今の生活は十分に幸せだった。
そんなある日いつもの日常が一変した。
村人と一丸となって育て上げた稲を収穫していると、布教騎士団が突如現れた。
こんな貧しい村に何故に布教騎士団様が来たのかと誰もが思っていた。一つ言えることは碌でもないことに巻き込まれることだけはわかっていた。布教騎士団は悪い噂しか聞かない。王はなぜ布教騎士団のようなものを許してしまうのか。
村に入ってくると布教騎士団の中で最も偉そうな人が軍団の中から前に出てきた。
「この村には悪魔に取り憑かれている者がいる。よって全員捉えさせてもらう。」
そんな出鱈目を言われ、反抗できずに全員が囚われ、手枷をつけられた。
教会にある一部の牢屋に皆入れられた。
悪魔なんているわけないのだから事情聴取しても村人全員何も吐かなかった。
牢屋での生活は過酷だった。
ご飯なんてろくにくれない。
1日一杯の水。2日に一度の食事。
食事といっても硬いパン一つのみ。
そして、遂に何も吐かない村人たちは拷問にかけられた。
毎日のように悲鳴が聞こえる。
1日10人ほどが拷問にかけられていた。脱獄を試みた者もいたが、誰1人脱獄できずその場で殺されている。牢屋に戻ってきた村人は傷だらけ。 こんな不衛生なところで傷口が開いているんだ病原菌が入ったのだろう。村人はどんどん亡くなっていった。
日に日に弱っていくおばあちゃんを私は見ていられなかった。
まだ15歳ということもあり子供扱いされていた私は拷問を受けなかった。
そしてある日おばちゃんが亡くなった。
「私が亡くなっても桜花は強く生きるんだよ…どんなに辛くてもね、きっとその先には幸せが待っているから。」
(綺麗事だってことはわかっていた。)
おばあちゃんが最後に残してくれた言葉
私は何があってもこの牢屋から脱出して強く生きてやると決めていた。
しかし、ある日私も拷問をかけられることになった。
村人は全員無惨な姿で亡くなっていき、子供である私含めて7人が事情聴取をされることになった。
脅されたのかは知らないが6人の子供は私を悪魔だと言い張ったのだ。
「桜花、牢屋から出ろ。拷問室へ向かう。喜べ君のために今日は特別な拷問監を呼んでおいておいてやったぞ」
拷問室に入るといつもの細身の拷問監ではなく体格のいいメリケンサックを指にはめた男性がいた。
「サクナはいつまで経っても悪魔を暴けないようだからな。俺が代わりに暴いてやる。」
今すぐにこの場から逃げたかった。こんな体格の奴に殴られたら絶対に痛いに決まっているのに恐怖で足は震え動くことができなかった。
そのまま手枷についている鎖をフックにかけられ、腹を殴りやすいように腕を上げられた。
「お嬢ちゃん今ならチャンスをくれてやる。今自白すれば、拷問はやめてやる。」
(自分が悪魔だと言えばこの恐怖から逃れることができる。もう私が悪魔だと…)
桜花には引っ掛かりがあった。村人はどんな仕打ちを受けても自分が悪魔だとか、あいつが悪魔だとか一切、恐怖と痛みに負けなかった。今、恐怖と痛みから逃げたら自分はあの子供達のように汚い人間になってしまう。本当の村人の一員としていられないと思ったからだ。
「私は悪魔ではない。」
拷問監に向かって睨みを効かせ、言い切った。
「どこまで、自分の意思を貫き通せるかなっ!」
思いっきり下から上に向かって一発決め込んだ。
ん"ッ"
一発食らう前に腹筋を絞めたが、通用することはなく、もろに入った。
「ガハッ ガハッ」
咳き込んだ後、ここ数日何も口にしていない桜花は胃液を吐いた。
拷問を受けていると肉体的、精神的にやられ自分の意思なんてどうでも良くなってしまう。早くこの痛みから逃れたい。
「桜花がいて本当に良かった…」
不意におばあちゃんが泣いた日のことを思い出した。そんな姿を私は初めてみた。
その言葉に心をギュッと掴まれた感覚に襲われた。優しさと暖かさとぎこちなさ
そんな気持ちでいっぱいになり自然と私も涙が溢れた。強がって涙が溢れてしまわないようにグッと堪えた。
おばあちゃんが泣く前のこと、私は1人でいる孤独さを誰かに慰めてもらいたかった。騎士団になる夢を持ち剣術の鍛錬を1人でやっていた。
村の子供になれるわけがないと馬鹿にされてきた。なぜ皆から馬鹿にされてもここまでムキになってまでこんなに頑張っているのか。
自分でもわからなくなってしまった。
目標なんてものはとうの昔にどうでもよくなってしまった。辛い思いまでして1人でこんなに頑張ることかと疑問に思うようになってしまった。
そんな思いをおばあちゃんに伝えた。
「私なんて罪のない人の命を奪ってきた。そんな人間が幸せを手にし、のうのうと生きていていいのかと思い苦しめられているよ。これから先、一生背負うことになるだろうね。」
という言葉が返ってきた。
50年前戦場に派遣され、人を殺す命令が下されていたそうだ。人を殺さなければいけない。それに従う自身に嫌味がさして自殺を何度も図ったそうだ。
人間というものは自分の痛みばかり棚に上げ、痛みのわからない他人のことなんてそこまで考えない。辛い時こそ他人より自分優先になってしまうのではないか。
私は人を殺したことがないからその心の痛みを知らない。
しかし普通に考えてみれば罪のない人を手にかけるのは辛いに決まっている。
そんなことを思っていると、おばあちゃんは「それでも、桜花と出会って初めて生きてて良かったと思ったんだよ。」
と涙をこぼしながら語った。
自分の情けなさを思い知らされた。
(おばあちゃんも辛い思いを抱えていたんだ。一方的に自分の辛いことを語って、こんなに支えてもらっているのに。自分は何も助けてあげるどころか何も聞いてあげられなかったんだ。)
人間というものは1人では生きていけないんだ。
誰かに支えられていないといつか心は折れてしまう。人はある程度の辛さや痛みに耐えれるほどの器は誰にでもある。
しかし神様は持っている器よりも遥かに辛さや痛みを与える。だから、辛さや痛みに耐えれるほどの喜び、安らぎなどの快楽で満たされる必要がある。
でも自分の快楽の得方は異常だ。
自分より弱い者の能力が劣っている者、時には失敗をして怒られている人を見ると優越感で満たされてしまう。
決してバカにしているわけではない。本能で感じてしまうのだ。自分より地位が下の人がいなければ自分は優位に立てない。こういうのにも支えられていると思うと自分の心の汚さを思い知らされてしまう。
これは人間の汚い部分なのか?何が正しいあり方なのか私にはわからない。
そんな自分が嫌い。こんな醜い世界なんて壊れてしまえば良い。私が負の感情なんて感じさせない陽の世界にしてやる。
陰なんてあるから人は傷つくんだ。
きっかけなんて何だっていい。
「お嬢ちゃん、僕と一緒に世界を変えよう。
こんな不公平で理不尽で腐った世界を」
突然、仮面を被った男性が入ってきた。
厳重のドアであるのに粉々に粉砕されていた。一目でわかるその強さを前にしても恐怖心は一切湧かなかった。
「そこのクズども切れ伏せろ。」
一瞬の隙もなく、次々と拷問監の部下たちを倒していく。彼の身体は、戦闘のリズムに合わせて動き、まるで風のように素早く敵を斬り伏せていった。
「くそ。使えない部下たちだ。」
気づけば拷問監であるサクナだけになっていた。
彼は冷酷な眼差しで少女を見下ろし、嘲笑うように笑った。
「面白い。」
謎の仮面男は目にも止まらぬ速さでサクナのまわいに張り込み一撃で倒した。
彼は少女の元へ駆け寄り、声をかけた。
「今日から我らの仲間だ。何があっても君を待ってやる。」
桜花の手枷を壊し、優しく手を翳した。
彼女は困惑した表情を浮かべながらも、彼の優しさに温かみを感じ、涙を流していた。
桜花は彼の手を取り、立ち上がった。
彼女は抱き抱えられ共に闇夜を抜け出した。
今日という日が悪魔を生んでしまった。
それは後に破壊神 零と呼ばれる者になるなど誰も知らない。
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