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第7話 激闘ポメ太郎!雅のセンスは超ビミョー! ①

魔法少女の敵、実影体 シンを逃してしまった明美。

イケメンのシンによるセクシーキッスによって、明美の左手薬指には謎の刻印が刻まれてしまう。

一方で明美の妹、雅は可愛らしいポメラニアンの聖霊 ポメ太郎と一緒にラブラブ登校をしていた。

雅は学校に着くと、校舎の影に隠れてバッグを開けた。ポメ太郎はぴょこんと、その愛らしい顔を出す。特に苦しそうにしていた様子もなく、雅は少し安心した。

「これから部活なんだけど、ポメ太郎はどうする?ずっとカバンの中じゃ、息苦しくない?」

「いや、それは大丈夫なんだが、念のため学校の周りを調べておきたい。雅は俺のことは気にせず、いつもどおり部活に励め」

 そう言うと、ポメ太郎はブルブルッと体を震わせた。するとポメ太郎の体毛の色はラムネ色から綺麗なクリーム色に変わっていき、見た目は完全にただのポメラニアンになった。

 ポメ太郎に起こされた時も驚いたが、ポメ太郎が目の前でマジックのように体毛を変化させたのを見て、雅は改めてポメ太郎が魔法を使う、不思議な生き物だと実感する。

「すごい、体の色を変えられるんだ」

「まぁ、あの姿だと、あまりにも目立つからな」

「じゃあ、部活が終わったら、あの草むらの辺りで待ち合わせにしよう。こっそり迎えにくるから、そしたらバッグにまた入って」

「分かった。すまないな、迷惑をかける」

 そう言ってポメ太郎はぴょんとバッグから出てきた。首にはちっちゃな巾着袋を掛けていて、中には自分のスマホが入っているのだろう。

 あぁ、なんて可愛いんだ。雅は表情は崩さなかったが、こうして動くポメ太郎を見ると、心の中にふんわりとした優しい気持ちが溢れるのを感じる。最近は、ベッドの上に置くのが恥ずかしくなって、押し入れにしまっていたポメ太郎だったが、今も、彼を見ると愛らしさに夢中になってしまう。

「どうしたんだ?心配なのか?」完全に脳内トリップしていた雅は、ポメ太郎に話しかけられてハッとする。

「いや、ずっと押し入れに入れてて、申し訳なかったなって、急に思ってきちゃって。ごめんね」

「なんだ、そんなことか。大丈夫だ。俺にとっても都合が良かったよ。仕舞われた振りをして、外に出たり出来たからな」ポメ太郎の表情はよく分からないが、何故か優しく微笑んでくれている気がした。


 ポメ太郎は雅と分かれると、まず明美に電話をかけた。

「ポメ太郎!良かった、帰ってきてくれたんだ」

 明美はすぐにポメ太郎からの電話に出た。

「あぁ、今、雅の中学に来ている」

「雅と一緒なの!?まだポメ太郎の事話せてないのに!」

「そのおかげで、一回ぶっ飛ばされたよ。ぎゃあ〜って言って。まぁ、雅の事は俺に任せておけ、それより……」

「新しい実影体でしょ?」

「話が早いな。理恵から連絡がいったのか?」

 ポメ太郎は田中理恵から実影体の顕現の連絡を受け、こちらの世界に戻ってきていた。田中理恵は調査部隊の隊員で、戦闘は出来ないものの、タロットを使った占いで、ダークマターの覚醒を予見することが出来る。

「いや、わざわざ私のところに挨拶に来たよ。渋谷のど真ん中で話しかけてきた」

「今度の奴はイカれてるな。顕現後にいきなり敵の主戦力に喧嘩を売りに行くだなんて。捕まえられたか?」

 ポメ太郎の声は少し安堵感を帯びていた。明美なら捕まえているに違いない。そう思っているのだろう。

「逃しちゃった。でも、恐らく廣瀬の攻撃を1分近く浴びてたから、回復魔法で魔力を使い切ってると思う」

「逃した!?なにやってんだ!最強の魔法少女ともあろうものが!」

「ごめん。ホント情けないよ。油断した。ポメ太郎……信じられないと思うけど、実影体はシンだった。あいつ、復活したの」

「なんだと?奴はもう倒したはずだろう」

「それでも、復活した。そもそも、一度倒した奴が復活する事なんてあり得るの?今までそんな事、一度もなかったと思うけど」ダークマターについて知るには、聖霊のポメ太郎に聞くのが早いことを明美は分かっていた。

 しかし、いつものようにサラッと答えは出てこないようで、しばらくポメ太郎は考えているようだった。

「…………あり得ない……事もないか。実影体は、死んだ人間の魂を設計図にして、自身の身体を構築するのは知っているな……」

「うん」

「シンの元になった魂が、この世に未練を残して、10年も留まり続けていたと仮定すれば、復活の可能性もあり得る」

「そんな……。だからって、死ぬ人間なんていくらでも居るのに、なんで邪神は、よりにもよってあいつの魂を2度も選ぶのよ!」

「それだけ、実影体としてのあいつが優秀だったんだろう。顕現してしまったからには仕方がない。もう一度奴を倒すぞ。やれるな、明美」

 明美の覚悟の確認というよりも、自分のスタンスを決めたかったのかも知れない。明美に話しかけながら、ポメ太郎はそう思った。

「…………分かってる」

 奴はお前が倒さなければならない。奴はお前を狙ってくる。倒す覚悟がなければ、お前がやられる。そうポメ太郎は伝えたいようだった。

(れん)には連絡をしたか?彼女に言いづらければ、俺から連絡を入れようか?」

「真っ先に連絡したよ。驚いてたけど、協力してくれるって」

「そうか。彼女には、辛い思いをさせてしまうな……」

 それからポメ太郎と明美は、しばらく今後のプランについて話した。どのようにシンを探し、どのように被害を抑えるか。

「シンに雅の存在を知られるのはマズイな。確かあいつにはお前の家は知られていなかったよな」

「うん。学校とか、出かけた先で会ってたから。私、もうしばらく家に帰るのはやめておこうか?」

「そうした方が良いかも知れないな……。少なくとも、奴を見つけるまでは、お前は追跡されないように気をつけろ」

「分かった。私がシンを見つけるまで、雅の事は蓮や桃華に守ってもらう。蓮にはもう話は通してあるから、桃華に連絡しとくね」彼女らの負担にはなってしまうが、仕方がない。雅を人質にでも取られれば、明美も思うように動けなくなるだろう。

「そういえば、桃華なんだが……」

「なに?もう連絡してたんだ」

「あいつ、なんだか変身の連絡とやらをして、この寒い中、何度も素っ裸になりながら深夜まで外にいたもんだから、風邪引いたらしくて寝込んでたぞ」

「あ……」そういえば桃華の事は、あれから様子を見にいっていなかった。

「ごめん……それ、私のせいだわ……。『変身100回連続、成功するまで帰っちゃだめだからね!』って言っちゃった……」「はぁ!?」ポメ太郎は声を荒げた。

 耳がきんとなって、明美は思わず電話から耳を遠ざける。あぁ……だめだ……。昨日から失敗ばっかりだ。明美は気まずさを感じて、なんとなく目頭を掻く。

「お、お前!!あいつが変身100回連続で成功出来る訳ないだろ!通称“全裸の魔法少女”だぞ!!」

 

 ◇


「へぶしっ!!」くしゃみをすると、熱を帯びた頭の中で、水分が揺れるような感じがした。

 桃華は自分の部屋のベッドで寝ていた。昨日、寝る前から全身に寒気がして、ブルブル震えながらベッドに入ったので、風邪は昨日から引いてたのかもしれない。

 でも、やり切った!

 結局、途中休憩も挟みながらだったが、変身の練習は深夜2時までかかった。それでも、なんとか変身連続100回をやり切った!これは私にとってすごい進歩だ!

「へへへ……明美しゃん、褒めてくれるかなぁ……」

 桃華のスマホに電話がかかってきた。明美からだ。慌ててスマホをとって、通話にする。

「ふぁい。ももかです」桃華は電話に出て思った。鼻声が情けない。

「桃華!大丈夫!?ポメ太郎から風邪引いたって聞いたけど」

「あ、大丈夫れす。わたひ、かぜひいても、ごはん食べて寝てれば治るんで」話してるだけで鼻水が垂れてくるので、枕元のティッシュを何枚か取って鼻をかむ。

「ごめんね、昨日、無茶言っちゃって……。桃華は真面目だから、こうなるのも予想できた……。私のせいだよ」

 明美が申し訳なく思うのは、なんとなく桃華も予想出来ていたが、そんなふうには思って欲しくはなかった。実際のところは、まともに変身が出来ない自分が悪いのだ。

「そんな事より!明美さん!私、変身連続100回成功出来たんですよ!」

「本当!!?すごいよ!桃華!流石、私の1番弟子だね!」明美の声から申し訳なさが消えた。喜んでくれている。この為に、昨日あそこまで努力したんだ。桃華の心の中に、温かいものが湧き上がってきた。桃華は自分がすこしウルっときているのにも気がついたが、もとから鼻声なので明美は分からないだろう。

「ふふふ……残念でしたね!これでもう、私の全裸は見れません!」

「そうだね。よく頑張った!偉いね。これで弱点が1つ減ったね」

 桃華は明美の言葉を聞いて、具合の悪さも少しマシになった気がした。それに、いつまでも寝てはいられない。今日は日曜日。千歳との約束もある。

「今日は日曜だけど、桃華は今日はゆっくり休んで。チトセの事は、私に任せておけば良いから」

「そんな!明美さんに迷惑かける訳にはいきません!私、大丈夫ですから!ちょっと鼻水出るくらいで!」

 明美の言葉を聞いて、桃華は思わず布団から起き上がった。汗ばんだ体から急に体温が奪われて、思わず身震いをしてしまう。桃華はうぅっと唸って、また布団に潜った。

「迷惑なんて、いつもかけてるでしょ?それと同じくらい助けて貰ってもいる。それに桃華には、元気になったら蓮と雅の事を守って欲しいの」

「雅ちゃんをですか?」

「そう。今日、昔戦った実影体が復活した事が分かったの。私に異常に執着するヤツだから、雅の事が知られたら、人質に取られたりする可能性がある。私は実影体を探すから、見つけるまでの間、蓮と協力して、雅を守って欲しいの」

「分かりました!あの蓮しゃんと一緒なら、らくしょう!おやしゅいごようれふ!」また鼻水が出てきた。

「ごめんね。じゃあ今日はゆっくり休んで。チトセとはどう待ち合わせしてるの?」

「……13じに、すがもえきです」

 明美は少し嫌な予感がした。巣鴨を選んだのは、チトセの家があるからだろうが、あそこは雅の中学も近い。

「分かった。チトセの事は任せて」

「……ふぁい……。しゅみましぇん……」

 電話は切られた。千歳と明美を2人で会わせるのは、桃華はどこか不安だった。

 いや、何があっても仕方がない事だと、そう自分に言い聞かせて、桃華は布団に頭まで潜り込んだ。

「ちとしぇ……」


 ◇


 渋谷のライブハウスで、明美はハルを待っていた。ハルはライブハウスの場所が分からず、道に迷っているらしい。仕方がないので、明美と廣瀬は、駅でハルと待ち合わせをして、2人で駅まで向かう事にした。

「他の渋谷の子たちには、実影体の事は知らせたの?」

「はい。浄化部隊の奴らには、一応、私除いても3人で行動するように言っときました。調査部隊にも見つけたら連絡するように言ってます。みんな了解っス〜って言ってましたよ」

「ははは……なんかノリが軽いね」

「まぁ……あいつらギャルなんで……」

 ライブハウスを出て、明美は廣瀬と渋谷の街を歩く。廣瀬は明美とは違って、バンドマンで夢を追いかけている。とはいえ、ほとんどフリーターみたいなものなので、明美とは状況が似ている。

 割と会っていて、他に新しく話す事もないので、なんとなく昨日雅と約束した事を話したくなった。

「私さ……そろそろ社会人、目指そうと思ってるんだよね」

「明美さんが!?えぇ!!魔法少女、どうするんすか!」

 廣瀬は目を丸くして驚いている。

「いや、流石にまだ魔法少女はやめれないよ!?でも、いつまでもそうは言ってられないよなと思って……」

「まぁ……確かにそうですね……」

 廣瀬は自分にも当てはまるような気がしたのか、少し居心地の悪さを感じているようだ。

「妹にさ、昨日はじめて就活しろって言われて。多分ずっとまともに働いて欲しいって思ってたんだろうなぁって思うんだ。あいつ、変なとこ気を使うから、私に言えなかったんだろうなって思って」

 大通りに出ると、昨日も渋谷は人で溢れかえっている。でもそんな中でも、将来に悩む魔法少女なんて、この2人しかいないのかも知れないと廣瀬は思った。仲間がいくら増えても、魔法少女は社会から取り残されていて、孤独だ。

「明美さんは、なんかやりたい仕事とか、夢ってあるんですか?」

「やりたいこと??う〜ん……」

「私、就活した事ないですけど、なんかそういうの大事って言うじゃないですか。自己分析とか」

「やりたいこと……やりたいことねぇ……?」

 横断歩道が赤に変わって、2人は足を止める。

 明美は改めて、魔法少女以外の自分がすっからかんだと思った。大学生の頃は、もう少し社会との繋がりがあった気がするが、今は生活のほとんどが魔法少女としての活動で出来ていて、人間社会でやりたい事のイメージが湧かない。

「やりたいこと……マジで無いわ……。お金は欲しいけど……」

 完全に明美の目から光が消えたのを見て、廣瀬は何か明美に言ってやれる事はないか、考える。

「う〜ん……。じゃあもう!それで行きましょう!金持ちになる!夢はでっかく!年収1000万を目指しましょう!」金が欲しいから金を稼ぐ。それはシンプルで、廣瀬にとっても、社会人を目指す正しい答えのような気がした。

「い、いっせんまん!!そんな大金!使いきれないよ!」

 何故か明美はもう1000万を手にしたかのようなリアクションをする。

「そうっすよ!もう金を持て余してしょうがないくらいの金持ち目指しましょう!どうせ目指すなら、てっぺん目指しましょうよ!」

 廣瀬もなんだか楽しくなってきてしまっていた。音楽をやっていない自分なら、大金持ちを目指すぞと考えたかも知れない。

「た、確かに……。中途半端にやるくらなら、1番上を目指すほうが私っぽい気がする!」

「やりましょう!明美さん!丸の内OLとか、港区女子とか、なんかそういうやつの頂点を勝ち取るんです!!」

 明美は自分の中で、なんだか就職に対して、はじめてワクワクするような気持ちが芽生えるのを感じた。

「そうね!分かったわ廣瀬!!最強の港区女子に、私はなる!!」

「その意気です!明美さん!!」

 港区女子とは、主に港区の辺りに出没する、お金持ちとの出会いを求めてコンパやらパーティやらに参加する女性の事を指していて、決して港区の超大手企業に勤める女性を指した言葉では無かったのだが、そんな事、この時の明美たちに知る由もなかった。


ゴールデンウィークを使って、めちゃくちゃ更新するぞと意気込んでいたはずが、気が付いたら初代 プリキュアを一気見したりしていました。

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