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革新期のユリウス・カエサル  作者: くにひろお
ガイウス・ユリウス・カエサル初の執政官へ
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ヴァニティウスの攻撃

主執政官の1月を終えたカエサルは、翌月予想外の動きを見せる。

門閥派はビブルスが主執政官の月になり安心していた。

カエサルが執政官をする一月が終わり、門閥派であるビブルスが担当することで、門閥派は勢いを取り戻すはずだった。

元老院議事録を気にして議論は正論に終始し、門閥派の利となるような議論が進まないこともあったが、カエサルの次の手が市民を騒がせることになった。


今までと同じようにカピトリヌスの邸宅に集まっていた門閥派の面々は渋い顔をしていた。

「あの護民官はカエサルの子分だろう。」

「ええ、それがポンペイオスを裏で支えるように動くということは、カエサルがポンペイオスに自分の支援者になってもらおうとしているからに違いない。」

「あの2人をくっつけてはいけない。ポンペイオスが増長して王になろうとするかもしれん。」

全員が焦りを感じていた。


カエサルが主執政官をした1月、公務員法は大枠で合意に至った。しかし公務員法のなかでも高官である元執政官や元法務官など元老院議員あがりの者たちの罰則については除外させることで決着がついた。門閥派としては懸念された部分を削いだことでカエサルに譲歩させたことに満足感もあり、やっと一息をつけた気分になっていた門閥派は、その間に反カエサルになりそうな議員たちと連絡を取り合う。これを期に反カエサル勢力を結集しようとしたのだ。

その間、門閥派でもあるビブルスは細部での治安に関わる法案の検討などを開始したが、特に大きな動きもしなかった。

来月以降のカエサル対策のために動いていたのだ。

受動的な門閥派の動きに対してカエサルは門閥派の予想外の攻めを見せた。


護民官の1人ヴァニティウスが民会にとんでもない法案を提案してきた。

それは、門閥派を中心としてポンペイオスにこれ以上の権力、権威を与えたくない元老院が無視してきたポンペイオスの東方遠征に関する諸国との取決めを民会で承認するような提案だった。

慣例的に元老院で法制化されることが常だった国家間の取り決めをヴァニティウスは民会を経て承認させるという手段に出た。

降ってわいたような行動に元老院はあわてる。

ヴァニティウスはその提案の日、市民に、「元老院にて保留されていた東方諸国との国交の問題について、国家ローマの安全のため市民が率先して前に進めるべき事案である。」と呼びかける。

事情を知らない市民は熱狂しカエサル、ポンペイオス、クラッススの息のかかった者たちがそれを煽り立てる。

そして、そこに元老院に顔を出さなくなったポンペイオスの姿もあった。

ポンペイオスはヴァニティウスの演説、提案そして市民からの質問や討議のすべてを聞いていた。

反対派の強い意見が出ることもなく、この法案は圧倒的に市民に指示されて成立する。

ポンペイオスはついに一つ実現したかったことを実現できて市民たちにも笑顔をふりまいてその場を去っていった。

笑顔のポンペイスはその場を去りながら、新時代派である3者の同盟の力を感じていた。

後は、自分の兵士たちへの約束を叶える番だった。



一連の経過を経て、カピトリヌスの邸宅での集会は荒れた。

ヴァニティウスがポンペイオスに推されているのは確実である。

そして、元老院が問題視したのはカエサルと繋がりの強いヴァニティウスがポンペイオスと繋がることはポンペイオスとカエサルが結託して一大勢力になることを最も心配していた。

キケロが言う。

「すでにあの2人は裏でつながっているのかもしれません。」

「そんなことはできないでしょう。ポンペイオスの妻ムチアはカエサルに寝取られてしまい、それから両者の間には溝ができているのですよ。」

そう正論を吐くのはカトーだった。

議員たちの一部は、そうだ、と言うがより思慮深い者たちは、その意見には疑問だった。

ローマでは比較的性に対して奔放である。

街中に男根を象ったかざりがおかれたり、売春も互いの合意によってオープンに行われる。

貴族の男性が正妻以外に妻を持ったり、自分の支援者の妻と関係を持ったり、離婚も何度かされることも当たり前だったのだ。そして離婚された女性でも子供を埋める者は丈夫な身体であると重宝されていた。

そのため、カトーのような理想主義的な意見は一部の清廉な者たちからは支持されたが、カエサルやポンペイオスのような権力者たちが妻を寝取った寝取られたということだけで自分の利益を放棄するようには思えなかったのである。

そしてその予想はあたっていた。

「カトーの言い分もわかるが、カエサルとポンペイオスがつながることを回避するために情報を集めよう。そして、あの2人がくっついたとしても対抗できるようにするため、我らに近い者たちを糾合して反カエサルを進めよう。」

カピトリヌスのまとめに皆がうなずいた。


どちらにせよ、予想外の攻撃をくらった門閥派は抵抗することもできないままポンペイオスが東方諸国を制圧した際に決定した取り決めを認めざるを得なくなり、その前後処理の法案についても検討させられることになる。門閥派は後手後手に回った失点を取り戻そうとやっきになっていた。


元老院議事録、公務員法と立て続けの施策を実現したカエサルは、主執政官でない月も動きを見せ、ポンペイオスの待ち望んだ東方国家との取り決めを前進させた。

しかし、元老院の門閥派はカエサルを強く警戒しだした。

さらなる変革を実現できるのだろうか。

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