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カエサルの族長会議

ローマで様々な問題が起きつつあったが、ガリアも平穏ではなかった。

カエサルは冬の冬営でローマを裏切った部族への反撃を行い、さらなる先を目指すことになった。

ガリア族長会議は、会議を召集した有力部族の族長が奥を占めて、その回りを追随する部族や他の有力部族が座ることが多かった。とはいえ誰もが自分の部族こそ一番だと自負していたため、緊張感はそこそこで緩さがあった。一部でドルイドと呼ばれるガリアの精霊信仰を支える司祭階級の一部が時には参加することもあったが助言をする程度だった。

今までは部族長たちによる会合であった。


だが、今回は全てが違っていた。

部族長会議の周りを取り囲むのは各部族の鍛え抜かれた兵士たち。彼らは鍛え抜かれた身体を色とりどりの服や飾り付けをしていた。それはガリアの霊を呼び起こし、男たちの闘争心を駆り立てる。

だが、今回は違った。

族長会議を召集したのも、会議を主催するのも全てがローマの将軍ユリウス・カエサルに権限が集中していた。

会議の周りを固めるのはローマの軍団兵たち。そしてその周りに大きな身体のガリアの戦士たちが控える。

多くの部族長はすでにカエサルと関り合いを持っていた。とりわけ大きな関わりを持っていたへドゥイ族の族長ダイダロスはカエサルの支援を受けて族長にもなっている頭が上がらない存在だった。

そのダイダロスが違和感を感じたのだ。他の族長が感じないはずはなかった。

なぜカエサルは自国の領土のようにガリア全土の部族長を前に王のような振る舞いをしているのか?


危険である。

カエサルの軍事的才能は疑う余地もない。何度もの戦いを時には目の前で見たへドゥイ族の族長は敬意を持ってそう思っていた。

未だ常勝不敗の将軍である。カエサルが兵を率いると負ける気がしなかった。

しかも大国ローマを背後に控えている。ローマにはカエサル以上の天才と言われる偉大なるポンペイオスが控えていた。軍事においてローマの圧倒的な力は理解できる。


とはいえここはガリアである。

ローマではない。

そしてそれはカエサルも十分理解してくれて、その上でガリア人と政治や文化を尊重してくれていた。

カエサルにも言い分はあるだろう。幾つかの部族の裏切りは許せなかっただろう。

しかし、今までの信頼関係を崩すような行為にも見えた。

ポンペイオス、カエサルが怖いから誰も何も言わないが怒りを抑えている部族長もいるだろう。

カエサルに忠告しなければ。ダイダロスはそう思っていた。


ユリウス・カエサルが、部族長会議ですぐにやったことは友好的な交流と不可侵の誓約を破った部族へ、ローマが徹底的な対応をしたことを部族長会議に認めさせることだった。

難しい話ではない。

非はローマとの誓約を破った部族にあるのだ。

これまでもカエサルは和平を結んだら、どこの部族にも今までのことを水に流して新しい未来を作ろう、と言ってくれていた。そこに感銘を受ける者と大したことないと侮る者がいて、この寛大な総督を甘く見て壊滅させられた部族がいくほどあろうか。部族長たちの多くはその事実を理解していた。

次に来るのは何か?

どんな難題を出されるか、と思ったがこれには参加した部族長たちもほっとする。

それ以外も幾つかの議題はあったが部族長たちが困るようなものではなかった。

カエサルが口を開く。

「すでに誓約を破ってローマ軍を攻めたネルビー族は我らに降伏した。だが残念ながら一度講話を結び、その後で我らを裏切った部族が多い。だからこそ私は他の部族の皆の心の内を確認したくてガリア部族長会議を招集したのだ。ここに集まってくれた部族の皆様に感謝を伝える。そして参加要請を無視した主要な3つの部族、そして15の小部族については彼らの本心を探るべく私の軍団が出向くこととした。集まらなかった部族はユリウス・カエサルとローマ軍に対して何かおもうところがあるのだろう。それを確認すべきだと考える。私がどう対応するか部族長会議に来た皆には見ていてもらいたい。」

誰も何も言わなかった。

「反論があれば言葉にするもの。皆の沈黙は、私の行うことを肯定したものとする。」

いつもは笑顔を見せることが多い人好きのするローマの将軍だったが、今日の会議では別人のように笑顔を見せることはなかった。

カエサルに率いられたローマ軍団が動くとなり部族長たちに緊張が走る。軍団が出向く近くに自分の部族がいないか心配になった。

カエサルの軍団は、基本的に許可がない限りは略奪を行わない優秀で統率の取れた集団だった。

だが今回のようにカエサルの召集を無視した部族はどうなるのだろう?

誰もが心配をする。

カエサルはそれらの心配を汲み取ったかのように、部族長たちの前で一度だけ強く手を叩いた。

パンという音が響く。

皆がカエサルの手に集中した。

手に集中して本人の表情が分からないなかで声が聞こえた。

「召集に答えなかった部族は反逆の意思ありと扱う。召集に答えた部族とはこれからも良い関係を継続して行きたい。」

周りの緊張が一挙に溶ける。

それを見て痩身の総督もやっと最後に笑顔を見せてその日の族長会議は終わった。


カエサルは族長会議で承認を得ると、会議への参加を拒んだ3つの部族に兵を送る。

ローマ軍が別れて各部族の本拠地に行軍を始めた。ローマ軍が本気で動き出すと参加していなかった2つの部族は関わりの強い部族を通して講和の意思を伝える。十分な金、食糧、人質を約束してからカエサルは講和に合意した。


最後に残ったトレヴェリ族は唯一戦う意思を示す。北ガリアにあり、ゲルマニアとも密接に関わっている彼らはローマにも勝てるという自負があったのだろう。

カエサルは頼れる副官ラビエヌスに指示をして攻略を任せた。

トレヴェリ族は反抗の意思を示すもラビエヌスに初戦で手痛い損害を出し、さらに頼りにしていたゲルマニアの兵士たちがローマと和議を結びライン川を越えて攻めて来ないと決まったことで追い詰められた。

結局トレヴェリ族は全面降伏することになる。

カエサルはその後も反ローマの小さな部族に対しても同じ姿勢で挑んだ。

小さな部族こそローマとカエサルの力を理解していない風だったため、見せつけるように一つ一つの部族を襲った。

襲撃をして力を見せつけ一つずつ反ローマの部族を潰して回った。

カエサル自身が冷静にガリア全土を見据えてその時の情勢によってすぐに意見を変えるガリア人の節操の無さを理解し、未来のために取り組んだことがこれだった。

見せしめが必要であるとしたため、計算されて苛烈な部族潰しとなる。ローマ軍の兵士たちは仲間を襲われた怒りもあり、総司令官からの略奪許可もあった。さらに傭兵たちにも略奪許可があったため、ガリアの傭兵がガリア部族を強襲することも多かった。

結果としてローマ軍に降伏できた部族はましな方で、全てを失った部族も幾つかあった。

ガリア中北部において、笑顔で優しいカエサルのイメージは変容する。

これを機に反ローマを囁く者たちの姿も少なからずあった。

カエサルは細かな点は気にせず、必要な強襲と講和を繰り返し行った。

その結果、ローマの覇権を認めない部族はなくなった。

少なくとも表向きは。


ガリアの全部族がローマによる制圧を受けた。

カエサルはガリアをどこに導くのだろうか。

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