岩崎家
「ただいま」
家に着くとそのままリビングのソファーに座る。
自然とリビングに集まった。
「俺、手術等しないで、残りの人生を目一杯生きたい。余命が少し伸びても治療する時間が増えるだけなら、生活を優先にしたい。」
両親が頷く。
「それと、一つ報告がある」
「俺、理佳と結婚する事にしました。」
二人共驚き、
父「それは、辞めた方がいい。この半年の為に、俊が死んだ後の50年を棒に振るかも知れないんだぞ。」
「親父と同じ気持ちだったので、死ぬ前に理佳と別れなければと思い、実はさっき理佳に別れ話をした。」
理佳が話してくれた事を、そのまま両親に話した。
母が目に涙を浮かべ、
母「俊は、本当に愛されているんだね。」
俊「今でも心の何処かで、本当にいいのか分からなくなる。」
父「大城さんの苦労を思うと・・・
結婚すると墓の管理等、戸籍以外でも、常に俊が関係してきて、大城さんの行動を妨げる要因になると思う。」
俊「今の段階では、理佳も把握していた。」
母「大城さんの気持ちは、凄く良く解る。ねえ、お父さん。」
何か意味深な言葉を父になげた。
父の表情が変わる。恥ずかしがってる様子である。
俊「何?」
母「お父さんの「プロポーズ」の言葉を思い出しちゃっただけよ。お父さんが覚えていればだけど」
と父を見る。
父「覚えてるに決まってるだろ。」
俊「教えてよ。二人の若い頃の話、あまり知らないから」
母が話し始める。
職場が二人共同じデパート勤務だったので、顔を知っている程度だった。
職員用の出口から帰宅しようと思って、2、3歩歩いた時、心臓を締めつけるような痛さを感じうずくまっていると、父が見つけ救急車を呼んだ。
救急車が来て、病院へ搬送される。
病院に着く頃には落ち着いていたんだけど、心臓弁膜症と診断され、手術が必要で入院となった。
病室に行こうと診察室を出ると父が待合で待っていた。
父は、母の親が来るまで待っていた。
母親が病院に到着し、帰って行った。帰り間際に「また来るね。」とだけ言って帰った。
それから二日おきに病室に単行本を買って、見舞いに来た。
手術前日、いつもより早い時間に父が見舞いに来て、
父「手術が成功しても失敗しても、結婚して下さい。」
と言って来た。
母「手術が失敗したら、私死ぬのよ」
父「死んでもいいから結婚して下さい。」
心臓手術を受ける前日に、心臓に負担を掛ける様な常識が無い父に、母は笑ってしまう。
明日の手術の事でナーバスになっていた気持ちを完全にふきとばしてくれた。
笑いながら
「いいけど、きちんと付き合ってからね」と父に伝える。
父は大声で「ヤッター」と発する。
それを聞いた看護師が病室に入って来て、「静かにして下さい。」と注意された。
俊「それって凄いね。俺には絶対出来ないし、やらない。」
父「母さんも、そこまで話さなくても・・・」
母「でも、あの言葉は、めちゃくちゃだったけど、私に生きる力をくれたのは確かよ。もし、大城さんが何かあったら、私達も生きている間、全力でサポートするわ。」
俊「ありがとう。本当にありがとう。」
親の優しさに後押しされ、改めて決心がついた。
ビビビ・・・
携帯のバイブ音がなる。
理佳からのLINEであった。
明後日の土曜日、家に来れる?
とだけ書いてある。
これって、結婚の承諾かな?と、直ぐに感じた。
この事を、両親にも伝えた。
父「それなら俺も休むから、親同士の初顔合わせしよう。場所を取るなら何処か落ち着いた場所を取るよ。」
この積極性が母と結婚出来た大きな要因だと思った。」
早速理佳にLINEを送る。
2、3分経ち、
「了解しました。場所は、後でLINEするね。」
と返信が帰って来た。
恐ろしい程、進むのが早い。
この10日間程で、人生が激しく動いているのを感じる。




