結婚
公園のベンチで別れを告げたのだが、何故か理佳が泣きながら笑い、抱きついてきた。
「ありがとう。私の事を想って、言ってくれたんだよね。」
想定していなかった行動・言葉を聞き戸惑う。
次の言葉が出て来ない。
理佳「3日前、家族で話し合いをして、俊と結婚をすると家族に話した。」
俊「結婚?」
あまりに唐突すぎて、びっくりするばかりである。
理佳「俊が私の事を想って、別れを告げて来たら認めると言ってくれたの。」3日前の父の言葉である。
まだ、頭が整理出来ない。
ほんの何分か前には、別れを告げる事ばかり考えていた。理佳が別れを嫌がっても、押し通そうとまで考えていた。
理佳の話を聞き、大体の内容は分かった。理佳の私に対する愛情がたまらなく嬉しい。ただ、死ぬ身としては、どうなのであろうか。
分からない。
別れを決めた理由を話す事にした。
俊「理佳には、これからも長い人生がある。理佳には、幸せでいて欲しい。生きてる時に別れないと、理佳は俺との恋愛を終わらせる事が出来なくなる」
話の途中で理佳が話出す。
「これからも幸せでいて欲しかったら、答えは一つしかないわ。それに俊との恋愛を終わらせるつもりも無いわ」
頭でここまでの事を整理するが、まとまらない。
ただ、分かっているのは、理佳が私の思っていた以上に愛してくれていた事、この後の事も含めて考えていてくれた事だ。
しばらくして
俊「本当にいいの」
理佳「俊こそ、私でいいの?」
サプライズ・プロポーズを思い出す。
hopeの皆には申し訳無いが、プロポーズを言うのは、今しか無いと思い、理佳に想いを伝える。
「短い夫婦生活になると思いますが、どの夫婦よりも1日1日を大切にして、どの夫婦よりも幸せになれる様にしますので、結婚して下さい。」
理佳の目には、涙が溢れ出す。
この一週間に出る涙とは、明らかに違う涙である。
理佳「よろしくお願いします。幸せな夫婦でいようね。」
私も涙が溢れ出す。理佳を失う絶望感からの開放、そして結婚出来る喜びが入り混ざる。
私達の泣いてる姿を見て、公園で遊んでいた幼児が走って駆け寄って来た。
スカートのポケットからハンカチを取り出し「はい」と言って差し出す。
二人で「ありがとう」と言ってハンカチを取り、涙を拭くまねをして、そのままハンカチを返した。
近くにいた、お母さんであろう人に軽く会釈をした。
理佳「子供可愛いね」
「うん」
子供を抱かせる喜びを味合わせてあげれない事に、罪悪感を感じる。
理佳「子供作ろうか?」
俊「今、結婚が決まったばかりだから、結婚してから考えよう」
とはぐらかす。
さすがに片親で苦労するのが分かっているのに、無責任に子供は作れないと考えた。
理佳「お腹空いたね。」
「うん」
理佳「駅の前のファミレスに行く?」
「うん」
理佳と駅の方向に歩き始めた。
すると前から理佳の母親が歩いてきた。
初対面だった。
「始めまして、岩崎 俊です。」
「始めまして、理佳の母です。もしかして、ご飯食べに行くの?」
理佳「うん」と笑顔で答える。
理佳の母も、今の笑顔で察したのか、「ゆっくり食べておいで」
と言い、帰って行った。
ファミレスに入り昼食を注文する。
「実は、次のhopeの練習の時にサプライズ・プロポーズを予定していたんだ。次の練習の時に朱莉さんも来てもらう事になってたんだ。」
理佳「えっ本当!」
「まさか、こんな事になるとは、夢にも思わなかった。まだhopeのメンバーには、病気の事は誰にも言ってない。」
理佳「ずっと、黙っている事は出来ないから、次の練習の時に皆に言おう。」
「うん」
と下を向く。
理佳「俊!下を向かない!また戻っちゃってるよ。」と笑顔で話す。
「うん」また、下を向きかけて
「俊!」
以前にも同じ事があった。
あの時から二人の恋愛は始まった。
そして今日も、新たな形で恋愛が始まろうとしていた。
食事を終えて店を出る。
これから家に帰り、今後の治療について話し合いを行なう。
そして、結婚の事も伝える事になる。




