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「ならば誰か寄越せ」

 

「ベラ様の御実家に縁のある方がよろしいと思われますので、御実家にお手紙を書かれてはいかがでしょうか」

 

「だからベラは庶民なのだから無理に決まっているだろう。役に立たない侍女がでしゃばるな」

 

侍女は王妃の命令において第一王子の世話をしている。

 

助言はするが第一王子の命令に従うことはなかった。

 

「侍女は身の回りを世話するだけが仕事ではありません。王宮内での話し相手の役目も担っております。心許せる方でなくてはなりません」

 

「話し相手も心許せる者も僕がいる。問題ない」

 

「それでは申請書類をお持ちいたしますので、第一王子の直筆でご用意ください。宰相殿にお渡しいたします」

 

書類を用意するために侍女が退出をした。

 

着替え一つでも侍女に手伝わせているルシャエントはボタンを外したことも嵌めたこともない。

 

着替えたかったがボタンを外すということは侍女の仕事だと思っているからしない。

 

唯一靴紐だけは解くが結ぶことはしない。

 

「まったく融通の利かない侍女だ。ベラ、不便をかけるが我慢してくれ」

 

「大丈夫よ。私はお義父様に認めていただいた婚約者だもの。それに身分が低いから周りが嫉妬しているだけよ」

 

いくら侍女でも第一王子の婚約者になりえたベラに嫉妬することはない。

 

ただ職務だからベラの世話をしないだけだ。

 

ルシャエントの中ではすでにベラは王家の人間と思っている。

 

そのベラを虐げることは極刑に値すると考え王になった暁には無能な侍女を見せしめのために処刑する算段を考えていた。

 

「嫉妬などという醜いことをせずにベラの素晴らしさを受け入れれば良いものの」

 

「ルーシャ様が分かってくださっているから大丈夫よ。いつかきっと分かってくれるもの」

 

「だがあのイヴェンヌですら侍女に世話をされていたのだ。ベラにはもっと手厚い世話があってもいいではないか」

 

「イヴェンヌ様はきっとお一人では何もできない方だったのよ。私は大丈夫よ」

 

イヴェンヌは実家から一緒に来ていたマリーが世話をしていた。

 

それでも身の回りのことは一人でできるように教育されている。

 

ドラノラーマの教育方針ということも大きいがマリーがなぜか王家の侍女という扱いを受けていたことが大きい。

 

すべては勘違いからの始まりだが内情を知るにはちょうど良かったと言える。

 

「そうか。たのもしいな」

 

「ルーシャ様と一緒だもの。きっと大丈夫よ」

 

「そうだな。食事にしよう。明日にはベラの侍女を用意する」

 

「ありがとう、ルーシャ様」

 

食事のセッティングはベラが無意識にしたから問題は起きなかった。

 

仲良く分けて食べているが、本来なら許されることではない。

 

この場合は婚約者であるベラが我慢をしなければならない。

 

部屋には誰も注意する者がいないから何事もなかったように食事が終わった。

 

「さて風呂に入るか」

 

「私もあとでいただくわ」

 

「何を言っている?この部屋の隣に風呂がある。ベラは向かいの別の風呂に入ると良い」

 

「部屋の隣にあるのですね」

 

普通は部屋から出ずに浴室が備え付けられていることが多いが部屋が狭くなるという王妃の言葉で改装されていた。

 

風呂だけで常に五部屋分は稼働していた。

 

「明日からは帝国に行くための準備をしなければいけないな。皇帝の名前くらい覚えておけば失礼には当たらないだろう」

 

「家へのお土産に帝国の名産を買ってみたいわ」

 

商会の娘だが商品として見たことはあっても食べたことはない。

 

欲しければ買う以外に方法はないし子どもの小遣い程度で買えるものではないからだ。

 

「たしか織物が有名なはずだ。きっとベラによく似合う」

 

「まぁ」

 

「帝国には長期の滞在になるだろうからな。その間に仕立てさせよう」

 

「でも悪いわ」

 

「一着くらい婚約者に贈らせてくれ」

 

今までのドレスは贈っているのではなく貸し出しをしたことになっている。

 

隠れて会っていたが堂々と会えるから贈り物も盛大にできると考えていた。

 

「ありがとう、ルーシャ様」


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