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「たとえ領土を欲したから手を出すなという理由でも夫婦揃って来るのは不自然よね」

 

「はい、特に外交上の問題もありませんし、ご夫婦で国を空けるというのは国防としても好ましくありません」

 

領土が欲しいのなら帝国に共戦を申し入れることもできる。

 

さらに言えば理由をつけてジョゼフィッチに領土を贈らせれば良い。

 

マセフィーヌなら簡単にできる。

 

「何かしら。マセフィーヌ姉上だけが知っている情報というのは」

 

「来られた時にお聞きしては如何ですか?」

 

「聞いて答えてくれると良いけど」

 

「ここで話していても埒があきません。今宵、マーロと過ごしては頂けませんでしょうか?」

 

「そうね。昔に戻って貴方といられたら素敵でしょうね。馬を二頭用意しなさい」

 

「かしこまりました」

 

二人が恋人同士だったときは馬で遠出をしてお忍びで旅行を楽しんでいた。

 

だから最小限のやり取りで問題なかった。

 

もとより利害で結ばれたマーロとその伴侶は互いの浮気というものには無頓着だった。

 

「わたくしがいない間に何か問題が無かったかしら?」

 

「皇太后が側室の子どもを暗殺しようとしたことはありましたが他は平和でございました」

 

「ヒュードリックの異母弟妹たちを敵視するのは変わらないのね」

 

「お粗末な方法でございますので未然に防げていますが」

 

「来年には戒律の厳しい修道院に行っていただくのです。己の罪を自覚なさると良いのだけど」

 

皇太后が四人の子どもを産んだあとに神への感謝を捧げるために修道院に入ったことがある。

 

神に祈る以外何もすることがない生活に耐えられず早々に戻ってきた。

 

そのことで貴族との間に軋轢を生んでいる。

 

皇族の権力を弱体化したい貴族は喜んでいた。

 

弱体化を望むだけで下剋上を狙っている訳ではないから反逆罪にも問えない。

 

不敬罪に無理に持っていけるだろうが後に皇族への不満を募らせてしまう。

 

「マーロ」

 

「何でございましょうか」

 

「マセフィーヌ姉上の旦那様のレオハルク閣下は成人の式の前に顔に火傷を負ったと言われているわね」

 

「はい、顔全体を覆うほどとお聞きしております。ですからヴェールで顔を隠すという生活をされております」

 

「その火傷にロカルーノ王国が関わっているとすれば、借りを返すという意味も通じると思わない?」

 

「ですが、いくらウィシャマルク王国がロカルーノ王国より小国で歯牙にもかけられないほどと言え王が傷つけられて黙っているのはおかしいと思いますが」

 

「黙るしかないのではないかしら」

 

「どういうことでございますか?」

 

「一国の王と雖も国力が違えば発言力も違う。帝国でも上位貴族が下位貴族を虐げたとして何か罪になるかしら?」

 

「・・・・・・なりません。上位貴族が下位貴族を相手にすることはありませんが、したところで罪にはなりません」

 

階級というものからすれば上位にいれば絶対となる。

 

それは国同士にも当てはまる。

 

「ウィシャマルク王国としては泣き寝入りするしか無かった。そこに帝国が動くという噂を聞いて、マセフィーヌ姉上が腰を上げたとしてもおかしくないわ」

 

「それは可能性としてはありますが、そのような話は聞いたことがございませんよ」

 

「国の醜聞ですもの。ロカルーノ王国が圧力をかけない訳ないわ」

 

「マセフィーヌ様がお越しになられましたら確認をさせていただきます」

 

「もしかしたら邪推というものかもしれないけれどね」

 

マセフィーヌは一番の秘密主義だ。

 

扇の向こうで微笑みながら策略を巡らして気付けば掌の上で踊らされていたということも珍しくはない。

 

他国にいるからと言って油断は出来ない。

 

マセフィーヌがマナー講師をしていたときの教え子は全土に渡る。

 

そのときの人脈を使えば国の醜聞のひとつやふたつ簡単に手に入れることだろう。

 

おそらくはロカルーノ王国の第一王子の婚約破棄騒動など見ていたように詳細を知っているだろう。


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