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「本格的に策略を巡らせば右に出る者はいないほどの才能を持っていながら使うことのできない性格とは何とも矛盾していますわね」

 

「それが陛下でございます。ドラノラーマ様」

 

「その才能を余すところなく受け継いだヒュードリックは今の帝国の倍の国力に出来るでしょうね」

 

「次期皇帝には楽しみでございます。ドラノラーマ様」

 

「それにしても母の悪いところを受け継いでしまった兄上は大変ね」

 

「ドラノラーマ様?」

 

「マーロ、何か用かしら?」

 

「マーロめはドラノラーマ様がジョゼフィッチ陛下と兄妹であると実感しているところでございます」

 

「マーロ」

 

「何でございましょう」

 

「空気となって話を聞いていたマーロの目から見て、兄上の欠点は何かしら?」

 

最初からマーロはいた。

 

何も言葉を発さず、ただただ聞くだけに徹していた。

 

一度だけジョゼフィッチが教師に求められるままに軍略を立てたことがある。

 

それは恐ろしいくらいに緻密で戦慄すら覚えるものだった。

 

初めてそれを見たドラノラーマは本気にさせるためにジョゼフィッチを超えるような真似をし続けた。

 

それはジョゼフィッチを卑屈にさせることにしかならなかった。

 

「言葉にするのは難しいことですが、一言で申し上げるなら短慮という言葉が一番適切であるかと存じます」

 

「そうね。他国より強いがために戦争を仕掛けても許されて戦場においては神懸かり的な強さを持ってしまった」

 

ジョゼフィッチの初陣は己の手で作り上げたたった一度の緻密な軍略を元に行われた。

 

それが軍事国家としての基盤をますます盤石なものにした。

 

「諫める立場の皇妃が不在であることも原因のひとつではあります」

 

「ジュリアンナ妃は聡明で大局を見る目を持っていたわ。そして兄上を諫めるだけの知力も持っていた」

 

「何とも惜しい方を亡くしました」

 

「仕方ないわ。子を産めば儚くなると言われていた彼女を皇妃に据えたのは家臣たちだもの」

 

ジュリアンナのことを大切にしていたジョゼフィッチはジュリアンナ以外を本気で愛することはなかった。

 

側室たちとは義務的に閨をともにしたが皇族としての責務からにすぎない。

 

そしてジュリアンナには妻としての立場以外を求めなかった。

 

本当に大切な役割を知らないままのジョゼフィッチは永遠に知ることもないだろう。

 

「皇族弱体化計画の一環でございましたからね」

 

「なんとも愚かな計画ですわね」

 

皇族の力を弱めるための布石はアーマイトだけではなかった。

 

皇帝としての素質を一番持たないジョゼフィッチを皇帝にし、そして後継者を産むことが難しい令嬢を妃に据える。

 

自分たちの息のかかった娘を側室として後継者を産ませて実権を握る。

 

政治的判断の決定権を皇帝だけに集中しないようにするための計画だ。

 

「ジュリアンナ妃は全てを知った上で、ヒュードリックを産んだ」

 

「素晴らしい方でしたな」

 

「救いはヒュードリックが皇帝としての素質を持ち、性格的にも問題がなかったことね」

 

「あとは側室方の御子で皇帝を支えていくことが出来る方が何名かいらっしゃることですな」

 

「聡い彼らはイヴェンヌが初めて参加した晩餐会でテーブルを共にしていたわね」

 

「他の側室の御子は降嫁もしくは降婿されることになりますな」

 

簡単に実権を握らせてやるほど皇族は甘くない。

 

男子が継ぐことが多いが女が継いだこともある。

 

この点は他国よりも多いだろう。

 

ドラノラーマとて女帝の座を諦めてはいない。

 

王国では表立ってはいないが公務をしない王と王妃の代わりにすべてを行っていた。

 

「兄上がこの上なく帝国を滅ぼすようなことを仕出かしたときは首を取ります」

 

「仰せのままに、ドラノラーマ様」

 

「まぁヒュードリックがいる間は大丈夫でしょうけれども」

 

他国に嫁いでいるドラノラーマとマセフィーヌが動くよりも自国の貴族に嫁いだエルビエーヌが先に動くだろう。

 

一番おとなしそうで加減が効かない性格をしている。


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