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開封された手紙には、ルシャエントが送った帝国への留学についての返事だった。


それは王と王妃の中では却下し、無くなった話だった。


それが皇帝の耳に入り、そして、帝国への留学を許可し迎え入れるという内容だった。


入学許可証が二枚同封されており、ルシャエントの名前とベラの名前が書かれていた。


あまりの事態に王妃は気を失い、王は怒りのあまりに手紙を破った。


どうしてそこまで王と王妃が感情を露わにしているのか理解できないルシャエントは入学許可証を破られないように回収した。


「何を考えておるのだ!」


「なぜです?前に家庭教師だった男が大陸で一番学問が発達しているのは帝国だと言っていました」


ルシャエントを教えていた家庭教師は断定した言い方はしていない。


周りの国を取り込んで大きくなった帝国には多種多様な文化が存在するため一度に多様なことを学べる国だと評した。


これは戦争で拡大した帝国への皮肉を含んでいるが、ルシャエントには通じず、純粋に学問に秀でた国だと思われた。


「馬鹿者、何という勝手なことをしたのだ。これでは我が国が帝国より劣っていると言い知らしめたも同じではないか。何を勝手に手紙を送っている」


「僕はイヴェンヌに送ったんですよ。私用の手紙を皇帝に話すなど、あるまじきことをしたのはイヴェンヌの方です。イヴェンヌとの婚約破棄ができて良かったではありませんか。でも、そんなイヴェンヌにも少しは役立ってもらおうと、帝国に留学した暁には世話係をさせてやると書いたんです」


「こうなっては留学させるしかあるまい。それまでにスンガル山岳の攻略を必ず成功させよ」


「わかりました」


すぐに留学させてもらえると思ったルシャエントは不満だと顔に出ているが、入学許可証を持っていれば構わないと判断して大人しく引き下がった。



その足で再び宰相のもとへ向かった。


侵攻を成功させなければ留学が遅れるだけだ。


「おい」


「これはルシャエント様」


「スンガル山岳への侵攻を成功させよと王命だ。今すぐに準備しろ」


「王命となりますと、御璽入りの書面はございますかな?」


のらりくらりと時間稼ぎをして、侵攻を諦めさせようとしている宰相はルシャエントに確認した。


口頭での指示だからそんなものはないが、言えばすぐにでも書類を作成するだろう。


「時間がない。早くしないと困るんだ」


「時間がないと言われますと、どういったことでしょうかな?」


「帝国への留学許可が下りたと言うのに父上は戦果を挙げろと言う。帝国へ国の代表として行くのだから戦果など無くても問題ないはずだ」


帝国への留学という重大なことを簡単に聞かされて状況が呑み込めないでいる宰相は言葉を失った。


あれだけのことをしておいて帝国への留学が叶うと思っているおめでたい思考に賞賛を送りたくなった。


「帝国への留学許可でございますか?」


「そうだ。僕とベラの入学許可証が送られてきた」


きちんと帝国の皇帝のサインも入った本物だった。


だが、誰もルシャエントから帝国への手紙を検閲していない。


そんなものがあれば中身を確認するよりも先に報告が上がるだろう。


「すぐに戦果を上げて留学の準備をしなければならない。早くしないとベラのお腹が大きくなるからな」


その言葉でベラを連れて行くということよりも妊婦を連れて行くのだということに眩暈がした。


だが帝国もベラが妊婦であるということは知っているはずだ。


それでも送ってくるということに何か裏があるとしか思えなかった。


帝国の思惑を探るとともにスンガル山岳への侵攻をできるだけ先延ばしにするしか、できることはない。


このまま帝国へ留学させたところで問題しか起こさないのは目に見えている。


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