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「王妃様、お耳に入れたいことがございます」


「なんです?」


「昼間に廊下で陛下をお見掛けしたのですが、お疲れのご様子でございました。よく眠れるように王妃様よりワインを差し入れていただけませんでしょうか」


「それはいい考えですね。わたくしの秘蔵から差し入れておきなさい。時を見てわたくしも参ります」


「かしこまりました」


これで王の寝室に入っても咎められない。


王はベリセーと過ごすつもりだろうが、簡単に許すつもりもない。


王妃の寝支度を整えるとワインを持って王の寝室に向かった。


「ベリセーでございます」


王の声で静かに入出の許可が下りた。


素早く入ると、王はベッドの上でムードもなく待っていた。


「お待たせいたしました。こちらをお召し上がりください」


「そんなことよりも早く寄れ」


「王様に見初めていただけるほど自信がございません。こちらで少し勇気づけたいのです」


「そうか、なら一杯だけだ」


ワインをグラスに注ぎ、隠していた睡眠薬を混ぜておく。


重厚な渋みがあるワインを選んだから気づかれないはずだ。


「いい香りだな」


「ありがとうございます」


味わうこともせずに一気に飲み干すとベリセーを抱き寄せて、服を脱がせようとした。


ボタンをひとつ外したところで王は崩れ落ちた。


「効いたみたいね」


王の体をベッドに押し込めるとベリセーはグラスにワインを少し注いで飲んでいる途中で寝たようにした。


これであとで王妃が来たときには寝てしまったように見えるだろう。


「それにしてもここまで簡単にいくとは、ちょっと心配ね」


簡単に暗殺できそうだった。


きっと今夜のことで王自身が人払いをしているだろうからベリセーの姿は見られていない。


もし見られても王妃様からのワインの差し入れだと言えるし、王妃もそうだと答えるだろう。


「このまま殺した方が世のため人のためな気がする」


そんなことはしないがベリセーは溜め息を吐いて部屋を出た。


王と今夜過ごすことに気を逸らせている王妃はベリセーが思っているよりも早く王の部屋に向かっていた。


王妃の足音が聞こえて、ベリセーは近くの部屋に身を隠した。


「早いでしょ」


薬は効いているが完全に効いていないから起きてしまうかもしれない。


あとのことは王妃に任せることにしてベリセーは侍女の控室に向かった。


「あっベリセーお疲れ」


「お疲れ様、ユーシェ」


「ほんと困っちゃった」


「どうしたの?」


ユーシェの手には上質な紙の手紙があった。


宛先は帝国だった。


「今度、帝国に留学するから、この手紙を帝国にいるイヴェンヌ様に出しておけって」


「・・・・・・」


「ほんと困っちゃう。外務大臣はルシャエント様に返しておけって言うし」


「・・・・・・」


「捨てるわけにもいかないし」


「・・・・・・」


「だいたい帝国で何があったか知らないけど、とんぼ返りしてイヴェンヌ様が帝国にいるってことは何かあったってことでしょ」


「・・・・・・」


「ほんと困っちゃう」


「その手紙、預かろうか?」


「いいの?」


「うん」


「ありがとう」


肩の荷が下りてユーシェは晴れやかな顔で控室をあとにした。


残ったベリセーも晴れやかな顔をしていた。


「安心して、ちゃんと帝国に届けてあげる」


侍女が家族に出す手紙は検閲されないことが多い。


ランダムに検閲されることがあるが、一日に何千通と手紙のやり取りがある。


抜け道はいろいろとある。


「分厚い手紙は最初の書き出しだけ見て、残りは見ない」


つらつらと家族のことで、誰がどうしたとか、隣の馬が逃げ出したなどということを何回も読めば嫌になる。


そこで近況報告の手紙は最初の一、二枚読んで終わる。


そこをついて手紙を出す。


本当に届かなくても問題はない。


ルシャエントが手紙を出せと言ったので何とかして出そうとしたと言い訳でもしておけば済む。


「たぶん、届くでしょうけどね」



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