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「何を回りくどく言っている。俺が一週間で準備をしろと言っているのだから、その通りにしていればいい。一週間後に出発することを伝えておけ」

 

「では王に確認をいたしますので、しばしお待ちくださいませ」

 

「今回の指揮官は俺だ。なぜそこで父に確認する必要がある?父は戦果を挙げろと命じられた。いちいち確認をして何になる?」

 

「戦線布告の宣言は王の名において行うことが国際規約で定められておりまして」

 

領土を広げたいからという理由であっても宣言は必要であるから外務大臣の言葉に間違いはなかった。

 

それを理解してもらえないところに苦労はあるが、まともな教育をしないままにした家臣たちの落ち度であるから自業自得だった。

 

「規約、規約、規約とそうやって保守的な考えだから王国は大きくなれないまま帝国に覇権を握られているのだろうが。何を言っても覆らん!一週間後と言えば一週間後だ。分かったな!」

 

「ルシャエント様!お待ちください。王の許可を」

 

「いつまで王の顔色を窺うつもりだ!次期王は俺だ!お前は従っていれば良いのだ!」

 

「他国に示しがつきませんので、ひと月の猶予を」

 

「まだ言うか!この無能が!他国の機嫌を気にしてどうする?たかが山岳民族だろう。ロカルーノ王国の次期王のための礎となれることを誉れと思い感謝すべきだろう」

 

価値のあるのは王族だけで、庶民や他国民は搾取されてしかるべきという考えだ。

 

ベラも庶民だが自分に愛される価値があり、次期王になる自分を愛させてやっているという相思相愛というには隔たりがある考えからだ。

 

「しからばルシャエント様、そのたかが山岳民族にも次期王としての貫禄と慈悲を見せるのも功績のひとつかと存じます」

 

「なぜだ?わざわざ他国の者に慈悲をくれてやる必要などないだろう」

 

「そうではございますが、ここはルシャエント様のお心の広さを示すためにも、ここはひとつ他国の者に慈悲をお願いいたします。これで自国の民もルシャエント様の器量というものを一段と深く知ることになりますでしょう」

 

ルシャエントを言い包められそうだと安堵のため息を吐いた外務大臣は次の瞬間に己の判断が甘いことを知った。

 

「他国への慈悲を見せて何になる。これから戦う相手と馴れ合うことなど不要であろう。ひと月など待っていられん。一週間と言えば一週間だ。分かったな。何度も同じことを言わせるな」

 

返信を待つことなく部屋を出るとその足で軍務大臣のもとへと向かった。

 

そこでは次代の国立軍を担う養成軍の訓練が行われていた。

 

「軍務大臣!」

 

「はっ、いかがいたしましたかな?ルシャエント様」

 

「いかがいたしましたではなかろう。一週間後にスンガル山岳の少数民族を討伐することになった。養成軍にて向かうことを何故、軍務大臣のお前が知らないのだ?」

 

「申し訳ございません」

 

「そんな為体では我が国防を任せるのに不安が残るが、贅沢も言っていられないからな。もう一度だけ言ってやろう。一週間後にスンガル山岳の少数民族を討伐する。準備をしておけ」

 

王が戦果を挙げるようにルシャエントに言ったというのは知っていた。

 

そのことで外務大臣がまず時間稼ぎをすると決まっていた。

 

「しかしながらスンガル山岳の民は猛者が揃っております。一週間では軍備がとてもではありませんが、整いません。もう一度、熟考のほどお願いいたします」

 

「どいつもこいつも腑抜けばかりだな。たかが少数民族に何を恐れている?わが軍の力を以ってすれば何も恐れることはない。何度も同じ説明をさせるな」

 

「一週間というのは些か短いと思われます。ひと月は必要かと」

 

「そんなことをしていれば婚約発表の前に子どもが生まれてしまう。何が何でも一週間後に出立する。いいな?それと明後日には模擬訓練もするからな。用意をしておけ」

 

言うだけ言ってルシャエントは訓練場を後にした。

 

話を聞いてしまった養成軍の候補生たちはルシャエントの下で国立軍として仕えることに疑問を持ってしまった。


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