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「これで良いの?」

 

「えぇブルスラはオカルトが苦手なのよ。それで誰かに話して楽になりたいのよ」

 

「それで勝手に噂が広がるということね」

 

「本当は当初の予定通りの噂にするつもりだったのだけどブルスラがいるのなら話は早いわ」

 

噂好きの侍女はどこにでもいる。

 

だから本当に知らせたくないことは話さないのが鉄則だ。

 

情報の漏洩が心配になるが城勤めの侍女は実家に帰るにも監視が付くし、家族に何か話せば一家路頭に迷うことも少なくない。

 

だから重要なことを知っている侍女は代々が城勤めという者が多かった。

 

「皇太后付きの侍女は全員身分が低いのよ。当り前よね。いくら皇太后でも男爵家の娘に付きたい者はいないわ」

 

「あのブルスラの実家は伯爵家なのだけど野心家でね。曾祖母様は庶民で男爵家に嫁いで、祖母様は子爵家に嫁いで、お母様が伯爵家に嫁いだという玉の輿一家なのよ」

 

「次は侯爵家に嫁ぐまでに城の侍女という肩書きが欲しかったわけね」

 

庶民でも伯爵家くらいまでは教養があったり当主の後押しがあれば嫁ぐことができる。

 

婿入りもしかり。

 

でも侯爵家以上となれば現実は厳しい。

 

三代前が庶民の身分だという娘が嫁ぐなど持参金が多くないと無理だ。

 

庶民が嫁ぐとなれば、それはもう物語の世界だ。

 

「それでも努力と苦労を何代にも渡ってしてきたのだから責められる謂れはないわね」

 

「そうね、王国でも眉を寄せる行為ではあるけど高望みしたわけではないから嫉妬が半分というところかしらね」

 

「伯爵家の城の侍女は結婚の申し込みは多いのだけどブルスラだけは例外なのよ。あの噂好きが高じて貰い手がないの」

 

「外で家の内情を話されでもしたら大変なのことだものね」

 

「明日には皇太后の耳に入っているわ」

 

「次の行動はそれからね」

 

皇太后の部屋から出た趣味の悪い調度品を片付けるために部屋を用意する。

 

普通ならお下がりとして売ることもあるが趣味が悪すぎて買い手がつかない。

 

城に忘れられている調度品も多い。

 

それでも品物が良いから皇太后付きの侍女がこっそり持って帰ることもあるが誰も咎めない。

 

税収の少ない家の者が多いのと我が儘放題の皇太后の世話をしていることへの皇家からの罪滅ぼしだった。

 

何が無くなっているか把握されているが持って帰った者は知らない。

 

「そういえば皇太后が若い頃に着ていた服がこのあたりに」

 

「うわっ趣味悪い」

 

「これ仕立て直して着て貰う?」

 

「修道院に入ったらどうせ修道服だものね。むこうで処分してもらおうか」

 

針仕事が得意な侍女を集めて皇太后が過去に着た服を仕立て直す。

 

おそらくはバザーなどで売られることになる。

 

これで衣裳部屋が整理できると引退した実家の母などにも手を借りる。

 

「イリーダ、聞いた?」

 

「何を?ビルシー」

 

「王国の不倫娘よ」

 

ルシャエントが愛人だと公言したベラのことだ。

 

今は宣誓を受けているから婚約者同士だから不倫娘という字名は適当ではないが通じやすい。

 

王国の話が簡単に手に入るあたりに情報統制が乱れているのが分かる。

 

「不倫娘がどうしたの?」

 

「子どもをおろさずに産むそうよ」

 

「よく王国が許したわね」

 

「秘薬が効かなかったそうよ」

 

「それは悪運の強い娘ね」

 

子どもを流すための薬だが効き方には個人差がある。

 

効きにくい体質だったことが原因だ。

 

これでは産む以外では母体を殺すしかなくなるが醜聞になるから産んだ後に修道院送りが妥当なところだ。

 

「まぁそれでも王家の血を引く者をおろすとか考えるようじゃ家臣も凄いわよね」

 

「庶民の娘との子でもどこかの貴族の養子くらいにはするわよね」

 

「帝国でもあったけど子どもは皇家入りしたものね」

 

他国のことであるから遠慮なく話が進む。


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