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「王国では公爵家令嬢であったとしても帝国では縁戚を持つだけの令嬢である以上は逆らえない。それはあまりにも悲しいですわ。わたくしはイヴェンヌ様を利用しようとしていますが同じ令嬢としては意に染まぬことを強いることはしたくないのです」

 

「お心遣いいただきありがとうございます。わたくしが自分の意志で決められるようにと先にお話しいただいたことは分かりました」

 

「近々ヒュードリック様よりお話しがあるでしょう。イヴェンヌ様には難しいことと思いますが帝国では本当に嫌なことは嫌だというのが暗黙の了解になっております。それが皇帝からの命であったとしてもです」

 

「王国では考えられないことですわね」

 

「すべてではありませんが人の心が強く関わるときだけは許されております。無理強いをして謀反されたくはありませんもの」

 

国が違えば文化も変わる。

 

ルイーナは少しだけ王国に交換留学生として滞在したことがある。

 

だから帝国との違いは知っている。

 

命令をされれば男性は拒否する権利が与えられているが女性には与えられていない。

 

再考を願うことはできるが決められたことには従うほかない。

 

「帝国の文化というものは他国の方には馴染みのないものでしょう」

 

「そうですわね。命令を拒否するなど反逆罪として罰せられることになりますわ」

 

「これは皇帝を含めて暴君にならないための戒めですわ。わたくしも幼いころは侍女に叱られました。ボール遊びは大概になさいませ、とね」

 

「まぁ」

 

「今でも小言があるわ。やれ髪の結い方が甘い、帯の締め方が甘いとそれはもう休むことなくよ」

 

その小言が大切であると分かっているから誰も咎めない。

 

皇帝も引退した侍女から小言の手紙が届く。

 

返信をしないと小言が倍になって返ってくるからすぐに書く。

 

書いても小言がくるから大変ではあるが自分の行動を振り返ることはできた。

 

「話が逸れてしまったわね。急な話ですもの。ゆっくりと考えてくださいな。断っても誰も貴女を責めることはないわ」

 

「・・・ですが」

 

「わたくしがヒュードリック様ではない子を宿したことが原因です。わたくしの身勝手が引き起こしたこと。気になさることはないわ。また別のことを考えるだけですよ」

 

「ルイーナ様」

 

イヴェンヌが来なければヒュードリックと大喧嘩を装って実家に静養することになっていた。

 

そして持て余した娘を嫁がせたという流れになるはずだった。

 

そこにはヒュードリックが絡んでいるからルイーナの父は強く口を挟めない。

 

「長く話してしまったわね。今度、お茶をしましょう」

 

「えぇぜひ」

 

「ではごきげんよう」

 

ルイーナが廊下に出ると護衛として付いて来ていた男性がいた。

 

何も言葉を交わすことなく書物庫を後にした。

 

「どうだった?」

 

「分からないわ。でもとても聡明な方だわ。だからこそ手を貸して欲しいけれどイヴェンヌ様次第だもの」

 

「そうだな」

 

「もし手を貸してくださらなくても口外される方ではないわ。それは安心ね」

 

「そうか。なら待つのみだな」

 

どちらでも良いとルイーナは考えていた。

 

国に利用されてきた人生なら残りを自由に生きても良いと思っている。

 

自分が好きな人と思い合うことを許されているように。

 

「ヴェッツィオ」

 

「なんだ?」

 

「それよりもマセフィーヌ様が生き生きとされていたのだけど貴方知っていて?」

 

「知らん。機密事項だと言うよりも一人で楽しんでいるというのが近い」

 

隠しているのではなく話していないだけだ。

 

機密というのは知っている者がいるが黙っていることだ。

 

これはマセフィーヌが頭の中で組み立てたことを誰にも話していないから動いているのは知っているが何かが分からない。

 

「困ったわね。というよりも危険ね」

 

「危険だな」

 

本当にギリギリになって全貌が明らかになることがある。

 

敵を騙すには味方からという言葉を地で行く人だと周りは思っている。

 

マセフィーヌ信者が多いのも問題だ。

 

これを、というだけで、ははっと言うから性質が悪い。


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