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「おい、いるか」

 

「これはルシャエント様、いかがされましたかな?」

 

すでに次期王ではないルシャエントの命令に従いたくはないが王家の者の機嫌を損ねないためだけに遜る。

 

「王が功績を上げろと言ってきた。今すぐに戦争の準備をしろ」

 

「なんと!それは誠でございますか?では帝国へ向けて出発の準備をいたします故に・・・」

 

「何を言っている。功績を上げるためなのだから勝てるところに戦争を仕掛けるのが定石であろう。どこか用意しろ」

 

「用意と言いましても模擬戦をするのとは違いまして」

 

「それをどうにかするのがお前の役目だろう」

 

戦争というものを何も理解していないルシャエントは命じれば相手が用意されると思っているような行動に出た。

 

戦争になれば命をかけて戦うのは自国の民であり兵たちだ。

 

ゲームの駒のように取り合うものではないということを身に着けてはいなかった。

 

「何も理由なく攻め入るのは国際条約に反します。お考え直しを」

 

「何を言っている。僕の功績を作るという立派な理由があるだろう。お前はバカなのか?」

 

「他国への正当な理由というものは重視されますので、ご考慮のほどを」

 

「その耳は飾りか?王が功績を挙げろと言ってきたのだ。スンガル山岳の少数民族でも、この際は許す。準備をしろ」

 

戦争をするのなら進軍を開始する一か月前に開戦宣言することが義務付けられている。

 

これは小国がむやみに蹂躙されないようにするための措置だ。

 

また国力に差が大きい場合は必要以上の攻撃をすることも禁止されている。

 

この制約も必要ないときもあるが、今回の戦争に関しては絶対に必要だった。

 

「ルシャエント様、国には国の決まりというものがございます。それを守ることも功績のうちかと存じます」

 

「父上はそれでは認めてくださらないのだ。とにかくスンガル山岳の民族を倒すのに期間はどれくらいかかる?」

 

「ひと月は準備が必要になります。戦争を開始するための決まりというものがございますので」

 

「そうか。では僕の功績になるように準備をすすめろ」

 

「かしこまりました。つきましては養成軍にて準備をお願いいたします」

 

時間稼ぎをするつもりでルシャエントを養成軍に入れることに大臣は決めた。

 

いろいろと理由をつけて長引かせるつもりだった。

 

次期王になること可能性がゼロに等しいルシャエントに軍を動かすことを躊躇っていた。

 

「養成軍?国立軍ではないのか?」

 

「国立軍はすでに王の指揮のもと統制が完了しています。養成軍の統制も併せてされますと功績になりますかと」

 

「そうか」

 

ルシャエントをその気にさせることは家臣たちにとってお手の物だ。

 

適当に煽てておけば済むからだ。

 

この扱いがルシャエントがイヴェンヌ以外に女性を作る原因のひとつでもあった。

 

煽てる家臣たちの中でイヴェンヌだけは苦言を呈していた。

 

それは家臣たちに取っても煩わしかったがルシャエントが一番煩わしいと思っていた。

 

「養成軍は今の国立軍の者が引退したあとの後継となります。年齢だけが違うことになります」

 

「では養成軍の指揮を執る。訓練の日程を用意しろ」

 

「明後日に早朝より開始いたします」

 

「早朝?訓練ごときに早く起きる必要はないだろう。昼からにしろ」

 

「では、そのように」

 

王家の者ならば学園に通うと同時に軍に在籍し、訓練を受ける。

 

だが怪我をすることを嫌がった王妃が取りやめてしまった。

 

そのせいでフィリョンとオーギュスタも軍に所属することができなくなった。

 

今までの教育が身についていないルシャエントは訓練がどれほどのものか想像もできていなかった。

 

「こちらが当日の訓練の教本となります。士気を挙げるために覚えていただきますようお願いいたします」

 

「そうか。訓練ごときに仰々しいのだな」

 

訓練で出来ないことは本番でも出来ない。

 

戦争の怖さを知らない者は何よりも怖かった。


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