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「王家を守るための我らの苦労というものを慮って欲しいものだ」

 

「本当に先代王は可愛いものだった」

 

「うむ、女に見境がなかったくらいだったからの」

 

「それも後宮に召し上げれば解決したからな」

 

「それに先代王は子を欲していたわけではなかったからのぅ」

 

「助言を受けて避妊はしっかりとしておった」

 

「色を好むのも甲斐性のうちじゃて」

 

「多すぎるのも国庫を圧迫するから適度が良いがのぅ」

 

「その反動か、王はまったくと言っていいほどに女に興味を持たなかったからな」

 

「今の王妃だけで、側妃にも子がおらんからな」

 

「子が一人というのも考えものだ」

 

「王妃があと二人くらい生んでくれておれば面倒なことも無かった」

 

「側妃も子がおらんから平気で帝国に留まるのだ」

 

「いくら愛する者が王妃だけでも王の義務として側妃に子の一人くらい孕ませておいてくれてもよかろうに」

 

「初夜に寝所にすら通わなかったというのは問題であったな」

 

「うむ、通ったという事実があれば他の男の子種でも誤魔化せたものよ」

 

「待て」

 

「どうした?」

 

「初夜にも通っていないとなると離縁が可能であるぞ」

 

「どういうことだ」

 

「初夜を迎える日から一年以内に閨を共にしなかった場合は女を石女の誹りを与える行為として禁止されておる」

 

「しかし何年もなるぞ」

 

「女の側から教会に申し出る必要があるから黙っているだけであろう」

 

「政略結婚であることは周知の事実だからな。わざわざ離縁する必要もなかったということか」

 

「女として魅力がないと公言するようなものだからな」

 

「帝国女では申告できようもないな」

 

「それで側妃との宣誓はどのようになっておる」

 

「ちょっと待て、調べるぞ」

 

「いくら禁止事項があったとしても宣誓により離縁できぬようになっておれば問題ない」

 

「急かすな」

 

「急げ」

 

「あった、あった」

 

「して、内容は?」

 

「宣誓は双方にしておらん。ただ王国より側妃という立場を賜り、受けたという申告しかされておらん」

 

「つまりは結婚もしていないということか」

 

「さよう」

 

「ますます問題ではないか」

 

「名誉職のような扱いで側妃は書類上では独身じゃ」

 

「追加の但し書きがある」

 

「何と書かれている」

 

「双方に相手を思う気持ちが芽生えたときは神の宣誓を行うこととする」

 

「それで、側妃は宣誓しているのか?」

 

「しておらん」

 

「つまりは閨に通った通っていないと論議するまでもなく、夫婦ではなかったということか」

 

「さよう」

 

「さよう、ではないわ。これでは側妃と連れ戻せば誘拐になってしまうではないか」

 

「王も宣誓をしておらん」

 

「しかしのぅ、国民に側妃であるとお披露目をしておる。誰も偽装だったとは思うまいて」

 

「たしかにな。他国より祝いの品も贈られて来ていた」

 

「それで婚姻関係が成り立っていたとなれば、一年の不渡りが成立してしまうではないか」

 

「どちらにせよ、王国に不利なのは変わらんの」

 

「どうにかせい」

 

「とにかく手紙だ。手紙で呼び戻すのだ。本人が自分の意思で戻る分には我らに非はない」

 

「そうだ、そうだ。側妃という立場を賜ったのなら全うするのが筋というもの」

 

「なぜに宣誓をしておいてくれなかったのか。そうすれば悩まずに済んだというのに」


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