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「第一王子が連れていた庶民の娘の行動には悩まされる」
「うむ、まさか、帝国のドレスを着ているとは」
「しかも王や王妃よりも目立つものであったとか」
「一人では歩けないから輿に乗っていたとか」
「帝国も帝国だ。あのような娘にドレスを渡すとは落ちたものよ」
「だが、帝国と我が国の同盟は書面を交わしていたとは言え希薄なものになっておった」
「百年も前の取り決めだからな」
「帝国の姫が我が国に嫁ぎ、公爵家に帝国の血を持つ令嬢がいることで同盟が確固たるものになる予定だったのに」
「側妃に子が生まれることが望ましかったが第一王子とイヴェンヌ嬢との間に子が生まれるのでも良かったからのぅ」
「それも此度のパレードで潰えた」
「司教どのが宣言してしまわれたからな」
「それにしても何故、ウィシャマルク王国が出しゃばってきていた?」
「うむ、ウィシャマルク王国の王妃が帝国の姫であったから里帰りは納得ができる」
「ご機嫌伺いに王も同席というのも筋は通っている」
「だが我が国の謁見に同席というのは解せぬ」
「なにか思惑があるのやもしれんな」
「思惑があろうとも小国ごときに何か出来るとも思わないからな」
「何やらごちゃごちゃと言っておったが分というものを弁えておらんかったな」
「捨て置け。それよりも側妃がまだ帝国に留まっていることに手を打たねばならん」
「早く連れ戻して塔にでも閉じ込めておくか。帝国でも妹がいる国に攻め入ることはせぬだろう」
「そうと決まれば手紙を送るか」
「王と王妃には蟄居いただこう」
「オーギュスタ様に王になっていただくように進言しよう」
「あとはイヴェンヌ嬢を王妃にするために手紙を送ろう」
「王国で一年過ごしてもらえばよかろう」
「令嬢が一度は夢見る王子様と結婚ができるのだから泣いて喜ぶであろうよ」
「あとは第一王子の騒ぎだな」
「あぁ手の被れくらいで医者を呼びつけたことだな」
「人騒がせな」
「気の持ちようで熱も出よう」
「根性が足りぬ」
「ちと軍に入れてみてはどうか?」
「うむ、余所に子を作ることが出来ぬ身じゃからな。養成軍にまずは入れるか」
「国立軍に入れると三日で死ぬだろうて」
「王となる者が剣を振るう必要なしと言って稽古を逃げておったからな」
「そのせいで護衛を倍に増やす必要があった」
「国庫を圧迫する原因だからな。王城にいないのなら護衛もいらん」
「娘の方は子を産んだあとに第一王子の帰還祈願のために修道院に入ってもらおう。こちらもルシャエント様以外と添い遂げんからな」
「実家も持て余すだろうて」
「しかも後継者争いの火種にしかならない子ども付きはますます要らん」
「王家の血は然るべき貴族で受け取るべきだからな」
「子どもに罪は無いのは分かるが引き取るわけにもいくまい」
「孤児院で育ててオーギュスタ様の養子にしてはどうだ?」
「そのあとに貴族の養子にしてどこかに婿養子にするのか?」
「いや縁戚の下位貴族の養子にする。一代限りの貴族の子どもにしておけば間違っても後継者だとは言われまい」
「下手に王家に関わる仕事をさせて不満でも持たれたら大変だからな。王家に近づけぬ身分にしておくのが安全だろうて」
「あとは男でも女でも子を生せぬようにしておかねばならないな」
「生かしておけば子種くらいにはなろうて」
「王家のために役立てるのだから誉れであるな」
「いろいろと面倒なことをしでかしてくれる王家だが居てもらわんと困るわ」




