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顎に手をあてて少しだけ考えるそぶりをする。

 

マセフィーヌは声が弾んだイヴェンヌを微笑ましく見て頬の涙のあとをハンカチで拭いておく。

 

これから悪戯の相談があると分かっているからマセフィーヌは黙って出て行った。

 

「そうだな。お忍びで行くから知らないフリをしてくれというお触れを出して買い物をする方法がひとつ」

 

「もうひとつはどのようなことですの?」

 

「家臣やら護衛やら誰にも告げずに城を抜け出して買い物に行く」

 

「まぁそれは楽しそうですわね」

 

イヴェンヌは純粋に喜んでいるが護衛している者たちは堪ったものではない。

 

下手をすれば処罰が下る。

 

それを分かっているから変装した護衛を連れて行くこともあるが本当に一人で行ってしまうこともある。

 

「なら決まりだな。今日は店も終わりつつあるからな。あとは知られると大変だからな。マセフィーヌ叔母上が帰国されてからだな」

 

「そうなのですか?」

 

マセフィーヌがマナーに厳しいと言っても子どもがするような悪戯にまで怒るような性格ではない。

 

その証拠に何も咎めることなく部屋を出ている。

 

問題なのはマセフィーヌがいるせいで護衛やら家臣やらが気を引き締めていつもの二倍くらい張り切って仕事しているから隙がないのだ。

 

この中で抜け出すのは難しい。

 

たとえ抜け出せても帰って来られない。

 

「叔母上のせいで騎士たちも仕事に励んでいるからな」

 

「そんなにも凄い方なのですか」

 

「マナーに厳しいが長いこと独身であったからな。降嫁して欲しいと思っていた騎士は多い。その名残だ」

 

いつもそれくらい仕事をしろというのは笑い種だがマセフィーヌに褒められたいと思う騎士が多いのも事実だ。

 

「マセフィーヌ様はとても人気があったのでございますね」

 

「あれは人気とは言わない。むしろ信者というのが近い」

 

「信者ですか?」

 

「あぁ」

 

たった一言だが宝石の産出量が少なくなった年に、少ないわねと呟いただけで騎士たちが鉱山に押し寄せたのは冗談でも何でもない。

 

宝石の産出量が少なくなったのは鉱山の責任者が横領していたからなのだが事実が知れ渡るよりも先に掘ってしまった。

 

マセフィーヌの機嫌を損ねたと知った責任者は横領した宝石をすべて返還し田舎に蟄居した。

 

「花が見たいという言葉で騎士が如雨露で水を撒いているのは目を疑ったな」

 

「そのようなことまでされていたのですね」

 

「きっと嫁ぎ先でも似たようなことが起きているはずだ」

 

マセフィーヌを喜ばせようと率先しているのは夫であり国王であるレオハルクだ。

 

国王が自ら刺繍をしたショールはマセフィーヌの宝物になった。

 

「長く話してしまったな。子どもたちが待っている。書物庫に行こうか」

 

「はい」

 

ヒュードリックがイヴェンヌと二人きりになることを阻止しようとロックベルはいつも動いている。

 

イヴェンヌが嫌がっていないから強く止めることができないでいる。

 

異母妹たちにはヒュードリックは意気地なしと呼ばれているのは本人だけが知らないことだった。


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