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砂塵りのケーナ  作者: 束間由一
第二章:愛の輝き
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最後の試練


 司祭エドガルドの元へ向かうレイル。

 サンドディキシマを倒した事でいつも間にか英雄扱いされる羽目になてしまった。




 「ふぁふぁふぁ、良く来たなレイル。噂は届いておるぞ」


 「司祭様も、既にご存じでしたか」

 

 「ふぉふぉふぉ、ワシとて、この神殿でただ引きこもっているわけでは無いわい!」

 


 エドガルドは、皺だらけの顔で笑った。

 機嫌の悪い時はとても恐い形相になるが、機嫌のいい時は非常に憎めない、良い顔になるのが、この老人の顔であった。



 「ここに来る途中でも、指差されたりして、ちょっと恥ずかしかったです……」


 「おいおい、そう照れることはあるまいて。お前さんも、これですっかりデルアラスの民に好かれるであろう。もっと、堂々と外を歩くがよいわ」 


 「はぁ……」


 「お主の顔は、ここに来た時と比べて随分と逞しくなった。ワシの老眼でもわかる程にな。自信を持て、レイル。試練も、残すはあと一つなのだからな」


 「やはり、次が最後なのですか!?」


 「そうだ。最期にして、最大の難関だがな」


 「それは、一体……」



 エドガルドは、コホンと息をした。

 少年と少女は、真剣な目で、その老人の方を見る。



 「ケーナよ。ダモロクロスの要塞は知っておるな?」


 「えっ!?」蒼き髪の少女は目を丸くする。

 「最期の試練は、あそこに行くんですか?」

 

 「そうだ。デルアラスでの試練の締めくくりは、あの古の要塞にある<歩みの種>を手に入れ、それを1週間以内に花咲き実がなる状態で持ってこい。持って来れなければ、今までの苦労は全て水の泡になると思え」


 「ちょっと! 司祭様!? 一週間って……あそこまでの距離を往復するだけで4日かかるんですよ!?」


 「残念だが、内容を変えることは出来ぬ」


 「しかも、種をいきなり花にするなんて……そんなすぐに成長するとは思えない」


 「だが、先人達はそれを乗り越えてきた。レイル、ケーナ、お前たちもこの試練受けねばならぬのだ」



 困惑する2人だったが、エドガルドの眼差しの鋭さに、不可避である事を悟った。

 そして、レイルはこくりと頷く。



 「わかりました……やってみます!」


 「ならよし! どんな手段を取っても構わぬ……必ずワシの言ったものをここへ持ってこい」


 「はい!」


 「では、行け!」



 レイル達は歩きだす。不安はぬぐえないものの、それは力強いものだった。

 エドガルドは、そんな2人の背中を応援する眼差しで見つめていた。



 こうして、最期の試練への挑戦が幕を開けたのであった。



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