知れ渡る名前
サンドディキシマを、成長したレイルとケーナはいとも簡単に倒した!
2人は随分と強くなっていたのだ。
翌日、いつものように木製の椅子に腰かけ、朝の新聞を読み始めたレイルは、はっと驚いた。何と、新聞の一面に、自分の事が書かれていたのだ。
<冥術士の少年、砂漠の魔物を見事玉砕! デルアラスの新たなる英雄の誕生か!?>
しかも、内容は随分と持ちあげられていた。まるで、スターの様な扱いである。それなのに、一緒に戦ったケーナの事はなぜか一切書いていない。レイルは、何となく、これがケーナの仕業なんじゃないかと思った。デルアラスの新聞社に対して、王族の発言力がかなりあると以前聞いていたからだ。
「まいったな……」
レイルは頭を抱える。
そんな、彼の気持ちを知ってか知らずか、ファリーダは楽しそうに出来たての胡桃パンを机に置いた。
「大丈夫じゃない? あんたの絵とか写真とかが載ってるわけでもないし」
「でも、特徴が結構書かれてるし、いつもの恰好してると気付かれちゃうかもしれないよ」
「あはは! いいじゃない、いいじゃない! 人気者になるなんて羨ましい事じゃないか! 私もなってみたいもんだねぇ、デルアラスの英雄さんに」
そう言って、ファリーダが剣を振る様なポーズをとった。あまりに適当な、ぎこち無い動きだったので、レイルはコーヒーを吹き出しそうになった。
「ちょっと……食べてる最中に笑わそうとしないでよ!」
「ごめんごめん。そんなにウケるとは思わなかったからさ。それで、今日はまた試練を受けに行くんだよね?」
「そうだよ。そろそろ、最期の試練になるみたいなんだ。」
「そうかい! あと少しなんだね!」
「ケーナやファリーダのおかげだよ。今までありがとう」
「そんな事言いなさんな。英雄になったことだし、いっそ試練が終わって一人前の冥術士になった後も、デルアラスに残っちゃえば?」
「それは……」
正直なところ、レイルにとって、この砂漠の国は随分と馴染んでいた。試練が終われば本国に帰る事になるが、やはり名残惜しい気持ちはある。しかし、今その選択をする時では無かった。そしてファリーダも、それは内心わかっていた。
「まあ、まずは試練をこなすことだね! それから、よーく考えてみなよ。私はとりあえずここに残るの大歓迎だからね!」
「うん! そろそろ、ケーナが来る頃かな?」
10分ほどして、レイルの相棒はいつものように姿を現した。
そして2人は馬に乗り、通い慣れた神殿へ向かうのだった。




