少年少女自発的捜索隊
デルアラス王宮で起こった殺人事件。犯人は未だ逃走中。
ケーナ達は、独断でその犯人を追う事にした。
砂漠馬サンドラブはファリーダの家から、鼻息高らかに走り出した。
「ガファル、レイルが乗るといつも元気が良くなるんだよね」
「分かるの?」
「うん、この子だって心はあるんだから当然よ」
「ふーん、ところでさ、殺された人って誰だったの?」
「えーとね。軍務大臣のバシトラさん。デルアラスの大臣の1人ですごいお偉いさんなんだよ? 武勇も優れてて、国内でも有数の剣士だったんだ。」
「へえ! そんな強い人を殺しちゃうってことは、犯人もただ者じゃないね!」
「そうだよ。王宮に忍び込むだけでも大変なんだ。それを、おそらく2度もこなしている。」
「2度? それじゃあ、この前の侵入事件と同一人物だって思ってるの?」
「うん、王宮や軍の見解はそうなってるね。痕跡を残さないそのやり方は2つとも似ているから。おそらくだけど、相当な冥術使いだね。何せ、被害者の遺体にも傷1つなかったんだ。」
「傷1つなく殺すなんて相当だよ……僕の国でもそんな事が出来る人間は数えるほどしかいないと思う。ちょっと、恐くなってきたかも。」
「もー、レイルだって結構な冥術使えるじゃない?」
「でも、<禁経>使いだったら……」
「大丈夫だよ! 2人いれば大丈夫!」
「そうかなぁ」
「さあ、頑張って私達で犯人捕まえよう!」
2人がまず向かった先は、そのノエリーの家だった。
知識の宝庫である彼女の意見は参考になると思ったからだ。
「おんや、また会いましたなーケーナさん!」
「敬語はよしてよ」
「へいへい……けど、こんなわざわざ時に来るなんて、アンタもしかして犯人捜しでもしようって魂胆かい?」
「御名答。その通りよ。ノエリーの名推理を聞かせてもらおうと思って」
「なるほど、それは名案だわ。まあ、中に入りなよ」
ノエリーの部屋は今日も一段と散らかっていた。
新聞は捨てないのかドンドン部屋の端に積まれている。とても、女性が住んでいる家とは思えないがさつなところだが、当の彼女は全く気にしていないようだった。
「はいっ、コーヒー」
「ありがとうございます。今日はもう3杯目ですよ」
「へぇ、レイルも好きだねぇ。でも、いいんだよ。コーヒーってのはたくさん飲むとダイエットになるって言うからねぇ……まぁ、ケーナも君も全然太ってないからそんなことはどうでもいいだろうね。問題は私だけか」
そう言って、ノエリーは脇腹をつまんだ。
おもったより沢山の肉をつまめてしまったのか、彼女は大きくため息をついた。
「はーーーー。……んで、事件の事だけど。ケーナは新聞にのってる内容以外にも知ってる事あるの?」
「うん」
ケーナは、さっきレイルに話した事と大体同じ事を話した。
ノエリーはコーヒーを待ったり飲みながらそれを聞く。