デルアラスの影
ファリーダからケーナの過去を聞いたレイル。
彼女の支えになりたいと思う気持ちが少しずつ強くなる。
あくる日の朝、ケーナは珍しく来なかった。
レイルは、昨日の話で彼女を支えようと思った矢先にこれだったので、ちょっと肩すかしをくらった感じだ。しょうがないので、居間でファリーダとのんびりコーヒーを飲む。
「ケーナ、大丈夫かな?」
「そうねぇ、あんなニュースがあったからね」
「えっ?」
そういえば、新聞を読んでいなかった。
レイルは、机の上にあったそれを手に取ると一面から眺め見る。
「……これは……」
そこには、こう書かれていた。<デルアラス王宮で謎の殺人事件発生! 犯人は現在逃走中>
「ファリーダさん!」
「そういうことだよ。王宮も街も今はその犯人を警戒してるはずさ。なにせ、人殺しなんだから何しでかすか分かったもんじゃない。厳戒態勢をとるしかないだろうね。レイル、あんたも外に出るのはやめた方が良いよ? 今日は、部屋でゆっくりしてな」
そう言って、褐色の彼女はコーヒーを啜る。
レイルは、最近はケーナと外出することが多かったから、こうやってずっと家にいるのは退屈に思えた。しかし、今日のデルアラスのどこかには殺人犯が潜んでいる。危険と言えば嘘になる。ファリーダの言うとおり犯人が見つかる等ほとぼりが冷めるまでは出歩かないのが正解だろう。
レイルは、あきらめて読書やファリーダとの語らいで一日を過そうと思った。
しかし、そう決めた矢先に、大きな音で扉を開けて入ってきたのがケーナだった。
「レイル、ファリーダ!!」
「ど、どうしたのよ? 」ファリーダはコーヒーを少しこぼしてしまった。
「事件の事聞いてるよね!? 私、犯人捜す事にした!」
「ちょっと!? やめておきなさいって。 ケーナの武勇は認めるけど、相手は人を殺してるんだよ? 下手すれば返り打ちにされるかもしれない」
「国を守るのは、王家の仕事でしょ? 王宮に忍び込んでかつ、あんな悪事を働く奴を野放しにはできないよ。少しでも捜査の協力をしなくちゃ!」
「ケーナ……まさかあなた、1人で犯人追うつもりじゃないでしょうね?」
「まあね、だから挨拶に来たんだよ。これでお別れになるかもしれないからね」
「物騒な事言わないの! レイルだって悲しむよ? ねえ?」
ファリーダはレイルの方を向いた。
レイルは、即座に言葉を返せなかったが、答えはすぐに出た。
「ええと、ケーナがそのつもりなら、僕もついて行くよ!」
「レイル!?」
ケーナは、驚いた顔をしたが、どこか嬉しそうだった。




