プリンセス・ケーナ
ケーナの言葉を思い出したレイル。
それは、何か寂しさを感じるものだった。
「ファリーダさん」
「どうしたの、レイル? 何だか思いつめたような顔をして。言ってみなよ、全部聞いてあげるし、知ってる事なら話してあげる」
「ケーナの事、教えてくれませんか? ケーナの家族の事とか……」
「ああ、そう言う事か。ケーナのことがもっと知りたくなたんだね。いいよ、話してあげる。ケーナには内緒だよ?」
ファリーダは、コーヒーをスイッと飲むとレイルの方をじっとみた。準備は良いね? というような顔だった。
「ケーナは王家の者だって事はレイルもわかってるでしょ? あの子はね、何と、国王の弟の娘なんだよ。」
「そんなに、すごいんだ。」
「そう、あの子は、お姫様なんだよ。じゃじゃ馬やってるけど、本当はお上品なお姫様なのさ。」
「お姫様……そんな偉い人が僕みたいな人間を良くしてくれるなんて、何だかやっぱり恐れ多いかも」
「気にする事無いって! ケーナはあんたの事気に入ってるんだからさ」
「……」
「だけどさ、あの子もあの子なりに苦労してるんだよ。王宮の生活ってのはこちらの思う程幸せなものじゃない。さまざまな事が制約されるし、窮屈なんだろうよ。それに、あの子にとってあそこには信頼できる人物が多くないみたいなんだ」
「そうなんですか……」
「ちょっと理由もあってね。実は、あの子のお母さんが、男と夜逃げしちゃったんだよ」
「えっ!?」
「あの子が随分小さい時にね。結局、ケーナのお父さんは再婚したんだけど、王宮での評判は悪いものになちゃってね。あの子も散々いじめられたらしいよ。」
お母さんが自分を捨ててどこかにいってしまった。
レイルには両親がいないが、ケーナのショックが小さくない事は想像できた。母親に裏切られた事、王宮内での人間関係、それらがあの言葉を発した背景にあるのだろう。
「ケーナは、寂しいんだろうね。だから、私やレイルのところに来るんだ」
「僕達は、ケーナの支えになってるんですかね」
「うん、少なくともケーナはそう思ってる。だから、私もその気持ちを大事にしたいんだ。レイルだってそうだろう?」
「はい」
レイルははっきりと答えた。
ケーナの悲しみ、寂しさは、まだ計り知れないものがあったが、支えになりたいと言う気持ちが彼の心の中に強く芽生え始めていた。




