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第33話 ピンクのドア・チート

Side:タイセイ


 異世界での無料配布でスマイル100円キャンペーン発動。

 スキル無しの持ち込む日本製品は、チャック付きポリ袋、使い捨て手袋、コンビニ袋、コピー用紙。

 判子を作ったので、孤児院の子供達が内職でぺったんぺったん押す。


 100均のチャック付きポリ袋は20枚から10枚入り。

 他に比べればコスパは悪いが、繰り返し使えるので、スマイル100円のコスパは悪くないと思う。


 ホームセンターの使い捨て手袋は100枚入りで198円。

 これのコスパはかなり良い。


 100均のコンビニ袋は55枚から22枚入り。

 22枚でもコスパは良い。


 100均のコピー用紙は100枚入り。

 コスパ的には最強。

 でもスマイル100円が貰えるかは微妙。


 統計が取れれば良いんだが、後でアンケートしてみよう。


「商人タイセイの無料配布だよ!」


 配布係の孤児が配る。


「ちぇっ、炊き出しだと思ったのに。がっくりだよ」


 そう言ったのは浮浪児。

 そういう意見があるのは知ってたから、飴をたくさん用意しておいた。


「飴あげるね。タイセイからの施しだよ」

「なんだ、あるんじゃないか。でも飴じゃそんなに腹は膨れない」


 よし、今日は初日だから奮発しよう。


「【スマイル100円】、出でよパンの耳」


 10円なのはありがたい。

 神様も分かってるな。

 スキルはたぶん体力回復系。

 安いから効果は低いだろうけど、腹は膨れるに違いない。


「持っていけよ」

「こんなにたくさん! パンの端だ! 俺、この部分が大好き!」


――――――――――――――――――――――――

スマイル100円、頂きました。

――――――――――――――――――――――――


 10円が100円になれば、利益率は高いな。

 飢饉の村とか回りたい気分だ。

 やっちゃえよと悪魔が囁く、いや天使も囁いた。

 人助けだものな。

 たとえスマイル100円が貰えなくても、善行には違いない。


 勇者として起つ時が来たようだ。

 前は無駄遣いになるのが怖くて買えなかった物がいまなら買える。


「お兄さんはピンクのドアを買います」


 誰も聞いていない場所で宣言。

 某漫画のアイテムなんだよ。

 どんな場所にも行けるピンクのドア。


 持ってけ1980円。

 おお、高さは20センチぐらい。

 玩具だから小さいけど、頼む転移が可能であってくれ。


 一番近い飢饉の村と念じてドアを開ける。


「そりゃないぜ」


 ドアの向こうに今いる場所とは別の景色が見えるけど、転移はしない。

 だが、これでも良いかも。


「タイセイが食料を持ってきたぞ!!!」


 俺は叫んだ。

 ドアの向こうにガリガリに痩せた人が見えた。

 パンの耳が入ったビニール袋を玩具のピンクのドアに押し込む。


「さあ、食え。タイセイのおごりだ」

「この匂いはパンだ。なんという奇跡。ピンクのドアの向こうは神様の国か?」

「神様ではない。2代目勇者タイセイだ! ちなみにこの村の名前は?」

「エンユル村だ」


 よし、スマホでメモった。

 これで何時でもここに差し入れできる。


 ガルー国の刺客はもう恐れない。

 来るなら来い。

 返り討ちだ。


――――――――――――――――――――――――

スマイル100円、頂きました。

――――――――――――――――――――――――


 スマイル100円の嵐。

 パンの耳を押し込みまくる。

 たまに2代目勇者タイセイの宣伝も忘れない。


 これはウハウハだ。

 異世界中の飢饉の村にパンの耳を配ろう。

 ちなみに、ピンクのドアは日本には繋がらなかった。

 説明書を読むと10光年以内しか転移できませんとある。

 地球は10光年より離れているらしい。


Side:飢饉の村人


 奇跡が起こった。

 なんと飢饉の村に勇者様の助けが来た。

 届けられたのは勇者様の声とパンの端だけだが、十分だ。


 おお、神よ。

 勇者様を遣わして頂いてありがとうございます。

 勇者タイセイ、この名前は忘れない。


 パンの耳を水につけて、ぐにゃぐにゃにする。

 動けなくなった我が子の口に運んだ。


「美味しい。もっと」

「たくさんあるからゆっくり食え」


 涙で前が見えない。

 でも笑ってる。

 子供も笑っている。


 パンの端は毎日届いた。

 腹を下した奴もいる。


「勇者様、パンを食べると腹を下す奴がいるんです。水でふにゃふにゃにしても駄目です」

「そうか。ならば砂糖と塩を送るから、水に溶かして、飲め。勇者水だ。理想の調合比率はこれだ」


 腹を壊していた奴は勇者水で回復した。

 薬師のばあ様の指示で、かなり弱っている奴はかなり薄くして、元気になっていくと濃くして、勇者様のレシピに近づけていった。

 薬師のばあ様が元気で良かった。


 村長の薬師は最後の砦発言は英断だった。


「皆の衆、パンの耳祭りじゃ! 勇者様によれば、このパンの端はパンの耳って名前らしい! 勇者水は行き渡ったか?!」

「「「「「おう!」」」」」


「勇者タイセイに乾杯!」

「「「「「勇者タイセイに乾杯!」」」」」


 パンの耳を食って、勇者水を飲む。

 勇者水は良いな。

 子供も飲める。

 腹を下した時に飲むと、回復が早い。

 おっと、食事中にする話じゃないな。


 畑仕事の後に飲む勇者水はなぜか美味い。

 思わず笑顔になる。

 勇者様に言ったら、これからもよろしくと言われた。

 腰の低い勇者様だ。

 糞貴族とは比べ物にならない。

 あいつらは飢饉なのに食糧庫を開けなかった。


 いつか、勇者様が魔王討伐軍を結成するときは俺も参加する。

 何があってもだ。


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