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第31話 神候補とシチュー・チート

Side:タイセイ


 日本の街角。


「花粉症の神様ですか?」


 女子高生の集団のひとりに話し掛けられた。

 いや、疫病の神様じゃないんだけど。

 疫病の逆の神様って何だっけ?


「神ではない。道祖神みたいな奴?」

「えっと、病気を追い払うってことですか?」

「どちらかと言えば、笑顔と商売の神に近い」


「恵美、なんでも良いっしょ。早く買ったら」

「お小遣い、かき集めた1万円だから」


 スーツ姿の男達に囲まれた。


「はいはい、薬事法違反で現行犯逮捕」


 くそっ、刑事か。

 いよいよ来たか。


 俺は桃にチートピーラーを一当、一瞬で皮が剥けたそれを食った。

 ふぅ、逃げられたけど、次は逮捕状?

 テレビに容疑者として、顔写真が載るかな。

 糞親父は情報提供料、欲しさに、警察にタレこむかもな。


 どちらにしてもやばい。

 やっていることは薬の転売だ。

 許可が要る。

 薬局の許可なんて簡単には下りない。


 参ったな。

 最後にあの女子高生にだけ薬をあげよう。

 それでしばらく大人しくしておくか。


 一時間後。

 まだいるかな。

 おお、まだいた。


「びっくり、いきなり消えるんだもの」

「薬を渡したくて。ただで良いよ」

「あの、私、SNSに警察が神様を逮捕に来た話を上げたんです。そうしたら、凄い反響で、ある人が助けないといけないって言い出して」


「それで」

「署名活動しようって人いて。弁護士って人は無料で弁護を引き受けるって。他にも薬局やっているから、秘密裡にうちに薬を卸してほしいとか。もういろいろ。みんなあなたの薬で救われたって。ありがとうって」


 売りまくったからな。

 救われたって人はかなりの数だ。


「私、あなたの巫女になる」

「ええっ、ひょっとして、神主の娘?」


「ええ、巫女衣装を着たことはないけど」

「分かった。やれることは全てやってくれ。薬はサービス。普段は別世界にいるから、電話は繋がらない。こっちから連絡するよ」


 薬を渡して、電話番号を交換。

 桃を食べて異世界に戻った。


 異世界なのにスマホに着信。

 番号はさっきの女子高生の恵美ちゃんだ。

 ああ、このスマホはスキルで買ったスマホだった。

 異世界でも通じるんだな。


「もしもし、弁護士さんによれば逮捕状は出てないそうです。出頭して事情を話せば、不起訴処分になるかも知れないと言ってます」

「出頭してみるよ」


「薬局の店主さんという方は反社の方でした。弁護士さんが調べてくれて、良かったです。弁護士さんの方は、ホームページもあって、弁護士会に名前がありましたので、大丈夫だと思います」

「ありがとう。しっかりしてるね」


「ええ、よく言われます。弁護士さんの伝手で製薬会社を紹介しても良いそうです」

「それはありがたいな」


 警察の聴取は簡単に済んだ。

 健康被害がないのと、神様を逮捕して裁判になったらどうするか頭を抱えていたらしい。

 こっぴどく怒られたけどね。


 ところで、神を騙っても良いのかな。

 匂わせただけで、神だと肯定はしてないので天罰はないと思いたい。


 スキルで買った薬を製薬会社に渡したけど、分析してもたぶん無駄だろうな。

 どうすんのかな。

 まあ、臨床研究とか何か抜け道があるんだろうけど。

 金はたんまり入ったから問題はないけど。


 ブラック企業の同僚から、電話があった。

 恵美ちゃんから電話番号を聞いたらしい。

 俺は会社は首になってて、行方不明者届は同僚が出してくれてたみたい。

 俺が銀行で金を下げたので、行方不明者届は取り下げられたけど。

 ATMのカメラ映像の顔が俺だからね。


 部屋の荷物も預かっててくれてて助かったよ。

 無事、回収できた。


 同僚には神様になるための修行中だと言っておいた。

 先代の勇者が神になったのだから、あながち間違いではないよな。

 そのうち、不思議な品物をお礼に持って行くよと同僚に言って別れた。


Side:砦の兵士


 今日の夕飯のメニューはシチューだ。

 聞いたことのない料理だ。

 商人が差し入れてくれたらしい。

 信用のおける貴族の紹介なので、毒ではないだろう。

 料理人は味見をきっとしてるはず。

 匂いはもう抜群に美味そう。

 我慢できない。

 一番に食い始めた。


――――――――――――――――――――――――

全能力値+1。

――――――――――――――――――――――――


「何だって?!」


 なんと、食べると、全能力値+1。

 俺が一番だと思ったが、他のみんなも匂いに釣られて完食してる。

 毒だって構わないと思ったらしい。

 俺と同じ驚きの声が、同時に同僚の兵士達から上がって、食堂が騒がしくなる。


 こんなの毎日食ったら、全員が英雄様だ。

 上官はこれをよく独り占めするとか考えなかったよな。

 俺なら、全部持って逃げる。


 青い顔の上官が神官を連れて食堂に来た。


「みなさん、この不思議な食べ物は、タイセイ様の差し入れです」


 神官は年季の入った剣をぶら下げている。

 やばい、勇者教の神官だ。

 そりゃ、上官は横流しや、持ち逃げはしないよな。

 勇者教に睨まれたら、死刑と一緒だ。

 悪人は必ず斬るが教義だからな。


 ということは、この食べ物は勇者教が商人に命じて開発したんだろう。

 砦に差し入れしたのは、試験も兼ねてるのか。

 実験台だと思いたくはない。


「安心して下さい。村人と私達が1ヶ月食べても、大丈夫でした」


 くっ、心を読まれた。

 神官なら嘘はつかない。

 とくに勇者教ならな。

 問題はないようだ。


 それにしても美味い。

 これなら、多少毒でも食いたいと思う。


 それから、毎日、シチューが出た。

 毎回、味が違う。

 具も違う。

 俺は赤茶色のシチューが好きだな。

 肉もたっぷりだ。

 モンスターの肉は美味いからな。


 大体の種類分けとして、白色と赤茶色と白っぽい黄色がある。

 同じ色でも微妙に味が違う。

 みんな好みの味があるようだ。


 自分の好みの味が出た時には大喜び。

 砦の兵士なんて、食うことぐらいしか楽しみがないからな。

 このシチューを1年間も食えば、貴族の領地の隊長ぐらい務まるかも。

 先が楽しみだ。

 シチュー美味くて飽きないのはみんな一緒。

 たぶん誰も、シチューが出る限りはここを辞めない。

 賭けたって良い。


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