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第25話 クリップ・チート

Side:タイセイ

 紙の需要が生まれたので、スキルでクリップを物色。

 色んなのがあるんだな。

 その中に懐かしい物を発見。


 それは、プラスチックで出来たゼムクリップだ。

 140円で70個ぐらい入っている至って普通のクリップだ。


 何が懐かしいかと言えば、子供の頃にこれでバッタを作ったのだ。

 作り方は簡単。

 先端の部分を切り取って、足を作る。

 クリップを二つ組み合わせても良いし、一つでもいいが、足を曲げてバネのようにすると。

 少し押して離すとぴょんと飛ぶ。


 俺達はクリップバッタと呼んでいた。

 1袋あれば孤児院の子供、全員に行き渡る。

 よし、買おう。


 ゼムクリップのスキルは意識しないと束ねた紙を外せないだ。

 危ないスキルでなくて良かった。


「みんな、集まって」


 俺は孤児院の子供を集めた。


「なになに?」

「ここを切って折り曲げて、テーブルの上に置く。そして押して離すと」


 クリップバッタがノミの様に跳ねた。


「凄い、やらして」

「俺が先だよ」

「私にも頂戴」


――――――――――――――――――――――――

スマイル100円、頂きました。

――――――――――――――――――――――――


 やって見せただけで、笑顔。

 孤児は玩具をめったに買って貰えないのかな。

 目のキラキラと食いつきが凄い。


「喧嘩しなくても人数分あるよ」


――――――――――――――――――――――――

スマイル100円、頂きました。

――――――――――――――――――――――――


 配った時にも子供達からスマイル100円をたんまり頂いた。

 こんな物でも大量に稼げるんだな。

 まあ、最初は珍しいってのもあるんだろうけど。


 子供達は飛距離を競争し始めた。


「俺の方が絶対遠くに跳んだ」

「いや俺のだ」


「喧嘩するなよ。仲良くな」


 100円ショップのメジャーを出してやる。


「これ、数字が読めない」

「ああそうか、アラビア数字だもんな」

「私、読めるよ。これって勇者数字でしょ。勇者様が使っていたっていう」


 勇者数字いわゆるアラビア数字は、一般人も知ってるらしい。

 漢字とかより簡単だからな。

 数字だから、10文字しかない。


「あれっ、メジャーを当てたら数字が頭に浮かんだ」

「魔法の道具なのね」

「採寸するのに便利」


 メジャーのスキルは長さを計測か。

 大したスキルではないな。

 メジャーの目盛りを読めばスキルなど要らない。

 数字が読めない人には便利だけど。


 しかし、困った。

 ちょっと、やばいな。

 今まで出した商品のパッケージに勇者数字や勇者文字が沢山、印字してあるものな。

 俺が勇者だと疑われるが、今更か。

 こんなの気にしてたら、スマイル100円は貰えない。


 孤児院ではだいぶ儲けさせてもらってる。

 こんな上客を見逃す手はない。

 油性マーカーで、文字を塗り潰せば解決なのは知ってるけど。

 ぶっちゃけめんどくさい。

 それに商品として見映えが悪い。

 どうしてもの時以外はやりたくない。

 さて、言い訳だな。


「勇者にあやかって商品を作っているんだよ」

「きっと勇者教の人が作ったのね」


 上手く言い訳できた。

 ふう、俺の事がばれずに済んだ。


Side:孤児院の男の子


 孤児院でタイセイが俺達を集め始めた。

 何が始まるんだろう。

 美味しい物かな。

 勉強かな。


 タイセイが青い色の変な細工物をさらに細工する。

 虫みたいなのが出来上がり、背中を押すとぴょんと跳んだ。

 うお、面白れぇ。


 くれるのか。

 俺は孤児院の中でこのクリップバッタという物で遊びまくった。


 街に行って自慢したいな。

 子供達を遊び場で探す。

 居た居た。


「おい、凄い物を見せてやる。ここをこうやって」

「うおー、跳んだ」

「俺にも貸して」


 街の子供達と一緒に遊ぶ。

 そして。


 ポキっとクリップバッタの足が折れた。


「うわっ、足が折れた」

「俺のせいじゃないぞ。寿命だよ。寿命」

「俺のクリップバッタを返して」


「知ーらないっと」

「あっ」


 街の子供達が逃げて行く。

 ぐすん、ちくしょう。


 顔見知りの職人の所に行き(にかわ)を少し分けてもらう。

 クリップバッタの折れた足に付けたけど、グラグラしてる。

 跳べよ。

 願いを込めてクリップバッタの背中を押す。

 クリップバッタは跳ばない。


 翼を怪我して、孤児院のみんなで看病した小鳥を思い出した。

 可愛がって看病したけど、餌を食べてくれなくて結局死んだ。

 その時の光景を思い出す。


 うわーん。


 孤児院に泣いて帰ると。


「どうした虐められたのか」


 タイセイが声を掛けてくる。


「ううん、俺のクリップバッタの足が折れたんだ」

「なんだそんな事か。新しいのをやるからもう一回作れよ」


 そう言ってタイセイは新しいクリップをくれた。

 やった。

 2代目クリップバッタ、発進。


 そうだ。

 初代クリップバッタを孤児院の庭の隅に埋めて、握り拳ほどの墓石を建てた。

 小鳥が死んだ時も、みんなでお墓を建てて、お葬式したっけ。


 今までありがとう。

 君の雄姿は忘れない。


 膝をついて、拝んでいるとタイセイがやって来た。


「何だ、壊れたクリップバッタの墓を作っていたのか」

「うん」

「日本人が無くしかけている心だな。物を大切に思うのはいい事だ」


 タイセイは手を合わせた後に、そうしみじみとした感じで言った。

 タイセイは変な奴だ。


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