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第13話 勇者教の神官

Side:タイセイ


 朝だ。

 疲れが取れている朝。

 スキルで出した食品のおかげか。

 それともネクタイの効果か。


 日本での同僚はどうしているだろうな。

 俺がいなくなってパニックに違いない。

 うちの会社はブラックなんだけど、ブラックにしてはわりとまとも。

 企業理念がウインウインだ。

 激務に見合う高い給料。

 取引先に対しては価格は高いが、抜群に短い納期と、即座のトラブル対応。

 トラブル対応は深夜だろうが、休日だろうが、お構いなし。


 取引先から文句が出たことはない。

 出た文句の料金以外の項目は改善する。

 かなり無茶な要求にも応える。


 給料の高さのモチベーションで、俺はやれていた。

 母が病気で、治療代を稼がないといけないってのもあったが。

 その母親も去年亡くなった。


 糞父親は母が病気になって、高額な医療費にびびって逃げた。

 調べたら、高額医療は補助も出る。

 難病に対する補助もな。

 会社の上司が良い人で、そういうのを教えてくれた。


 最近は金が貯まったら、会社を辞めて、田舎で暮らそうとか考えてた。

 いま、夢が叶ったと言っても良いかもな。


 ただ、同僚に迷惑を掛けない形で辞めたかった。

 新入社員とかが、辞表も出さずに行方不明なんてのは良くあるがな。

 それと、体を壊す奴。

 3人、過労死してて、会社の仏壇に遺影が飾ってある。

 社長は毎朝、お線香をあげてるらしい。

 後悔の念があるなら、仕事のシステムを改善しろと言いたいが、後悔の念なんてないんだろうな。


 噂ではこの3人が会社を守っていると社長は信じているらしい。

 線香という給料で、死んだ後も働けと言っているような気がする。

 みんなもそう思っているだろうが、誰も社長には言わない。


 頭の中に警報が鳴り響いた。

 くそっ、また盗賊かよ。

 金もそれなりに貯まっている。

 まあ、楽勝だろう。


 外に出ると、男はみんな農具を片手に戦闘態勢。


「みんな、侵入者じゃない! 勇者教の神官様だ!」


 村人が走って報せに来た。

 神官なら酷いことにはならないだろう。

 どれっ、念のため見に行くか。


 勇者教の神官は女性だった。

 女聖騎士って感じだ。

 白銀の鎧がキラキラ輝いて眩しい。


 背中には大剣を背負っている。

 女性神官と俺の視線が合った途端、女性神官は一瞬で俺の目の前にいた。

 おお、縮地って奴か。


 そして、胸ぐらを掴まれて、持ち上げられた。


「ぐ、ぐるじい……」

「すまん。話を聞くまでは悪とは断じることはできん」


 俺は下ろされた。


「ひゅう、ひゅう、ぷはぁ。ちょっと、何だってんだ?」

「決まってるだろ。ネクタイだ。これは勇者様にだけ許されたアクセサリーなんだぞ」

「勇者がそう言ったのか?」

「勇者様だ! 死にたいらしいな!」


「勇者様がそうおっしゃったのか?」

「うーん……。あれっ? どうだったかな? ええと?」

「言わない方に金貨1万枚を賭けても良いぞ」

「神官は賭けなどしない。とくに勇者様に対しての事項ではな」

「負けを認めるのか?」


「うるさい! とにかくネクタイは勇者様のアクセサリーなのだ! 不敬の極みだ!」

「このネクタイが勇者様の世界の物だと言ってもか? 勇者様は許可してくれたぞ」


 俺はネクタイをして、よろしい。

 そう俺は俺自身を許可する。

 嘘は言ってない。


「嘘をついてたら、舌を切り落としてくれる。謝るなら今のうちだ」

「どうやって、証明するんだ?」

「物品鑑定スキルに決まっておろう」

「そのスキル持ちはどこに?」


「街だな。鑑定師がいるはずだ。貴様、街へ一緒に来い」

「別に良いけど、少し待ってくれ。心配ごとがあるんだ」


 盗賊の件を話した。


「それは悪だな。斬らねばならん。広範囲をカバーするには、騎士団が必要だ。呼び寄せる必要がある。言っておくが、逃げるなよ。私はサクラだ。貴様、名前は?」


 サクラの名前はたぶん勇者が言ったのだな。

 もう一度、桜を見てみたいとか、勇者が言ったのだろう。

 カレールーよりましな名前だが。

 カレールーだったら、大爆笑してた。


「ぷぷっ。タイセイ」

「なぜ笑う!」


「カレールーだったら、大爆笑だと思って」

「それを勇者教の信者には言うなよ」


「もしかしているのか?」

「ああ。カレーとルーとカレールーはいるぞ」

「わはははっ、ぷぷっ、ひぃ、いるのかよ。こりゃたまらん。げほっげほっ、すまん。笑ったら、いけないよな。うんうん」


 ルーってのは地球にもたくさんいそうだし、カレーさんもいるだろうな。

 カレールーは分からんが、地球は広いから一人ぐらいいるかもな。


「何が可笑しい? 変な名前ではないだろ」

「そうだな」


 サクラとパーティを組むことになりそうだ。

 よく見ると美人だ。

 髪の毛の色がたしかにサクラ色。

 ピンクは淫乱って定説があるけどな。

 そんなことを言ったら、ぶっ殺されそうだ。

 黙っておこう。


 カレー関係の名前の人は、黄土色系とか茶色系の髪の毛なのかな。

 それなら、さらに笑ってしまいそう。


 笑ったら悪いと思っているが、名付けの理由が勇者のカレー食いたいだからな。

 俺もカレーは好きだよ。

 たまに無性に食べたくなる。

 でも、ひとの名前としてはな。


 桜餅が食いたいだったら、サクラでも大爆笑だったかもな。

 桜餅も良いよな。

 葉っぱの塩味が、良いんだよな。

 食いたくなってきた。

 あとで、サクラにも桜餅を食わせてやろう。


 俺が勇者だと教えても問題なくなったらな。


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