????/??/?? 口喧嘩
毛布を配り始めてから、太陽は少しづつその位置を西の方に変えていき、もうしばらくすれば、完全にその姿を見ることは叶わなくなるだろう。森の中は今後ますます寒くなるであろうという予測は簡単にできた。たった一枚の毛布であっても、あるとないとではだいぶ違うものである。
毛布を頭からすっぽりとかぶった子供たちはこちらとあちら、無言で交互に顔を向ける。初めはおそらく私という存在に対しての不安が先行し、今ではそれよりも仲間たちの目が気になるというところか。毛布をもらっていない子供たちはアガートラムからの言葉を聞いて、どうしたらいいのか分からないという表情を浮かべてこちらを見ていた。
「欲しいなら、並べよ」
「そうよ? 意地張らないで、並びなさいよ」
「二人とも、そんな言い方は」
私がなんとするべきか答えに窮していると、セン達がそれを察してか声をかけてきた。言っている内容は正論で間違いない。毛布は並んだ子供に配るという前提であるから並べ解決するのだが、センとアールの素っ気ないものの言い方は、意地を張る子供に対しては最悪の対応の一つであろう。
「う、うるさい! いらない! そんなな奴からもらうものなんか要らないよ!」
「そ、そうだ! それは俺たちを騙す罠かもしれないんだぞ!」
「俺たちは、騙されないぞ!」
激烈な形で反論が返された。私の方にすがりつくように向けられていた視線は、諭すセン達三人と毛布を受け取った別の子供たちの列に向けられ、毛布を受け取っていない子供たち五人の意志は一つに強く結びついて、取り付く島もない状態に移行することになった。
「何だよ、その言い方は? 寒いんだろ? いい加減に」
「うるせー! もともと、そうだ! セン、お前が俺たちをここに連れてきたんだぞ! お前が悪い!」
「そうだ! センが悪いんだ!」
「はぁ? ついて来るのを決めたのはお前らだろ? 俺がいつ無理やり連れてきた? あん?」
「セン、落ち着いて」
「うるさい! アールだって……」
「……!」
「いや、ちょっと待って落ち着いて、冷静になって」
現状、何を言っても聞いてもらうことはできず、激しい拒絶の言葉が返された。五人は寒さを紛らわすためなのか、よく口を動かす。とにかくあらん限りの言葉で向けられた言葉に反論を繰り返し、すでに私が知らない生活態度などの指摘がされ始め、私がそこに入ることはできそうになかった。
「……、とりあえず残りの子供たちの毛布を折りたたんでここに置いてくれ」
―了解しました。
再び、蚊帳の外に置かれた私は隣にいるアガートラムにそう指示を伝え、その激しい攻撃、いや、口撃、いや、それよりも、口劇というべきか、その幕が引けるまで観客席で待機することになった。




