白の遺跡 準備
ロックの言葉に対してだけでなく、他の全員をまとめて突き放す言葉をセンは口にした。
「セン、落ち着いてくれ」
「そうだよ、落ち着けよ」
「セン!」
センの様子に黙っていた他の者たちも口を開き始めた。日ごろから彼とつるむ悪友たちは、見境ない癇癪を引き起こしている彼を心配して心からの言葉を発した。がしかし、センはその言葉に含まれていない思いを受け取ってしまった。
今のセンは、心配する言葉に嘲笑の含みを、自制を促す言葉に無知を笑う影を見た。仲間、友人だと思っている連中にそんな言葉を浴びせられ、センは顔から火が出るように真っ赤した。言葉をかける全員がヤギの角、蝙蝠の羽を持っているように見えた。
「うるさい、うるさい、うるさい!」
そして、センは仲間の声を無視し、そのまま遺跡の奥に走り込んでいった。あっという間の出来事に、誰も彼を止めることはできなかった。センが奥に進むと、明かりはそれに合わせて順々に奥を照らしていく。
「セン! 待て! 行くな! クソ!」
「待って!」
ロックがセンの突然の行動に、ポカンとしたのは一瞬であった。次の瞬間に、彼はセンの名前を叫んで遺跡の中に駆けこもうとして、アールがそれを強く止めた。
「アール、センが、」
「落ち着いて、私も一緒に行く。誰か、町から人を呼んできてちょうだい。」
「アール? なんで町に?」
「もし、センに何かあったらどうするの? 私たちでは何もできない。大人を呼んできてもらわないと」
「でも、大人に呼んだらバレちゃうし、」
「怪我していたらどうするの! 何かあったら、」
「わ、分かったよ」
アールの一喝は浮足立った一行を収めることに成功した。ガラスの扉の件からずっと続く不安、未知なる恐怖を抱ていた一行は彼女の言葉で多少、冷静さを取り戻すことが出来た。
彼女はこの計画に初めから積極的に参加を決めていたわけではない。どちらかといえば、反対者の立ち位置であったことから、他の者達よりも強く遺跡に対して警戒していた。何が起きるのか分からない場所に、何も考えずに向かうことの危険性を彼女は誰よりも大きく見積もっていた
最悪を考えて人を呼ぶ、大人に助けを求めるという選択がスムーズに出てきたのは彼女が冷静であったから、それが最善であると強く信じた彼女の言葉に誰もが反論はなかった。
彼女はするべきことを考え、全員に役割を振った。一番危険である遺跡の中に消えたセンの捜索に自分とロックがあたり、残った者達は半分を町に助けを呼ぶために戻し、残り半分を何かに備えて入り口の前に待機させた。
そこまで準備してから、ロックと一緒にアールは遺跡の中に足を踏み込んだ。




