第七十九話『思わぬ拾い物と、思わぬ出会い』
中級魔族マロスを倒した俺たち(と言ってもローシェ無双だったけど)はまだ地下30階にいた。
何故ならルゥがとてもいい物を見つけてくれたからだ。
恐らくマロスが倒したのであろう地下30階ボス、ウィザードロックのドロップアイテムが、なんとそのまま放置されていたのである。
邪魔だと思い蹴り飛ばしでもしたのか、壁際に散乱していたそれらをルゥが目敏く見つけて「ご主人様……」と言って指を差して教えてくれた。
グッジョブ、ルゥ! キミみたいな器量の良い子を奴隷に持ってご主人様は嬉しいよ!
ルゥが自分に自信を持ったら奴隷から解放してあげようと思っていたけど、もうずっと俺の奴隷で居て欲しい。
思わず手が伸びてルゥの頭をナデナデしてしまったが、ルゥは嫌がらずに受け入れてくれて良かった……。
ルゥに手を払いのけられたらさすがに立ち直れなかったと思う。
気持ちよさそうに目を細めるルゥを愛でながらも、ボスのドロップアイテムを確認していく俺。
ドロップアイテムは三つあった。
一つ目は瓶に入った薬っぽい何かだ。
俺の『対物鑑定スキル』で見てみると《エクスポーション》と出ていた。スキルレベルが低いのでアイテム名までしか分からないが、エクスポーションというからにはポーション系の上位と考えていいだろう。
ポーション系は自分のレベルが上がるほどに効きづらくなっていく傾向があるので、これは嬉しい拾い物かもしれない。いざという時に一気に回復したい状況で役に立ってくれるに違いない。
二つ目は植物の種みたいな物だった。
鑑定で見てみると《防御の種》と出ている。
俺はちょっと心が躍った。
何故ならこのステータス系の《種》は、食べることで自分のステータスを1レベル分ほど底上げしてくれるレアアイテムなのだ。
食べるだけでステータスが上がるので、もちろん市場にはほとんど出回らないし、出回ったとしても高価ですぐに上級冒険者たちに買い占められてしまうらしい。
ちなみにこれは《防御の種》なので、ステータスの防御値を1レベル分ほど上げてくれるということだ。
しかしこれは地下30階ボスを倒した中級魔族を倒したローシェが貰うべきものだろう。
そう思いローシェにそっと差し出す俺だったが、
「それは竜騎士様が使ってください」
そのように言われた。
え、いいの?
ちなみに俺は日本にいた頃のMMORPGでもソロプレイヤーでやっていてパーティを組んだことが無いのでこういう時のルールは知らないが、それでもこれはローシェに権利があることくらいは分かる。
が、
「私の使命は竜王様にお仕えし、竜王様をお守りすることです。つまり竜王様にとって一番良いことは、竜騎士であるあなた様が強くなられることなのです。何故ならあなた様は竜王様のパートナーなのですから」
………。
理屈は分からないでもないが、俺はクルーエルと竜契約を結んでいないんだけど……。
本当にいいのだろうか?
ローシェが重ねて「あなた様が使ってください」と言ってきたので、俺はありがたく使わせてもらうことにした。
この場ですぐに食べてみる。
すると腹の辺りが熱くなって、何だか体が硬くなった気がした。
まあそれはさすがに気のせいかもしれないが、生物鑑定スキルで自分を鑑定してみたら確かに防御力が上がっている。
食べるだけでステータスが上がるとか、とんだチートアイテムだな……。
将来金がいっぱい溜まったら買い占めたいアイテムだが、滅多にドロップしない上に市場にもほぼ出回らないみたいだし、素直に経験値を溜めてレベルアップした方が早いか……。
まあいいや。
取りあえずローシェに頭を下げつつ、俺は三つ目のドロップアイテムを見た。
それは盾だった。盾の表面には女性の絵が彫ってある。
見た目は石造りのようだが、手に持ってみると不思議な力を感じた。
どうやら単なる石の盾ではないようだが……。
「ほう? それは中々良い物じゃな」
クルーエルがローシェの背中から顔を出してそのようなことを言った。
良い物?
それは具体的にどんな感じなのか……と思ったら、即行で飽きたのかクルーエルの顔がローシェの背中に戻っていっても、そもそと居心地の良いポジションを探し始めた。
このやろー。
まあ、だったら訊けばいいんじゃないって感じですよね。でもご存知の通り喋れない訳で、だったら俺が悪いじゃんという結論に達しましたすいません。
仕方なく俺のしがない『対物鑑定スキル』で見てみると、アイテム名が《メデューサの盾》と出ていた。
ん? メデューサってあのメデューサ?
俺の元いた世界だと目が合ったら石にされる定番の生物だけど、こっちだとどうなんだろ……?
もし同じあのメデューサだとしたら、それ関連の力を持った盾ってこと?
………。
俺の『対物鑑定スキル』のレベルだと分かんないや。
もっとレベルを上げないとダメだな。
ちなみにこの中で盾を使うのは俺くらいしかいないから、これも俺が貰ってもいいのだろうかと思って周りを見てみると、この盾に興味ありそうな目をしている者は誰もいなかった。
……うーん、何だか申し訳ないな。
と思いつつ腕に嵌めてみる俺。
おお……ジャストフィット。
ずっと使っていた青銅の盾は既にぼろぼろだったし、これは嬉しい拾い物かも。
しかも青銅の盾よりずっと軽い。石の重さなどまるで感じない。
これは間違いなく何かしら魔法のかかった盾だろうな。恐らく硬さも見た目以上のものなのだろう。
テンション上がるううううううううう!!
やはりレアアイテムを手に入れた時の嬉しさはヤバいな。
早くこの盾を使いたい。
多分俺はわざとこの盾で敵の攻撃を受け止めにいく。
それが俺の悪いところ。
さて、じゃあそろそろ下の階へ行こうか。
目線で皆を促し、下の階へ続く通路へと足を進めようとした時だった。
――ゾッとするほど暗くて、それでいて明るい声が上から降ってくる。
「へ~。あなたたちがマロスを倒したんだ~」
俺は急いで上を仰ぎ見た。
するといつの間にそこにいたのか、一人の女性が宙に浮いていた。




