過去
時間置いてしまいすいませんでした。
目が覚める。
いつもならもう一度寝ようとするところだが今日はそうもいかない。
なぜなら今日はアリスと買い物…いやデートの約束があるのだ。そんなのんびりしてはいられない。
そして朝食を作るためベッドから降りる。
「ハヤト遅いわよ!まったく…女の子を待たせるなんて」
あれ?アリスってこんなに早く起きれるんだ?なんかちょっと意外だな。
「ごめんごめん、すぐに朝食作るから」
「いいわよ、街で食べましょ?」
「そうだな…じゃあ着替えてくるよ」
まぁ、着替えると言っても制服だが…
アリスも制服だったしなによりこれは動きやすい。訓練でも使えるだけはある。
「アリス、準備できたぞ」
「うん!じゃあ行きましょ!」
「そんなに楽しみだったか?」
「べ、べつに?昨日から楽しみにしてたわけじゃないわよ!」
そんなに楽しみだったのか。ならばその期待にこたえてやらないといけない。
そんなことを話しながら街へ繋がる魔法陣へ足を踏み入れる。
今日はいろいろな物を買った。
まずは朝食に軽いものをとり、ベッドを買いに行く。なんでもよかったのだがアリスが選んだ少し高めのベッドにした。
お金の心配をされたが学院に来る前は働いていたし、ベアトリスから仕送りして貰っていたのでお金はあると言うと少し不思議そうにしながらも納得してくれた。
あとはアリスの買い物に付き合った。
部屋に置く小物やぬいぐるみ、下着売り場に連れて行かれたときは冷や汗が出た。
アリスも途中で自分の失態に気付いたらしく顔を赤らめていた。
そして途中でアリスはガラス越しにアクセサリーショップを眺めていた。
視線の先には、腕輪があった。
アリスの目と同じ緋色をした腕輪。
アリスがするには少し大きいような気もするが、アリスはその腕輪をじっと見つめていた。
「アリスはその腕輪、欲しいのか?」
「え?…あ、いや別にいいの。前からずっとここにあるの…。この腕輪ずっと売れずに、ずっと…」
そして、アリスから一瞬。ほんの一瞬。憎しみがこもった表情をした。そんな気がした。
そしてアリスは「行こう」と言って先に行ってしまった。チラッと値段を見ると結構していた。買えないことはないが、それでも結構持っていかれる。
これじゃ売れなくても仕方ないと思い、アリスの後を追った。
そして今は広場のベンチに座って一息ついているところだ。
「今日はたくさん買ったわねー!」
「そうだな、下着売り場に連れて行かれたときはどうしよかと思ったよ」
「そ、それは勢いあまって…」
そんなことを話して笑いあう。
デートっていいな…
そんなふうに思ってしまう。
するとアリスが先ほど疑問に思ったことを聞いてきた。
「そういえばさっき学院長に仕送りしてもらってたって言ってたわよね?前から学院長とは知り合いだったみたいだし、どういった関係なの?」
やっぱり気になるよな。ベアトリスとの関係を話すならあの事も話さなくちゃないよな… まぁ、いずれ話すことか…
「そうだな…俺の過去、アルとシヴィとの出会いの事も話さなくちゃなくなるんだが、聞いててあまり心地のいいものじゃないと思うぞ?」
「それでもいいの。お願い、聞かせて」
緋色の瞳が真剣にこちらを見ている。
純粋に俺の過去を知りたい。それだけなのだろう。
「わかった。長くなると思うが我慢してくれ。これは今から10年くらい前だ…」
俺には家族がいた。両親、そして2つ歳の離れた妹と一緒に裕福ではなかったがそれでも楽しく暮らしていた。
でもある時両親が交通事故で亡くなった。悲しかったが、それより俺たち兄妹は頼るところがなく2人で親が残してくれていた僅かなお金でなんとか生き抜いていた。
そしてある日、悪魔が街を襲った。みんな殺され街は崩壊していた。
そして俺たち兄妹も例外ではなく悪魔に襲われていた。俺たちは逃げた。どこまでも逃げた。でも悪魔はどこまでも追ってくる。
まだ俺たちは幼い子供。すぐに体力が限界に近づく。
そして妹が木の根につまずき転んでしまった。俺は気づくのが遅れて妹と距離ができてしまい妹には悪魔が目の前まで迫っていた。
「…お兄ちゃん!助けて…」
「今行くっ!!俺の妹から離れろぉ!」
「いや、いやだよ…怖いよ…お兄ちゃん!!!」
「やめろぉぉぉぉぉ!!!」
俺は叫んだ。悪魔から妹を守るために…
そして悪魔が振りかざした攻撃が妹の心臓を貫いた。
飛び散った血がが地面を紅く染める。
最期に妹は何かを言っていた。でも俺には妹が何を言っていたのか、その時の表情でさえ思い出す事ができない。
俺の中は絶望、悲しみ、憎悪で埋め尽くされた。
「殺してやる…、お前らは!全部俺が殺すっっっ!!!」
その時、俺の中で声がした。否、響いたと言うほうが正しいかもしれない。
「私の名はアルジェント。マスター、私と契約をしてください。力を与えます。守るための力を…」
「…あいつらを殺れるのか?俺はあいつらを殺れるだけの力が欲しい。」
「今はそれでいいです。でも、いつか…守るべきものができたときのために…」
確かにあれはアルだった。白銀の髪をした少女が俺に手を差し伸べていた。あれが契約だったのだと今なら理解できる。
でもあの時は目の前の悪魔を殺してやりたい。復讐したい。そんな感情でいっぱいだった俺は何も考えずにその手を掴んだ。
その後の事はあまり覚えていない。気がつくと悪魔は光の粒になって、右手には白銀の剣が握られており甲には紋章が刻み込まれていた。
そして目の前にベアトリスが立っていた。
まだ天使使いとして現役だった頃だ。
「どういうことだ…おまえ…それは…天使か?」
「…知らない。ただ力が欲しくて…あいつらを殺せるだけの力が…」
そしてもう冷たくなってしまった妹を抱きしめる。
「俺のせいだ…俺のせいなんだ!!俺に…力がなかったから…」
「…………私の屋敷に来い……そいつも連れてな」
「…どうして」
「力が欲しいのだろう?だったら私がお前に力をやる。そいつを守れなかったお前にな」
ギリッと歯をくいしばる。
今すぐこの女もここで殺してやりたい。
だけど今の俺にはそんな力はない。
それに、ここでこいつにたてついたら俺が生き残った意味がわからなくなる。俺は妹を守れなかった。そしてそれは悪魔がいたからだ!
悪魔さえいなければ!妹は死なずに済んだはずだ。
そして俺はこの時、悪魔を滅する事を心に誓った。
そしてベアトリスの後ろについていく。
途中でベアトリスの天使のネロに乗り高速で移動したために思ったより早く屋敷に着くことができた。
「そいつはそこにある棺桶に入れておけ。終わったら一番奥の部屋に来い」
そして俺は棺桶に妹を入れる。もう開くことのない目を見ながら妹に誓う。
「俺は必ず悪魔を滅ぼす!なんの罪滅ぼしにもならないかもしれないけど…俺には…それくらいしか思いつかないんだ…
こんな兄ちゃんを許して欲しい…お前を守ってやれなかった…こんな俺を…
本当に…ごめんな…」
ひとしきり泣いた後、一番奥の部屋に向かう。俺にはもう泣いている時間なんてない
扉を開けるとまるで図書館のような空間が広がっていた。壁の棚には天井の辺りまでびっしりと本で埋め尽くされている。
その光景に圧倒されていると椅子に座っていたベアトリスが手招きしていた。
「お前に力をやる。下手をしたら死ぬかもしれない…それでもお前は力を欲するか?」
欲しい。悪魔を滅ぼすだけの力が。
「当たり前だ…それでどうすればいい?」
「左手を出せ」
言われるままに左手を差し出す。
「今からお前にはある天使と契約してもらう。契約に失敗すれば死ぬ。まぁ何も話さずに殺すということはないだろうから安心しろ」
殺されるとか言っているのに安心しろなんてアホなのかこいつは。
そんなことを思っているうちに分厚い本を取り出し俺の手を本の上に置く。
「では早速、契約の儀式を行う。ま、頑張れ」
すると次第に意識が遠のいていく。薄れる意識の中で「必ず帰ってこい…」と聞こえたのは気のせいだろうか?
目を開くとそこは真っ白な空間。そして目の前に闇色の少女が立っていた。一見普通の少女だが、こいつがその天使なのか?
「初めまして!永闇の天使ことシュヴァルツです♪
ずいぶん久しぶりのお客様ね!100年ぶりくらいかしら!」
…なんかうるさいのが出てきた。
漆黒の少女。肌は白いが髪や服は闇色をしている。殺されるかもしれないなんて言っていたからもっと凄そうなのを想像していたから正直、拍子抜けだ。
「ん?…男の、人?うっそ!!!男なのに私達と契約できるの!?でもここに来れたってことは契約できるってことか…」
そして目の前の少女は俺の右手の紋章を見つけると
「その紋章…白の……
ふーん。あなた、もう天使と契約しているのに私とも契約したいだなんて……
問うわ。あなたの望みは何?」
その時、身体中に嫌な感じが襲った。
先ほどのうるさい少女ではない、まったく別の気配をした少女が立っている。
返答しだいでは殺される。
先ほどの少女からは考えられない威圧感。
だが、俺の答えは1つだけだった。
「悪魔を滅することのできるだけの力だ。
シュヴァルツ…あんたにはそれだけの力があるのか?」
その返答に少女は満足したように笑い。
「悪魔を滅する、ね……
そんなこと言ったのあなたが始めて…
いいわ!あなたの望み叶えてあげる!
ただし、私を扱えるのなら、だけどね」
「ありがとう。シュヴァルツ」
「シヴィでいいわよ♪
じゃっ早速、契約をしてしまいましょ♪」
そう言って闇色の少女は俺の左手を取り、その甲に口づけをした。
気がつくと先ほどの部屋に戻っており、口づけをされた場所には紋章が刻まれている。
「ほう…本当に契約してきたか。おもしろい…」
そう言って微笑を浮かべている。
なんだか少し嫌な予感がする。
「おまえ、名前は」
「カミヤ ハヤト」
「そうか。私はベアトリス・ヘルキャット
今日からお前は私の弟子だ」
「……………は?」
「私の全てをお前に叩き込む!
覚悟しておけ?」
そしてこの日からつい最近まで、下手すれば死ぬかもしれないと思わせる修行が始まった。
「まぁ、こんな感じだな」
しばらく経っても何も言ってこないので隣を覗いてみると
泣いていた。しかも無言でポタポタと大粒の涙を流している。まぁなんとなく想像はついていたが…
「アリス大丈夫か?泣かせるつもりはなかったんだ…」
そう言うと首を横に振るアリス。
そして深呼吸をして自分を落ち着かせる。
「ごめんなさい。泣かないようにしてたんだけど…ハヤトの事を思うと…」
やはり悪魔は滅さなければいけない。
今、あらためて自分の覚悟を再確認した。
「でもハヤトの話だとアルとシヴィは少女だったみたいだけど…鳥と猫よね?」
「あぁ…でも確かに少女だったんだ。なんでだろうな…」
俺と契約をした時はどちらも少女の姿をしていた。しかし幾度となく顕現しても鳥と猫の姿でしか顕現されないので俺は深く考えないようにした。
「まぁそのうちわかるわよ。
いまでは悪魔や天使、天使使いについてはほとんどわかってない状況だもの」
「それもそうだな。
それより今日のデートはどうだった?」
「えっ!?ま、まぁまぁかしらね?」
「そっかー厳しいなー」
「でも楽しかったわ。ありがとね」
そう言ってにっこりと笑うその表情にドキッとしてしまう。
これが見れただけでも今日のデートは大成功だ。
「じゃあ、もうそろそろ帰りましょう?明日からは授業も再開するし、日が暮れてしまうわ」
「ん、じゃあ帰るか」
そして穏やかで平和な1日が終わり、新たな世界が幕をあける。
ありがとうございました。




