運命
赤い爬虫類特有の肌
古竜12王の1、燕王アルカリアである。
だが、ただ横たわる老竜のようだ。
敵意がまったく感じない。
「その、あとはまかせていいか?」
「はい、わかりました。」
レイン達を後に狩人は去っていった。
レインは顔がある方向へ向かった。
左腰から、オスカールにもらった太刀をはずし、右に持ち替えた。
顔のあたりにきた。すると燕王アルカリアは目を開けレインを見た。
レインは燕王アルカリアに太刀を捧げる姿で両手に持ち頭を下げた。
【龍神鋼DORAGO持ちしSU-物、よく来たRAU。】
「古代竜語だね~初めて聞いたよ~。龍神鋼で鍛えた太刀持ちし者よく来た。かな~」
【bsf@l手mkm9hgq】
「言葉理解する者もよく来た。」
クレアが要訳してくれる。
「・・・・・それは訳さないよ?まだ駄目~」
「なにか?ほかの事を?」
「その勇気あるなら額をあてよ、だって~」
クレアの聞いた言葉が気になったが
レインは燕王アルカリアの頬に額をあてた。
(賢龍神人に認められし者よ、我は死期が近い、汝に我が命絶つこと願う)
(え?)
(このままでは竜の死後の国には行けないのだ。汝の剣で我を送ってくれ)
燕王アルカリアは空を見上げた。
(空の上ですか?)
(星は我ら、我らは星となり大地を見る。我は死して新たなる命あたえる。)
竜の言葉だろうか?
呪文が響き、アルカリアの前に何かが現れた。
直径1メートルほどの円体が浮いていた。
(肉体は滅びるが、魂は新たな器に宿る。)
アルカリアは円体を指さした。
(星より再び始祖達がここに宿る。)
おそらく、竜の転生の話をしてくれてるのだろう。アルカリアが死ぬことにより、アルカリアの用意した円体にアルカリアの代わりとなるドラゴンが誕生する。
(では、なぜ僕なのでしょう?)
(強き者よ、我は他と雄々しく戦い、死を迎え、始めて星に帰れる)
すると突然のアルカリアは殺気を帯びだした。
さすがエンシェントドラゴン12王の1、レインですら寒気を覚えた。
「レインさま!!」
リタが精霊魔法詠唱に入る、ミリエラは身構えた。
「楽に行けるわけないのか~。」
クレアの足元に魔方陣が現れた。
レインはアルカリアの頬に手をあてた
(よろしいのですね?偉大なる王よ?)
(王として葬ってくれ?強き者よ。)
(・・・・・行きます。)
アルカリアは咆哮した、と同時にレインは居合い抜き介錯した。
一瞬で片付いた。
首は切り離され、力なく胴が崩れ落ちた。
「え?何が起こったの?」
クレアの目の前で燕王アルカリアは瞬殺された。
「無拍子の太刀ですね。」
ミリエラは刀を収め、リタも詠唱を中断した。
「この刀が凄いのですね。僕の腕じゃありません。」
その顔には涙が浮かんでいた。
**********
マイラは約3ヶ月ぶりに帰る義理の弟兼師匠のレインをガダの皇国側の門で待っていた。
「あれ?マイラ様じゃないかい?」
マイラの存在に気付いたスミスがマイラに駆け寄った。
「マイラ様、お久しぶりでございます。」
「あれ?スミスさん。今日は鍛冶仕事は?」
「今日はもう上がりなんだ。今日ぐらいに幼馴染みが帰ってくるみたいでね?たまにはいい物でも食べさせてやろうかと思ってね。こうやって買い出しさ。」
と大量に買い込んだ食料をマイラに見せた。
「これもレイン様が行った物流の緩和政策かね?いい物が安く手に入るようになったよ。」
「そう。あっ、レインもそろそろ皇国から帰るはずなんだ。」
「おや、レイン様も学校から帰ってくるんだね?」
皇国側からの定期馬車が到着した。
降りる人達をマイラとスミスは確認する。
皇国とガダの街道で皇后がドラゴンに襲われたと言う情報が入り、皇国とガダの移動は軍用馬車が使われるようになった。
皇国とガダは馬車の利用で2日以内に移動可能となった。
「ありがとうな?しかしすごい武器だな?その火筒は?」
軍用馬車の御者と馬車から降りた2人組の青年が別れを惜しんだ。
「イヤ、俺の連れもなかなかだったと思うのだが?」
「拙者は大した事しなかったで候。」
その2人組がこちらを向くとスミスが叫んだ。
「ルイス!」
1人の青年はスミスの待ち人だったらしく、スミスは駆け寄った。
「やあ?スミス!久しぶり!ほら。お土産、オリハルコンのインゴット。」
「あんたオスカール領に行ってたんだろ?」
「ああ、だからこれを作れたんだ。スミスのおじさんと相談しないと。」
「なんだい、それ?」
ルイスはスミスに筒状のメイスのような物を見せた。
「銃だ。火薬の力で鉛弾を飛ばす武器だよ。こいつをガダの鍛冶の産業にする。」
「刺しで対峙したら、拙者なら避けるがの、原理を見抜かれたら、合戦でもない限り無駄で御座る?ん?」
「また、ダクランさんのダメ出しですか?あっ、紹介するよ。用心棒のダクランさん。オスカール領で知り合った武芸者なんだ。」
紹介されたダクランだったが、スミスではなく、その隣にいたマイラを見ていた。
「(スミス?あれってまさかの?)」
「(マイラ様だよ?)」
マイラもダクランが気になったが、軍用馬車の御者に訪ねた。
「7才の少年と12才ぐらいの少女2人組は乗って無かった?途中ですれ違うとか?SSSRの学生なんだけど?」
「SSSR?ああドラゴンキラーか。イヤ、あっちの乗り場にもいなかったな?」
「ドラゴンキラー!?レインが!?」
「リフテン卿の御子息がこの前のドラゴンを倒したんだ。すごかったぜ?何せ一瞬だったんだからな?」
御者は先の警護の1人だった。
マイラに先のドラゴン討伐を詳しく話してあげた。
ドラゴンが現れ、討伐されたのは知っていたがまさか弟であり師匠であるレインがやったとは思っていなかった。
「あの人ならやりかねない・・・」
マイラは独り言を言い、納得した。
「だが今回もすごかったんだわ!そこの兄ちゃん2人がワイバーンだが、2体倒したんだ。」
マイラは視線をルイスとダクランに戻した。
ルイスとダクランはマイラが領主の娘であるため、軽くお辞儀した。
「ワイバーンを討伐したのですか?始めまして、マイラ・リフテンです。一応はガダの自警団隊長をしています。」
「はっ、始めまして!ルイスと言います。こっちは・・・」
と、マイラの形相が変わりマイラはダクランを見た。
「今にも貫かれそうなのですが、武芸者さん?お互い間合いは解ってるみたいですね?」
「・・・面目ない。なにせ、其方が強いからの。」
ダクランはマイラに殺気を当てたのだ。マイラも何度もダクランに気当てをやったがなるほど、これが師匠の言う達人と言う人なのだと実感した。
「得物は戟なんだ。槍と思ってくれてもよい。」
「じゃあ私は貴方の間合いの中だったのですね?まだ未熟でした。」
と、瞬時に間合いから出て身構えた。瞬き一瞬である。
「何してるんだダクラン!!領主の御息女なんだぞ?」
ルイスの一言と同時に殺気を解き、マイラに寄った。
「ガハハ!まさかガダに着いてこんなに強そうな女人に出逢うとは!拙者は幸せ者じゃわ!!いや、許せ?試しただけじゃ!これがドラゴンキラーの一番弟子とはなかなか。」
と言ってマイラの手を握った。
「失礼した。ダクランと申す。師はエンシェントドラゴン、アルトゥーラ。」
そして聞いた事の無い言葉を言った。
「林冲」
マイラは何を言われたがわからなかった。
だがアルトゥーラの名を聞いて驚いた。
「12王の第2、アルトゥーラが師匠!?本当ですか?」
「拙者の師の名前で驚くとは。拙者もまだまだ未熟であるわ。」
「あら。私も多少は名前が行き渡ってると思ったのですが?
「ガハハ、ではお互いに切磋琢磨しようではないか?マイラ殿。」
「ですわね、ダクラン殿?」
まあ、まだ夏休みが始まって3日、ジュナス殿下にでも捕まって居るのであろう。と思っていた。
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「では、アルカリアは葬られたのですね。ご苦労様でした・・・」
イフェーラ・ランに事が終わったことを告げたが不快であった。
「・・・私が斬らなければならなかったのですか?」
レインの目は怒りと悲しみに満ちていた。
レインの問いかけにイフェーラは答えた。
「貴方には辛い役目かもしれません。ですがアルカリアが望んで私に頼んだのです。偉大なる王はその雄々しき戦いにより、始祖達の待つ星界へ旅立てた。貴方はアルカリアを送ってあげれたのです。」
「ですが・・・」
クレアがレインを後ろから抱きしめ語り出した。
「竜のしきたり、古より伝わりて、その竜は雄々しく戦いし、始めて星界に帰らん。その竜は朽ちし時、戦いを求め永遠と彷徨う。レインくんが倒さないとアルカリアはドラゴンゾンビになって殺戮を繰り返しちゃうんだ〜。だから、彼は戦いを望んだんだ〜」
「でも、先生。」
「大丈夫。君に悪い所はないよ。だって、ほら〜?」
アルカリアが出した円体が割れ出した。
なかから新たなドラゴンが誕生した。
「レイン様!ドラゴンの誕生です!しかもエンシェントドラゴン!!」
ミラがレインに駆け寄り、新たなる生命の誕生を喜んだ
「ドラゴンキラー、レイン・リフテン。汝に偉大なるエンシェントドラゴン、燕王アルカリアの加護あらん事を祈る。ハイエルフ族長イフェーラ・ラン。」
そう言うと、金貨500枚を渡した。
「表に出て見なさい。新たなるエンシェントドラゴンの誕生に王達が集いました」
レイン、ミリエラ、リタは表にでた、すると11匹のエンシェントドラゴンが座っていた。
「我、あるとゥーラ、DOVAスード。」
クレアが再び訳す。
「我アルトゥーラ、火山脈の魔竜。」
「偉大なる我等の王、アルカリアを贈りし者に礼を揚げる。」
アルトゥーラは天に咆哮した。
それに合わせ、残りの10王が咆哮した。
「汝、に、王の加護あらん事。」
と言って新たに産まれたエンシェントドラゴンをリタから受け取った。
「また、会いし事我願う。」
と11匹のドラゴンが羽を広げると同時に天高く舞い上がって行った。
********************
「帰りは俺が連れて行ってやる。安心してくれ」
イフェーラが帰りの馬車を用意してくれた。
御者は道案内してくれた狩人だった。
「カルエ、俺の名前だ。まあ、皇都スレイマンまでの付き合いだがよろしく頼むよ。」
「よろしくお願いします。カルエさん。」
「エンシェントドラゴンキラーと一緒なんだ。大船に乗ったつもりだ。ははは。」
馬車はスレイマン・サラへと向かった。
「で?そっちのハーフのお嬢さんは、精霊王とは契約はまだしてないんだな?」
「え?4大精霊もあと炎帝だけまだなのですが。」
「じゃあその上と契約してしまえばいい。なんせ、あんた等はすでにエンシェントドラゴンの加護がついた。」
リタに精霊契約の話をしだしたカルエ、彼が言うには、本来なら精霊と契約し、精霊の力を理解した者が初めて精霊王と契約が出来る。
人のように寿命が短い人間にはおそらく不可能と言われている。
リタはハーフで、年齢の取り方が人間に近く、まだ炎帝との契約がまだだった。
だが、レインがアルカリアを討伐した事で共にいた自分もエンシェントドラゴンの加護が与えられていたとは思わなかった。
「え~まだだったんだ~。アルカリアがブレスしたらどうしたのさ~?」
「その時は水精を使いましたよ。水蒸気爆破も利用出来ると思いましたから。」
「えっ!?僕は巻き添いですか?リタ姉!!」
「レイン様ならなんとかなったでしょ?これもレイン様の修行の一環ですが?」
無茶言うなや。
「まあその気があるならやってみるといい。もしかしたら精霊神達との契約までいけるかもな?」
「ガダに帰ったらやってみます!」
リタは意気込んだ。
スレイマン・サラには1日でついた。
途中でモンスターなど無く、すんなりとついた。
「帰りはさらに楽なんだ、精霊魔法を使って隠密でいくからな」
カルエはそう行って別れた。
ギルドの前で降ろされたのでそのままカウンターに向かった。
フランシスがレインに気付くと近寄った。
「まあ、御者の事はギルド内で処理するのだが、・・・また厄介な事が・・・」
「厄介な事?」
「あそこに女騎士がいるだろ?なんかドラゴンキラーに会わせろって。」
ギルド2階に揚がる階段横に白銀の甲冑を着た金髪の髪の長い騎士が後ろ向きに座っていた。
金髪左右から耳が見えた。おそらくエルフだろう、とレインは思った。
「皇国近衛騎士団長のセシリア様だ。レイン様なら会ったことあるんだろ?殿下の護衛だから。まあ、うちの切り札の1人でもあるんだが」
とフランシスはクレアを見た。
「じゃあ、僕が先に会ってあげる~。セシリア~!」
クレアに呼ばれ、セシリアは振り向いた。
セシリアの顔に見覚えがあった。
思いだした。マンティコワの瘴気にやられた時出てきたエルフの女騎士だ!
ってあれ夢だよね?
「やあクレア、久しぶりじゃないか?・・・なんだ、クレアも一緒に行ったんだ。レッドドラゴン討伐。」
左腰にフランベルジュを装備している。レインが以前ジュナスから貰った物と同じ柄だった。
「レイン・リフテン卿?始めまして、セシリアと言います。皇国近衛騎士団長を務めています。」
少し棘のあるいい方だったのでリタとミリエラがレインの前に入り、左腰から太刀を抜いた。
「我々には敵意が無いのですが、セシリアさんには敵意がお有りで?」
ミリエラが少しきつめに言った。
「さあ、私は常に帯剣を許されているからな、なんなら斬り合ってみるか?」
ガーン、やはり夢で出会った通り無礼千万な人だ。
セシリアは殺気立っていたがリタとミリエラは格下の殺気を感じ、溜息をついた。
「オスカール様かランゼなら構えましたが構えるに値しないですね。大丈夫なんですか?皇国の守りは?」
ミリエラがリタに太刀を渡し、珍しく挑発した。
「ぶっ!侮辱するな!!」
セシリアが抜刀し、ミリエラに斬りかかった。
上段にフランベルジュを構え踏み込む。
ミリエラは手の甲で斬りかかるセシリアの柄頭を叩くとフランベルジュは手から抜け、素早く奪い取りセシリアの首に突き付けた。
「まさか無刀取りがここまで完璧に出来るとは。あなた、素人ですか?なんかすごく演った私が恥ずかしんですけど?」
「ダメだよ~セシリア~?あしらわれちゃうよ~?だって、レッドドラゴンはアルカリアだったんだから~?」
とクレアの一言でまたギルド内が騒がしくなった。